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『統計学が最強の学問である』 [仕事の小ネタ]

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

  • 作者: 西内 啓
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人が、その本当の魅力とパワフルさを知っているだろうか。本書では、最新の事例と研究結果をもとに、今までにない切り口から統計学の世界を案内する。
今から20年以上前、大学院修士課程で初めて経済学を専攻した際、所属の研究科長から、要不要に限らず全員が計量経済学を履修するように言われた。履修した最初の授業の際、担当の先生から輪読用のテキストとして買わされたのが、当時の統計学の定番テキストだったらしい「ムード・グレイビル」だった。

Introduction to the Theory of Statistics

Introduction to the Theory of Statistics

  • 作者: Alexander M. Mood, Franklin Graybill 他
  • 出版社/メーカー: McGraw-Hill Publishing Co.
  • 発売日: 1974/06/01
  • メディア: ペーパーバック

なんで計量経済学なのに統計学の教科書を使うのか、戸惑いながら輪読をはじめたが、当時興味があった開発経済学との関連性がまったく見い出せない正規分布や標準偏差の説明を理解するのに相当な苦戦を強いられた。理解を助けるのに役立つような日本語で書かれた統計学の本はないかと探してみたこともあるが、そんな虫のよい院生を救ってくれるような気の利いた解説書など見つけることはできなかった。

単位はもらったが、その達成感のなさは半端ではなかった。本日紹介する本が当時あれば、僕のその後の人生は大きく変わっていたに違いない(笑)。

今、僕の職場では同僚が当たり前のように「ランダム化比較実験(RCT)」という言葉を使っている。まるで聞き手の我々も「知っていて当たり前」というような話しぶりでRCTが出てくる。他にも、「データマイニング」や「テキストマイニング」という言葉を使って、自分が今取り組んでいることを自慢げに話している人もいる。そんな環境の中にいると、今さら訊けない話が結構多い。その場では一応話は合わせるけれど、基本的なところで理解ができていないから、ついていけなさを感じていた。

そういうところに登場した、まさに「かゆいところに手が届く」ような解説書が本日ご紹介の1冊であった。RCTの理論的なことだけではなく、実験のデザインやサンプルの取り方の具体例や、冒頭で述べた「計量経済学」と「統計学」はどこが同じでどこが違うのか、そして、「テキストマイニング」で何がどうわかるのか、といった解説は、比較的わかりやすい描き方がされていて、大変参考になった。また、先行研究のレビューやメタアナリシスの解説も、実用的で実際に自分でもやってみようと背中を押してくれるような優しい書き方がされていると思う。

解説書なので今回一度通読して、今後も座右の書として手元に置いておきたいと思う。しかもそれでいて1600円(税別)という価格設定も良心的で、相当に費用対効果が高い。

自分の反省の上に立って述べると、文系であろうが理系であろうが、統計の知識は必要だと思う。僕の場合は高校1年の時に当たった数学の先生の影響で数学が嫌いになってしまい、数学の勉強は嫌で嫌で仕方がなかったが、今思い返してみても、その数学の授業の中で、統計については学んだ記憶が全くない。僕らがいつも振り回されていた「偏差値」ですら、数字の読み方だけは知っていたけれど、どうしてそういう数字になるのかという基本原理については教わっていない。子を持つ親の立場で言わせてもらえば、統計学だけはちゃんと勉強しておいて欲しい、必ず役に立つと伝えたい。

それにしても―――。

今プライベートで米国滞在中だが、こうして普段ならとても読めないような本や論文のコピーを集中して読む時間を作れているのはとてもありがたいことだ。お陰で、ここ1年ほど他の仕事で忙殺されていて手が付けられなかったあるテーマにようやく着手して、文献レビューに入ることができた。仕事の一環であることには変わりはないが、職場にいたら他の目の前の仕事をさばくのが優先になってしまい、一部の方には多大なるご迷惑をかけてきていた。「リフレッシュ休暇」と言いつつ仕事をやっていることには変わりはないが、糞づまりを多少なりとも解消できるという点ではリフレッシュにはなっている気がする。

とはいえ、今の職場で関わっている仕事は、我が社における自分のキャリア全体を考えた時には随分なまわり道をしている気分にもさせられる。今になって統計学の基礎を勉強し直さなければならない自分の不勉強も良くないが、本来もっとじっくり取り組みたいような途上国の開発問題に入る前にこういう、統計学だとか社会学だとかの理論の勉強をしなければならないのは悲しい。学者になりたくて今の会社に入ったわけじゃないのですが、愚痴っていてもやらなければならないことは変わらないわけで、劣等感ばかりが膨らんでくる。

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うしこ

これは面白そうな本ですね。私も文系なので、ちょっと読んでみます。
by うしこ (2013-04-29 08:27) 

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