『だいじょうぶ3組』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)何も予定がなかった4月のある週末、ふと映画でも見たいなと思い立ち、家族と相談した。みな思い思いのことを言ってなかなかまとまらず、結局お金がもったいないからということで映画館に行かないことになってしまったのだが、この時に話題になったのが乙武洋匡さん主演の『だいじょうぶ3組』だった。その映画予告はこの記事の末尾に貼り付けた動画でご覧いただくことにして、今日はその原作となった乙武さんの著書を紹介してみたいと思う。
5年3組の担任としてやってきたのは、手と足がない先生、赤尾慎之介。個性豊かな28人の子どもたちといっしょに、泣いたり、笑ったりの1年間が始まる―。小学校教員の体験から生まれた初めての小説。
結局映画は見に行けなかったものの、我が家の子供達でもこの作品のことは知っていた。5年生が舞台ということなので、小4の次男に読ませるには少しだけ早いが、いずれ読んでみて欲しいと思ったので、先取りして図書館で借りて自分自身で読むことにした。
セリフ回しには少しクサいところは感じられたけれど、小学生に読んでもらうのにはとてもいい作品だと思う。どこかの公共広告でも一時使われていた「みんなちがって、みんないい」という金子みすずさんの詩のフレーズも、乙武さんが使うとよりリアリティが増す。
また、赤尾先生も生徒たちと一緒に試行錯誤しながら成長していっている姿も描いている。乙武さんご本人の教師経験がもとになっている作品なのだと思うが、やはり最初は苦労して、失敗も度々おかしているし、たいていのことはできると言いつつ、高尾山登山遠足やプールでの水泳指導では自分ができないことというのを認めてもいる。それでもそれを乗り越えていく強さも見せている。泳げなかった生徒が勇気を出して顔を水につけるとか、転校することをクラスのみんなにどうしても言えなかった生徒が、最後は自らクラスメートの前で転校を明かすとか、クラスの生徒のひとりひとりに転機が訪れるが、同じく教師としても赤尾君にとってもそれらが転機なのである。
小学校を舞台にした作品は重松清もよく書いているが、『だいじょうぶ3組』は、小学生だけではなく、大人の読み物としてもとてもいい作品で、重松作品よりも想定読者層が広いのではないかと思う。ただ、1つだけ注文するとしたら、多分大人の読者層も狙っているからなのだと思うが、もう少しだけ漢字にふり仮名がついていれば、小学校中学年の子どもにとっても読みやすい本になったんじゃないだろうか。
作品を読んだら映画も見てみたくなった。もう上映期間は終わっているかもしれないが、DVDが出たら家族と一緒に見てみたい。
タグ:乙武洋匡
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