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寸評:今月読んだ本(2013年4月) [仕事の小ネタ]

このところ、仕事の関係でネットワーク組織論に関する本をいくつか読もうと取り組んでいる。この手の本はひとつひとつがかなり分厚く、1日2日で読み切れるようなものではない。ここ2年ぐらいの過去ログを読んでおられる読者の方ならご存知かと思うが、僕は週末に午前3時起きで24時間営業のファミレスに行き、3時間近く集中して勉強する「早勉」なるものを時々やっている。今日ご紹介する本は、そうやって、集中して本を読む時間を設け、強制的に読み進めた2冊である。

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コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)

  • 作者: エティエンヌ・ウェンガー
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
共通の専門スキルやコミットメントによって非公式に結びついた人々の集まりである「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)」の手引書。グローバル企業による実践コミュニティを核とした価値創造実現を伝える。
「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)」なる目新しい言葉を用いているけれど、要は会社組織の中で既に存在する部や課の垣根を越えて、共通の問題意識を有して、課題の解決や専門性の向上に取り組む人々の集まりのことを言っているんだと思う。

本書でいう「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)」とは、著者のエティエンヌ・ウェンガーが1991年に発表したコンセプトで、彼らは、文化人類学的な企業組織の観察を通じ、どんな組織にも必ず「人々がともに学ぶための単位」があることを発見し、「あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」(p.33)をそう呼んだ。

昔勤めていた金融機関では支店や部課の単位で行員の行動がある程度型にはめられてそれを飛び出す行動というのはあまりなく、支店や部課を単位とした行員の結束力が強かった。他の支店の同期入行者とつるんで飲みに行くようなことはあまりなかった。組織の中での上司と部下、先輩と後輩の繋がりが強かったように記憶している。

1993年に転職して今に至るまで勤続している会社では、そういうネットワークが当たり前のように存在していた。そして、2000年代はじめ頃からだったがそれを制度化しようという取組みがはじまり、テーマ別に幾つかのタスクフォースが作られ、それに参加する社員の中には所属部署とタスクの兼務という辞令までもらっていた人もいたが、活発に活動を展開するタスクもあれば、活動休止状態のタスクも存在した。単なる勉強会を定期的に開催して参加者のスキルアップを図る活動に終始したタスクもあれば、そこから新しいアイデアを創造し、それをどこかの部署の事業で実践に繋げるところまで到達したタスクもある。

そういう違いはどこから生まれるのか。著者によれば、コミュニティを成功させる最も重要な要因の1つは、リーダーたちの活力であるという。コミュニティのコーディネーターとは、メンバーの中で、コミュニティが領域に焦点を当て、さまざまな関係を維持し、実践を開発することができるように手助けする人を指す。一般的には、コーディネーターの人件費を賄う目的で専用の予算が組まれ、その中からコーディネーターの時間の二割から五割に相当する資金が提供されることが多い。コミュニティ・コーディネーターは、次に挙げるような、いくつかの重要な職務を遂行する。
◆領域内の重要な問題を特定する。
◆コミュニティのイベントを企画し、推進する。(これがコーディネーターの役割の中で、最も目につく仕事である。)
◆コミュニティ・メンバーを非公式に結びつける。組織内のユニット間の境界を超えて知識資産を仲介する。
◆メンバーの成長に手を借す。
◆コミュニティと公式の組織(チームやその他の組織単位)との間の境界を管理する。
◆実践(たとえば知識ベース、教訓、ベスト・プラクティス、ツール、方法、学習イベントなど)の構築に手を貸す。
◆コミュニティの状態を判断し、メンバーや組織への貢献を評価する。
(pp.131-132)

まあうちの会社では当たり前のように存在する実践コミュニティであるわけだが、そんな中でちょっと本書で目新しいと思ったのは、こうしたコミュニティ形成を評価する手法に関する記述だった。ナレッジ・システムを詳しく考察するための最高の方法は、物語(ストーリーテリング)であると著者はいう。物語は、コミュニティの活動、知識資源、そして業績成果の間のつながりを説明することができるのだと。

まあ実際にうちの会社で形成されたタスクのパフォーマンス評価は、どれだけ定期的な勉強会を開いたのかというような定量的な評価は勿論あり得るだろうが、それが何を生み出したのかというアウトカム(結果)に注目した定性的な評価もありだと思う。そして、そうした成功事例が物語として記録されていれば、後に続いてどこかで誰かが何かをやろうとした時にも、どう動けばいいのか参考にもしやすいと思う。

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遠距離交際と近所づきあい 成功する組織ネットワーク戦略

遠距離交際と近所づきあい 成功する組織ネットワーク戦略

  • 作者: 西口 敏宏
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2007/01/25
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
能力があるのに、“つながり”の悪い職場や家庭で悩んでいませんか?何の変哲もない個人、組織、地域が、恵まれた環境でもないのに困難を乗り越え、目立って繁栄する場合がある。世界各地の事例と最新のネットワーク理論から、その秘密、法則に迫る。
この本は、5年ぶりの再読である。前回の紹介記事のURLは次の通りだ。
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2007-10-24-1

前回の記事では、自分が当時勤務していた国での自分の行動のあり方という点で学ぶところがあったわけだが、今は東京で会社の本社組織に近いところで働いているので、見えてくるポイントも違うのではないかと思い、もう一度読んでみたのである。

一応復習をしておくと、最終章に全体を通して著者が述べたかったことが明確に書かれているのでそれを引用する。

 個人、企業、地域、国家を問わず、その長期にわたる繁栄は、けっして偶然の産物ではない。むしろそれは、異なるレベルのノード(結節点)が、それぞれどのように他のノードと結びつき、全体としていかなる「トポロジー」のネットワークが構成され、そこでそのような位置を占めているかによる貢献が大きい。つまり、他の条件を同一とすると、個々のノードの属性や能力を超えて、あるノードがいかなるトポロジーのネットワークに埋め込まれているかという点が、成功か失敗か、繁栄か没落化を分ける、重要な決定要因の1つなのである。
 この点に関して、ネットワークのトポロジーは、それを構成するノード間のつながり方が、あまりにレギュラー(規則的)でも、ランダム(不規則、行き当たりばったり)でも、上手くいかない。むしろ、レギュラーな「近所づきあい」の土台のうえに、適度のランダム性をもってなされる「遠距離交際」から生じる「スモールワールド・ネットワーク」がよい結果をもたらす。
 また、たとえ最初は不利なトポロジーのネットワークに埋め込まれたノードでも、それ自体もしくは近隣のノードが適度のランダム性をもって行う「リワイヤリング」によって、遠方から冗長性のない情報がその近辺に伝わる「近隣効果」によって、ネットワークがスモールワールド化する場合、そのノードを取り巻く状況は大幅に改善され、有利に働く場合がある。
(pp.355-356)
うちの職場が繋がりが悪いとは思わないが、個人的なことを言えば、僕自身は今はいいリワイヤリングができていない気がする。2年間ぐらいは本当に不調で、いい人間関係が作れていないと時々感じていた。それも、昨年秋頃から比較的近いところに関心領域が比較的近い人々がオフィスの移転でやってきたことで、新たな展開が見えてきた。改善の兆しがないこともないという点では少しホッとする。

さて、最後に、最初の「実践コミュニティ」の話に戻って、今僕の悩んでいることを述べておこう。

うちの会社は、国内に幾つかの支社を持っている。そのうちの1つが、関西に拠点を置く企業とコラボして、関西エリアの学生をターゲットにして、幾つかの企画を展開しはじめた。コラボ相手の会社はこれに気を良くして、東京に拠点を置く別の会社にも声をかけ、東京でコラボ企画をやろうとうちの関西の支社の気心知れたスタッフに声をかけた。しかし、うちの関西の支社は担当地域が規定されているので、東京での企画に参加をコミットすることは難しい。

最初から関西の支社で行なわれていることが東京の人々ともっと情報共有されていて、なんらかのネットワークができていれば、東京にいる人々はこういう話には乗りやすかったと思う。その点では、相手の会社の方は我が社の中で推すべきツボを取り違えていたこともあるけれども、うちの会社の中にそういうネットワークが上手く形成されていなかったことにも問題があると思う。

今のところ、東京のことだから東京で話しましょうということで連休明けからコラボ企画の話し合いには入るが、今度は関西で何かやりたいときに東京の我々を巻き込もうと思ってもそれはできないわけで、そういうのを乗り越えるための工夫が我が社には求められると思う。

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