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『アメリカは日本経済の復活を知っている』 [読書日記]


アメリカは日本経済の復活を知っている

アメリカは日本経済の復活を知っている

  • 作者: 浜田 宏一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/19
  • メディア: 単行本
内容紹介
ノーベル経済学賞に最も近い経済学の巨人、研究生活50年の集大成!!
この救国の書は、東京大学での教え子、日本銀行総裁・白川方明に贈る糾弾の書でもある。20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するからだ。白川総裁は、アダム・スミス以来、200年間、経済学の泰斗たちが営々と築き上げてきた、いわば「水は高いところから低いところに流れる」といった普遍の法則を無視。世界孤高の「日銀流理論」を振りかざし、円高を招き、マネーの動きを阻害し、株安をつくり、失業、倒産を生み出しているのだ。
本書で解説する理論は、著者一人だけが主張するものではない。日本を別にすればほとんど世界中の経済学者が納得して信じ、アメリカ、そして世界中の中央銀行が実際に実行しているもの。実際に著者は、日米の学者・エコノミスト・ジャーナリストたちにインタビューを行ない、すでに60人以上から聞き取りを行なっているが、ほとんどすべての俊才が、潜在成長率のはるか下で運営されている日本経済を「ナンセンスだ」と考えている。たとえば教科書でも有名なグレゴリー・マンキュー、ウィリアム・ノードハウス、ベンジャミン・フリードマン、マーク・ラムザイア、デール・ジョルゲンソン、ロバート・シラー、黒田東彦、伊藤隆敏らだ。
世界から見れば常識となっている「日本経済の復活」を、著者50年間の研究成果をもとに、わかりやすく徹底解説!
黒田東彦新総裁の下で、4日に打ち出された日銀の新たな金融緩和策が好感され、5日も円安・株高の流れが続いている。市場では景気動向に対してポジティブな見方が目立ってきているようで、アベノミクスの目玉の1つである金融政策は、ひとまずはうまくいっているのではないかと思える。

僕はあまりこのブログで経済のことは書いていないが、元々は大学でも経済学を勉強していたし、一時は金融機関で勤めていたので、こういう話題には敏感な時期があった。ただ、最近はあまりそういう知識が仕事で役に立つような場面もないため、金融機関に勤めていた頃と比べると経済については疎くなったような気がする。それが負い目になっていたので、公の場で経済について論じるのは避けてきた。

金融機関時代の先輩などは、フェースブックでも積極的に発言し、アベノミクスを酷評している。通貨供給量を激増させたらインフレになる、政府が赤字国債を乱発してそれを日銀に買い取らせたら、財政規律もくそもなくて、財政が破たんし、その負担は次の世代の若者や子供たちに行く、云々…。それもそうかもしれないなと思う。でも、よくわからない。昔経済学の教科書で学んだようなことを、結構忘れてしまっているのに気付かされた。

本書を読もうと思った動機の1つは、そんなところにある。

僕は「流動性の罠」の考えに沿ってデフレ下での金融緩和の有効性には懐疑的だった。「流動性の罠」の状態にマクロ経済が陥っている時にはいくら金融緩和をやっても効かない、というのはマクロ経済学を勉強するとわりとテキストの早い段階で説明されている基礎の基礎だし、これまでの日銀首脳もそんなロジックで金融緩和に懐疑的な発言をされていたように思う。

一方で、開放マクロ経済学のテキストではこんなことも書かれていたと記憶している。変動相場制の下では自国経済の景気刺激策として財政政策は効かない、金融政策の方が有効である。確か、「マンデル・フレミング・モデル」といっていたかと思う。そうすると、今の日本でも、デフレ脱却を図るのなら、金融政策がものを言うということになる。

いったい、どっちなのでしょうか。

本書を読んでいると、著者はこれまでの日銀の金融緩和策では全然足りない、不十分なために急速な円高が進行し、企業を窒息させかかっているのだと指摘している。書き方は実はもっと辛辣で、20年にもわたる長期のデフレ局面を作ってきた最大の責任は日銀にあるとすら言い切っており、歴代の日銀総裁を酷評している。特に、白川前総裁は著者の教え子で東大時代から突出して頭が良かった人なのに、日銀総裁になったとたんに宗旨替えしたかの如く日銀のロジックに丸め込まれて判断ミスをしまくってきたとボロクソである。勿論、そういう白川氏をトップに据えて誤った金融政策を認めてきた民主党政権の主脳たちの経済オンチぶりについても酷評しまくっていることは言うまでもない。

米国の大学で教鞭をとってきた人だけに、議論好きであるし、個人名を挙げてけっこうな酷評をされている。日本で経済政策に携わる人々が皆バカに見えてしまうようだ。そういうのは米国でディベートをやっていたら当たり前に出てくるし、議論が終わればお互いを認め合い、人間関係がこじれるようなこともない社会だからいいが、ここまで書いちゃうとこき下ろされた人々は気分はよくないだろうな。僕も読んでいて自分もバカの1人なんだろうなと思ってしまいました。

逆に、著者が仲の良い研究者が誰なのかというのもよくわかる。岩田規久男日銀副総裁や高橋洋一嘉悦大学教授といったリフレ派の論客に対してはべた褒めだ。黒田総裁の話は本書では全く出てこないが、今回日銀が発表した「異次元」の金融緩和は、基本的には著者が本書で述べているような内容が下敷きになっている。そういえば、白川前総裁が退任を発表した時に、浜田先生も次期総裁候補として名前が挙がっていた。

2%のインフレターゲットを導入して、日銀が何が何でも2%の物価上昇を達成するという姿勢を鮮明にすれば、僕らの間ではそれくらいの水準のインフレ期待が形成され、行動の仕方も変わってくる。今のうちにものは買っておこうと思うだろうし、設備投資も今のうちにやろうと考える企業も出てくるだろう。

これぐらいの金融緩和でいきなりハイパーインフレというのは絶対ないという著者の主張は僕もそうだと思う。

ただ、主張がシンプルなところに怖さも感じる。シンプルなのに、なんで誰もそれをやろうとしなかったのかとか。僕はまだこうしたリフレ派に対して批判的な論者の主張をちゃんと読んだことがないので、公平を期すために、次はリフレ反対派の書いた本を読んでみようと思う。



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コメント 1

don

バランスシート不況下では、いくらマネタリーベースを増やしても、
マネーサプライは増えないでしょう。そのための3本の矢です。

3本目の成長戦略は、アイデア勝負だから簡単にはいかないだろうけど、
2本目は、ふつうのケインズ(穴掘ってお金埋める)やればいい。

インフレ、円安で国際競争力は増します。
すでにお金持ってる資産家は反対するでしょうけど^^
by don (2013-04-06 15:02) 

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