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『楽園のカンヴァス』 [読書日記]

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/01/20
  • メディア: ハードカバー
内容(「BOOK」データベースより)
ニューヨーク近代美術館の学芸員ティム・ブラウンは、スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、ヒントとして謎の古書を手渡した。好敵手は日本人研究者の早川織絵。リミットは7日間―。ピカソとルソー。2人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。

僕はあまり美術に詳しくないので、原田作品だという以外に本書を選択する理由はありません。原田作品はこれまで2冊読んできたけれど、いずれも面白かったし、先週末岐阜の実家に1泊2日で帰省するという弾丸ドライブを敢行する際、何かしら気軽に読める小説を手元に置いておこうと考えて図書館で事前に借りたものだ。残念ながらその週末には『陽子の一日』を読むのを優先させたため、実際に本書を手に取ったのは今週に入ってから。図書館への返却期限を意識しながら、朝風呂と夜の就寝前という2つの時間帯だけを利用して、コツコツ読んでいった。

さすが、元々美術に造詣のある作家だけに、これまで読んだ2作品以上に面白さがあった。というか、これまでに読んだ作品とは似ても似つかぬ美術史ミステリーである。

ご本人が森美術館からの出向という形でニューヨーク近代美術館(MoMA)に勤めた経験もあるだけに、土地勘もあっただろうし、チーフ・キュレーター(主任学芸員?)という仕事について相当な理解もあった。また、著者は岡山出身なので、大原美術館にも足を運ばれたことがあるのだろう。そういう意味では、作家として認められるようになってきた原田さんが、満を持して世に放った、一度は書いてみたかった美術ミステリーだったのだろう。

MoMAや大原美術館に多少なりとも土地勘があって、ルソーやピカソの絵画について少しばかり知識でもあったら、本書はもっと味わえたのではないかと思う。僕はルソーの作品といったらほとんど知らず、表紙に使われている『夢』はどこかで見たことがあるなぁ程度の思いしかない。本書も序盤はなかなか読むスピードが上がらず、作品の世界になかなか入っていけないもどかしさを味わった。

作品のスライドショーとかを眺めても、これが本書に登場する人々を惹きつけてやまない画家の作品なのかというところで既にピンと来ないところが大きいが、もし美術史上の彼の位置づけ、ピカソへの影響というところをもう少し知っていたら、本書も冒頭からワクワクしながら読めたかもしれない。そういう点では、僕にとっては少しばかりハードルが高かったかもしれない。
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