『のろのろ歩け』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)中島京子の新作。去年の11月頃に近所の図書館でウェイティングをかけておいて、ようやく順番が回ってきて借りることができた。僕の後には待っている人もいるので、とっとと読んで返却することにした。
『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。
『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。
『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。
時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語。
中島作品は、単に小説以上の情報が得られるから有用だ。読んでいて北京、上海、台湾の街を自分で歩いているような気持ちにさせられた。それに、この作家はその街や国の歴史にも通暁し、昔の文献にもちゃんと目を通しているので、作品の中で出てくるひとつひとつの「小物」にすら登場させるだけの意味を込めている。「なるほどそういうことか」とエンディングシーンで唸らされることが多い。
単なる現地取材以上のことを小説を書く準備にかけているのがよくわかる。好感の持てる作家だ。本作品もお薦めする。特に女性に。
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