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日本のNPOはなぜ不幸なのか? [地域愛]

日本のNPOはなぜ不幸なのか?―「社会をよくする」が報われない構造を解く

日本のNPOはなぜ不幸なのか?―「社会をよくする」が報われない構造を解く

  • 作者: 市村 浩一郎
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2008/09/20
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
社会のために貢献する仕事、しかし、生活が成り立たない、という現状を変えていきたい!日本という国をより良い形に変えていくためには、営利企業セクターと行政セクターに並ぶものとして、NPOセクターというもうひとつの経済セクターを成立させることが必要不可欠。そのために何をどう変えなければならないのか。インタビューとデータをもとに考察。
仕事で知り合った方に、この本をご紹介いただいた。読メやアマゾンの感想を読んでいると、2008年発刊なので多少記述が古くなっているが、日本のNPOの抱える問題点を的確に指摘している点では評価が高い1冊だ。

著者は民主党の衆議院議員だったが、昨年末の選挙では落選の憂き目を見た。僕はこの場で自分の政治的立場を明かすつもりはないが、民主党の大敗は仕方ないにせよ、真に良識ある著者のような人までが流れに飲み込まれてしまったのは残念な気がする。ただ、過去の選挙成績を見ていると当選と落選を繰り返しているようで、元々支持基盤がそれほど強固なわけではなかったのだろう。著者プロフィールを読むと、新潮新書の出井康博『民主党代議士の作られ方』のモデルになったとある。機会があれば読んでみたい。

ただ、本書は議員を務めている時に書かれている。2008年発刊の本書をはじめ、以後2009年、2010年と著書が出ている。議員としての激務の間に、本書に書かれているような取材を遂行するのはきっと大変だ。本書の場合、表紙に「取材協力」として協力者の名前がクレジットされている。こういうサポートでもないと、これだけ短期間で何冊もの本は出せないだろう。

著者は、日本にNPOが定着する基盤がまだまだ弱いと指摘する。「官のみが公を担う」とする国家公益独占主義に基づく制度には限界が来ており、民間にあって公共を担うNPOがその役割をもっと発揮できるような制度基盤作りが求められるという。そのためには、税収の数パーセントでも政府・自治体経由ではなく直接NPOセクターに配分されるような仕組み作り、個人・企業がもっと寄付を行ないやすくなる仕組み作りが必要になる。要はNPOセクターが行政の下請けとなるのではなく個人・企業から直接的に資金がNPOセクターに流れるパイプを太くすべきだというのだ。もしNPOへの寄付の非課税幅が拡大すれば、政府は税収が減ることになるので、競争性を増した行政の効率性も増す余地があるという。

そうした地域のNPOを支えるのは、地域住民であるのが自然だ。地域の人々が、その地域のNPOの活動を吟味して、1000円なり1万円なりを寄付として出しやすくする環境の整備が求められている。
 また、寄付金を所得税のベースから控除されるようにすることはもちろん、一定金額を限度とした税額控除も導入すべきだ。(中略)そうすれば、NPOセクターに向かう資金の大きな流れができ、NPOを支える資金の蓄積もできる。(p.176)

随分以前にブログでも述べたことがあるが、僕が地元の国際交流協会のアクティブメンバーになった理由は、地元の資源を地元を拠点とした国際協力NGOに多少なりとも流せる仕組みを作りたかったからである。本業の方が忙しくて最近は活動への参加もおろそかになりがちだったが、年も替わったことで、もう一度初心に戻って自分に何ができるかを考えてみたいと思う。

NPOはただで働くものだ、多くは期待できないと思っている行政職員も少なくない。そこを伝えていくことが必要なのだが、それは官製のNPOセンターには難しい。民間の知恵を持ったコーディネート組織が必要なのだ。もちろん、コーディネート機能だけでなく、今後はファンドレイジング(事業資金集め)も行わなければならない。そのためには、ただ予算を使い切る人材ではなく、事業を興せる人材が必要になる。(中略)
 しかも、民間で資金や情報、人材を回すことができるようになれば、NPO、特活法人が行政の下請けから脱することもできる。継続性が保たれるだけでなく、より実効性の上がる方法論を選択することも可能になる。(p.194)

一方、NPOに対しても厳しい指摘をしている。いつまでも補助金頼みの事業計画を続けるのではなく、会員なり事業収入なりで自力で採算がとれるよう自立していくことが必要だという。どうやったら財団助成が受けられるかといったハウツーもののセミナーは人気もあるが、そこで強調されているのが実は自立採算可能な事業設計なのである。

ここで肝に銘じるべきは、これは特活法人、ひいてはNPO全体に自主独立を促しているという点である。
 自主独立には、当然自己責任が伴う。先に指摘したとおり自主事業や、寄付金や会費集めにかける努力がより重要になる。また、的確な判断基準を融資、その基準に従って行動できるようにならなければならない。また、環境変化に即応する能力も求められる。行政の下請けに甘んじ続けたり、NPOセンターに頼りっぱなしではだめなのだ。
 そうやって、自らの足で立つためには、営利企業同様、内部統制も含め、人材の確保、マネジメント力、マーケティング力などの経営手腕と、財務体質の健全化などが求められるということなのだ。(p.95)

本書には障害者福祉分野の特定非営利活動法人(あえてNPOとは言わない)のご苦労も事例として沢山出てくる。あるNPOの関係者によれば、特活法人になる多くのNPOの動機は、「仕方がない」からなのだという。いつまでも任意団体として活動するには困難を伴うことも多い。ちゃんとした法人格を取得するにしても、株式会社には馴染まないし、公益法人になるのも現実的には無理だという。でも、障害者自立支援法や介護保険、社会保険の受け皿となるには法人格が条件とされているので、補助金を受け取るためには法人格を取得せねばならないのだ。それでも、介護保険からの報酬だけには頼れない。事業収入の確保は必須だが、福祉サービスの分野で十分な利用料を受け取ることも難しいだろう。読みながら涙が出てくるような大変な状況が指摘されている。

制度は一度作ったからといって未来永劫不変というものではないと思う。本書を理解のベースとして、今後のNPOセクターを取り巻く環境の変化を見守り、自分にできることは何かを考えていきたい。

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