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『リバース・イノベーション』 [インド]

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション

  • 作者: ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
リバース・イノベーションとは「途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させる」という、従来の流れとまったく逆のコンセプトであり、時に大きな破壊力を生み出す。そのインパクトとメカニズムを、シンプルな理論と豊富な企業事例で紹介。
僕が学生の頃は、レイモンド・ヴァ―ノンの「プロダクトライフサイクル論」が流行していた時代だった。日本の企業の海外直接投資が盛んになり、世界規模での生産立地の再編が進む中で、市場に近い場所で最終製品は生産が行なわれるようになり、それでも最後に本国に残るのは製品研究開発部門だと考えられていた。

本書は、ヴァ―ノンの理論に対して、21世紀になってにわかに脚光を浴びてきた新興国の台頭を背景にした、新たな理論枠組みが提案されている、注目すべき新刊だ。先進国の企業が途上国で成長しつつある中間層をターゲットにした商品開発をターゲット市場に近い場所で進めて、その結果生まれたイノベーションが、はね返って他国の市場でも受け入れられるという話だと理解した。

僕は経営学の専門ではないので、本書の第1部の理論構築編は飛ばし読みで済ませた。興味があったのは第2部の事例分析編。当然ながら新興国市場をターゲットに開発される商品なのだから、インドの中間層をターゲットに開発された製品の事例もいくつかある。インドに住んでいた頃には何気なく見ていたGEの携帯型心電計とかペプシコのスナック菓子「Kurkure」や「Aliva」とか緑と黄色のカラーが特徴的なジョン・ディア(John Deere)の農機具とかが本書では紹介されているが、そうした製品がヒットした背後で、こうした企業のたゆまぬ努力があったのだというのを学べたのが良かった。

ただし、本書はいわゆるBOPビジネスのお話とはちょっと違うので注意。あくまでも新興国で小金持ちになりつつある人々をターゲットにした商品の話で、BOP層の購買力ではまだまだ手が届かない商品である。それに、そこでヒットした商品とそのイノベーション創出メカニズムをその先のグローバル市場にも適用しようと指向する点でも、ちょっとBOPビジネスとは違う空気を感じる。

ただ、日本企業がインドに進出してインド市場向けの商品開発を考える上では参考となる点は多いと思う。日本企業はBOPビジネス開拓といいつつも、日本で開発プロジェクトチームを編成し、検討作業は日本で行なわれているところが多いように思うが、本気でBOP市場開拓をインドで指向するなら、商品開発チームをインドに常駐させないといけないのではないかと僕は漠然と感じていたが、本書を読んで、その思いをいっそう強くした。

タグ:BOP 新興国
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