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電子書籍に関する本2冊 [読書日記]

先週の仕事のヤマ場が終わってから、次のヤマ場へと重心を移していく中で、ここ2週間ほど検討先延ばしにしていた課題が幾つかあった。先週末から今週前半にかけ、その懸案事項を片付けるのに奔走中で、その1つが電子書籍出版に関する基本の理解だった。我が社で関わっている出版プロジェクトの中で、場合によっては電子書籍出版にすることも検討する可能性が出てきたからだ。

市立図書館で検索をかけ、気になった本を何冊か予約しておいたところ、最初に借りれた2冊について、ここで紹介してみようと思う。

電子書籍の作り方ハンドブック―iPhone、iPad、Kindle対応

電子書籍の作り方ハンドブック―iPhone、iPad、Kindle対応

  • 作者: ジャムハウス
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2010/09/01
  • メディア: 単行本
内容紹介
iPad、Kindleの登場で大きな話題となった電子書籍。米国ではすでに、アマゾンでの販売数が紙の本を抜き(2010年7月)、日本でも各企業・団体が相次いで参入・規格を発表するなど、これから大きな成長が期待される分野として注目を集めています。  本書はそんな電子書籍の代表的なフォーマットである「EPUB」形式を中心に、その作り方、売り方の手順をやさしく解説。さらにその歴史から、読みやすい本を作るためにプロの編集者が気をつけていることまで、電子書籍にまつわる「知りたい」をぎゅっと詰め込みました。「電子書籍ってどんなもの?」というビギナーの方から、実際に作成して売りに出したい!という中級者まで、しっかりフォローした本になっています。  EPUBデータのサンプルデータをダウンロードできるサービスも付いています!
そもそも電子書籍について何も知らない人間にとっては、電子書籍化の取組みが1980年代から既にあったこと自体が驚きだ。うまくいかずに何度か消えた構想が復活し、電子書籍リーダーが次々と登場して、電子書籍化が閾値を超えそうなところまで来たのはつい最近のことらしい。本書はそういった電子書籍の発展の歴史から始まり、各電子書籍リーダーの特徴、我々が手元に持っている雑誌や本のデータの電子書籍化(単にPDF化のことのようにも見えるが)等が書かれているが、本書の中心は、EPUBという無料ソフトを使って電子書籍を作る方法の解説にある。ただ、そうした技術面にはとどまらない。本書のミソは、第6章の「面白い本を作るには-プロからのアドバイス」にあると思う。この点については後述する。

誰でも作れる電子書籍 今すぐできる制作から販売まで

誰でも作れる電子書籍 今すぐできる制作から販売まで

  • 作者: 米光一成・小沢高広・電子書籍部
  • 出版社/メーカー: インプレスジャパン
  • 発売日: 2010/08/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
あの「ぷよぷよ」を生んだゲームデザイナー米光一成、日本語版Kindleコミックを発表した漫画家ユニット「うめ」の原作者小沢高広。ゲーム・コミック界から電子出版の世界に飛び込んだふたりが、コンテンツ制作者の視点で電子書籍を斬る。電子書籍の制作・販売についても画面付きで解説。iPad/Kindle/iPhone/PCで読める電子書籍が、今すぐ作れる。
2冊目の本は、ゲーム・コミック界の有名な第一人者が、電子書籍部を立ち上げて、電子書籍ラインナップを一気に揃え、電書フリマを開いてそれらを販売する体験談が語られている。実はこの本の方を先に読み始めたのだが、順番からいうと電子書籍制作と販売の基礎を理解した上で読んだ方が味わえる1冊だと思う。タイトルだけから想像して期待していたのと中身とがちょっと違っていた。

誰でも作れると言っている以上、要は自分が書いたものを編集もせずに誰でもウェブ上で公開できるということである。でも、それをやるだけならブログとさして変わらない。電子書籍もタダでウェブ公開しているだけならブログと同じだが、100円でも200円でもカネを払って購入してもらうなら、中味を見ないでも購買意欲をそそられるタイトルとか、さわりの部分のみ公開しても閲覧者を落胆させないだけの文章力、目次を見て買う気になれるだけの構成力が求められる。要は紙の本の場合に編集者が行なっている作業が電子書籍でどうなるかということだ。

実は2冊読んでみて、この点が最も大きな課題だと僕は理解した。誰でも作れるということは、電子書籍では編集者の役割が軽視されがちだという課題があることを示している。我が社で作るなら我が社の手前味噌なロジックで文章を執筆して、難しい専門用語を頻発して、面白くない報告書調の本が出来上がってしまうことはうけあいだ。そうなってしまうと、その書籍のクオリティに影響を与えるし、そういう電子書籍が粗製乱造されると、電子書籍のマーケット自体が信用を失う恐れがある。だから、最初の本の場合も、面白い本を作るためのプロからのアドバイスという注意喚起が行なわれているのだろう。

余談だが、2日ほど前にある原稿を巡って執筆者と編集者が打ち合わせる機会に立ち会う機会があった。僕自身はその原稿はかなりよく書けていると思っていたが、編集者の目から見ると、確かに文章はうまいけれども、場面の描写に具体性が乏しいとの指摘もされていた。プロの編集者が見る目は素人とはまったく違う。電子書籍にするのは簡単だが、売れる書籍を作るという点では、紙の本と全く同じ姿勢が求められる。ハードルが低いだけに、僕ら自身に相当な謙虚さが必要だと痛感させられた。

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