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『日本とインド 交流の歴史』 [インド]

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日本とインド 交流の歴史 (三省堂選書)

  • 編者: 山崎利男・高橋満
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 1993/01
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
古代から現代にいたる日本とインドの交流の歴史を、政治・経済・文化の各領域から概観する。
市立図書館で偶然見つけて、借りて読んでみることにした。正直言って、この本は企業か何かの駐在員としてインドに赴任する予定の人が赴任前に読んでおくといい本であって、僕みたいに帰国して、インドとほとんど関連性のない仕事に従事していると、読んでいて虚しくなる。今からでも遅くないので、今インドと何らかの繋がりがある日本在住の方は、一度読んでみられることをお薦めする。1993年発刊で、既に19年も経っているが、歴史を扱っている書籍は発刊年から時間が経過していても鮮度はなかなか落ちない。今読んでも十分参考になる。

-日本の仏教の歴史の中でインドと最も近い関係をもったときは、平安初期、空海が805年、唐の長安で
 真言密教の伝授を受けた時である。

-「三国一の花嫁・花婿」という場合の「三国」とは、元々日本・中国・インドをさし、それが昔の日本人が知って
 いた世界の範囲だったことから、全世界を意味するようになった。この「三国」を最初に用いたのは、
 最澄だったらしい。

-福沢諭吉は「脱亜入欧」を言ってたぐらいだから、当然ながら英領インドの独立運動に対して冷たかった。
 その後も日英同盟が足枷になっていて20世紀初頭のインド独立運動を日本政府は支持しておらず、むしろ
 民間人の間でインド独立運動の支援者が多かった。新宿中村屋の相馬家とか、大川周明とかがその典型。

-カレー粉が日本に入って来て、日本化された明治時代には、カレーライスはインド料理に由来するとは
 思われていなかった。カレーライスは和洋折衷料理の典型とされ、「洋」、すなわち西洋料理の一種と
 思われて広まっていった。

-インドはサンフランシスコ講和条約ではなく、1952年に別途日印平和条約を日本と締結している。即ち、
 今年(2012年)は日印国交回復60周年ということになる。

いやぁ、知りませんでした。本書はこの手の蘊蓄情報満載だ。

日印交流の歴史と言いつつも、その背景となる世界の趨勢や日本国内の事情も相当詳しく書かれており、「インド」が直接登場しない箇所も相当ある。脱線といえば脱線だが、背景情報として知っておくのは必要だろう。編集が上手くなされていないから、結構重複した記述も見られる。日本の経済協力は2つの異なる章で登場しているし、日印のコットン貿易についても、2ヵ所ほど別の場所で詳述されている。僕が元々本書を読みたいと思ったのは、この1890年代の日印のコットン直接貿易の開始の背景に関する記述がかなり丁寧に描かれていたからである。

残念ながら、結局はコットンの話で、僕が本当は知りたかったシルクの話は出て来ていない。本書の発刊年を考えると、日本がインドに養蚕分野で1991年に技術協力を始めてから2年ほどしか経過しておらず、本書がその頃のシルクについて全く記述していないのは仕方がない。ただ、それよりも1世紀も前から交流が始まっていた蚕糸業での民間技術交流については、もし本書が今改訂される機会があれば、是非加えて欲しいなと思う。




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