『インド財閥のすべて』 [インド]
2012年内にはタタ・グループ総帥を辞めると宣言していたラタン・タタ会長だったが、どうやら後継者はミストリ一族の出であるサイラス氏に絞り込まれたようである。タタと同様グジャラート州のパルシー(ゾロアスター教)の出であるミストリ家は、本日紹介する本によると、タタ・サンズの発行済み株式の18.5%を所有する創業140年の建設大手シャプールジ・パーロンジのオーナー家なのだそうだ。
数週間前の日経新聞の書評欄で取り上げられていた本書は、一般教養としてはtoo muchなような気がしたが、インドに駐在する機会がありそうな日系企業とか日本の政府系機関の方々のレファレンスブックとしてはかなり有用であると思う。インドに何の縁もゆかりもないような読者が読み物として読むにはちょっと細かすぎるような気がするが、自分が相手にしているインド企業がどのグループ系列でどういう歴史があるのかは、当然知っておく必要があると思う。僕も、現地でよく目にした英語の企業名が欧米系ではなく民族資本系だったというのを初めて知ったというケースが結構多かった。
実は日経の書評が本書を評価していたのは日本との繋がりに関する記述である。具体的には、pp.91-93に書かれていた日本郵船との対英共闘の部分は面白かった。多分ネタ元になっている本も想像がつくが、いずれも原書だったり訳本でも絶版になっていたりして、日本語ではそうそう簡単に入手できない情報である。僕はこの部分がどれくらい詳述されているのかを知りたくて本書を購入したようなものだが、ネタ元の想像がついてしまっている以上著者本人がこれ以上調べられなかったのだろうと思うが、一体ジャムセトジー・タタは渋沢栄一と1893年に東京のどこで会ったのかが本当は知りたかったので、そこまではカバーされていなかった本書に対しては少しばかりの落胆も覚えた。
ただ、全体的によく調べられているという印象は受けた。どの財閥を調べられるにしてもおそらくネタ元が存在し、それと最近のインドの経済紙の記事情報を組み合わせて新書サイズに合うようにコンパクトに纏めたのだろう。民間シンクタンクを経営しながらよくこれだけのリサーチを自身でやられたものだと思う。その分析力にはある意味感銘を受ける。
繰り返しになるが、本書は読み物というよりもレファレンスブックとして活用したほうがいいように思える。
内容(「BOOK」データベースより)
19世紀、インドの商人達はコミュニティを基盤として、東インド会社や英国資本系巨大企業に囲まれながら、したたかに財閥化していった。だが、英国による植民地政策、独立後の社会主義混合経済のもとで、財閥は翻弄されてゆく。そして、1991年の外貨危機を契機とした自由化政策により、新たな成長戦略のなかで再び活力を取り戻した。インド経済の7割を動かす、少数家族の実体とは。
数週間前の日経新聞の書評欄で取り上げられていた本書は、一般教養としてはtoo muchなような気がしたが、インドに駐在する機会がありそうな日系企業とか日本の政府系機関の方々のレファレンスブックとしてはかなり有用であると思う。インドに何の縁もゆかりもないような読者が読み物として読むにはちょっと細かすぎるような気がするが、自分が相手にしているインド企業がどのグループ系列でどういう歴史があるのかは、当然知っておく必要があると思う。僕も、現地でよく目にした英語の企業名が欧米系ではなく民族資本系だったというのを初めて知ったというケースが結構多かった。
実は日経の書評が本書を評価していたのは日本との繋がりに関する記述である。具体的には、pp.91-93に書かれていた日本郵船との対英共闘の部分は面白かった。多分ネタ元になっている本も想像がつくが、いずれも原書だったり訳本でも絶版になっていたりして、日本語ではそうそう簡単に入手できない情報である。僕はこの部分がどれくらい詳述されているのかを知りたくて本書を購入したようなものだが、ネタ元の想像がついてしまっている以上著者本人がこれ以上調べられなかったのだろうと思うが、一体ジャムセトジー・タタは渋沢栄一と1893年に東京のどこで会ったのかが本当は知りたかったので、そこまではカバーされていなかった本書に対しては少しばかりの落胆も覚えた。
ただ、全体的によく調べられているという印象は受けた。どの財閥を調べられるにしてもおそらくネタ元が存在し、それと最近のインドの経済紙の記事情報を組み合わせて新書サイズに合うようにコンパクトに纏めたのだろう。民間シンクタンクを経営しながらよくこれだけのリサーチを自身でやられたものだと思う。その分析力にはある意味感銘を受ける。
繰り返しになるが、本書は読み物というよりもレファレンスブックとして活用したほうがいいように思える。
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