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『途上国の人々との話し方』再訪 [読書日記]

途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法

途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法

  • 作者: 和田信明・中田豊一
  • 出版社/メーカー: みずのわ出版
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 単行本

このブログでも度々ふれてきた京都の大学院での講義、9月末から毎週月曜午後2コマ担当してきたが、28日(月)の講義を以て全日程を終了した。大学院ということで、学部の聴講生を加えても受講者は6人と小規模だが、1回2コマなので、うち1コマを僕の講義に充て、残りの1コマは「文献研究」と称して課題文献を読み、毎週担当の学生に内容の発表をしてもらうという方法をとった。

「文献研究」でどのような文献を用いるのかは大きな課題だ。初日の講義で学生に大学院での研究テーマを聞いたところ、僕の講座タイトルにあるような主題で今後のキャリアを考えている人はあまりいなかったため、僕は当初考えていた別の英語の文献を諦め、代わりに『途上国の人々との話し方』をテキストに用いることにした。

この本を読み直すのは、発刊直後の昨年11月以来ちょうど1年振りということになるが、さすがに今回は本書を読んで学生とのディスカッションをやろうとすら考えていたため、相当にしっかりと読み込み、各章2回は読んで自分なりに講義ノートにまとめて授業に臨んだ。日本語の読解力とか自分が言いたいことを言葉にするのが大変だったであろう中国人留学生も何人かいたこともあって、ディスカッション自体は期待したほど盛り上がらなかったけれども、最後の講義の際に本書に書かれていた「メタファシリテーション」が各々の今後のキャリアの中でどう生かせるのかと聞いてみたところ、①企業コンサルティングや②フィールドワークの場での活用といった割とストレートに活用できると答えた学生もいたし、③回答者に質問者の意図を読まれないようなアンケート調査の質問項目を考えたいとか、④日常生活の中での人間関係を円滑にするために活用できる、と答えた学生もいた。この点においては文献選択は間違っていなかったのではないかと思った。

ついでに期末レポートの課題も、本書を批判的に検討することを課した。これだけ優れた方法論なのに、主流化がなかなか進んでいないのはどうしてなのか、容易に導入できないフィールドワーカーやNGOが多いのはなぜなのか、そんなことを学生にもう一度考えてみて欲しかった。(本当は授業中のディスカッションで訊いてみたかったことでもあったのだが…)

勿論、こんな期末レポート課題を学生に課したわけだから、僕自身も目を皿のようにして本書を読み込み、結果幾つか感じたことがあり、僕だったらこうレポートを書くだろうというアイデアもある。今どきの学生はこういう場合にはネットで検索して情報収集を最初にやるだろうから、今ここで僕が自分のアイデアを開陳してしまうと、それをネタにしてレポートを書こうとする輩が出てくるとも限らない。従って、思うところはあるものの、学生がレポートを提出する1月24日までは口をつぐんでおくつもりだ。もしこの論題についてご興味のある方は、来年1月下旬以降にもう一度このブログをお訪ね下さい。

同じ本でも、その時その時に自分が感じていた問題意識や置かれた立場によって、読むたびに新たな発見がある。本書の場合も例外ではなく、特に今回は批判的な視点から相当な熟読をやったので、前回とは違う、いろいろなものが見えてきた気がする。本書は440頁もあるかなり分厚い本だが、それでも実際の著者が代表を務めるNGOや著者自身が現場でやってきた活動と見比べた時、著者が本書では明確に述べていないことがあるのにも気付いた。意図的なのか意図的でないのかはわからないが(苦笑)。

さて、講義全体の話に戻すと、毎週月曜日に京都に出かけるのは精神的にも体力的にもしんどかったと弱音をまず吐いておく。僕の前任者は15コマを3コマ×5週と考え、毎週土曜日を3コマにして、合計5週間で講義を終わらせた。僕は土曜日がつぶれることを懸念し、むしろ平日の方が学生は集まるのではないかと期待して月曜午後を選び、かつ日帰りを想定して午後2コマとして合計8週間京都に通うプログラムを考えた。しかし、結果的には土日は講義準備でつぶれることが多かったし、東京-京都間の日帰りを1回やってみたら異常に疲れることがわかり、岐阜の実家に日曜日に立ち寄り、そこで講義準備をして、それで翌日京都に乗り込むことにした。そして何よりも、平日に講義を持ってきたところで、学生数は大きくは増えなかった。

来年度僕がこの仕事を引き受けるのかどうかは今はわからないが、幸い今期作成した講義資料を多少の改訂ですぐに使えるようにもなるし、土曜3コマでもさほどの負担にはならないのではないかと思う。それに、ついでにもう1泊して日曜日に京都観光ということもできる。今期は、8回も京都に足を運んだ割には大学の近所にあった神社仏閣すら訪ねる余裕がなかったし、京都に住む弟を訪ねることもできなかった。

ブータン国王が訪ねた金閣寺も、本当は行ってみたかったのですが…。

それと、月曜の講義を含めると毎週3日連続で職場を留守にする格好になり、翌火曜日の朝の出勤がものすごく憂鬱な気持ちになることが多かった。成果を急かされた作業もあったりして精神的にはすごく追い詰められた時期もあったし、しんどかった。講義に集中している月曜日はある意味現実逃避していたのでさほど苦にならなかったが、翌朝の出勤は本当に気分が重く、実際に出勤してみて月曜日に受け取っていたメールで予想外の作業が強いられたこともあったことはあった。こうしたことからも、毎週3日連続で職場を留守にするようなスケジュールの組み方はしない方がいいと思った。

今は終わってホッとしているところだが、実はこの2ヵ月のうちに、別の大学で1コマだけゲスト講師をやって欲しいという依頼を2つ受けることになった。12月と1月に各1回、声をかけていただけるつのはありがたいことなので取りあえずは受けたが、いずれの論題が違うので、別のスライドを準備しておかなければならない。それも結構大変だが、履歴書に書けることは背伸びしてもやれというポリシーなので、とにかく頑張りたい。
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らっさな

検索し、本書のコンテンツを読みました。
書いてあることのほとんどは、まったくその通りで、理解できました。
これを、実現するには、どのような大きな課題があるかも実感します。
努力して実現可能な部分、現在の制度システムではかなり困難な部分が見えてきます。
開発ワーカーとしては、この理念を理解したうえで、現実のなかで、どこまでこの理念を実現していくかを探っていくことでしょう。
さもなければ、普通の開発ワーカーでは、自分自身がつぶれてしまうでしょうね。

by らっさな (2011-12-02 16:41) 

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