SSブログ

『ブラジル大豆攻防史』 [読書日記]

ブラジル大豆攻防史―国際協力20年の結実 (国際協力選書)

ブラジル大豆攻防史―国際協力20年の結実 (国際協力選書)

  • 作者: 青木 公
  • 出版社/メーカー: 国際協力出版会
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: -
内容(「BOOK」データベースより)
世界第2位の大豆生産王国に成長したブラジル。その起爆剤となったのは、20年にわたる日本の国際協力プロジェクトだった。農民、プロジェクト関係者、穀物商社、環境保護活動家らに丹念に取材し、ブラジルの農業フロンティア形成をダイナミックに描く。『甦る大地セラード』の姉妹編。

大学院での論文指導教官から、あまり戦線を拡大せず、ふだんの仕事も研究テーマに収斂させていくよう忠告を受けているのだが、実際に職場でやっている仕事は、そうした思惑とは裏腹に、内容が拡散していく傾向にある。僕自身はもっと南アジアに引きつけたことをやりたいと思ってはいるものの、アフリカや東南アジア、そして、最近になって韓国とか中南米とかが入ってきた。中南米ということでは2ヵ月ほど前にチリに関して本を1冊ご紹介したが、今度はブラジル、しかも同国の中西部で1970年代に始まり、準備期間も含めると30年近い協力が行なわれてきた「日伯セラード農業開発事業(プロデセール)」について、少し勉強しなければいけなくなった。

セラード農業開発の本を読むのは実は最初ではない。この著者が1995年に出された別の本を、発刊直後に読んだことがあった(下記)。自宅で探してみたら蔵書に残っていたので、先ずはそれを読み始めたのだが、その直後に同じ著者が2001年にその続編を出されているのを発見し、それだったらもっと最近のものを先に読もうと考えた次第。

『甦る大地セラード』を読んだ記憶はあまり残っていなかった。当時から既にその成果がまだら模様だったからではないかと思う。見る人の見る視点によって、成功プロジェクトとも評価できるし、うまくいかなかったプロジェクトとも見える。現在のように穀物の国際市況が上昇していて、食糧安全保障の観点から未開のブラジル中西部を開いて穀物増産に取組み、ブラジルを世界第2位の大豆輸出国にまで成長させたという点では、セラードは大きな貢献をしたと思う。しかし、その過程の1980年代、ブラジル全国で起った超インフレのため、金利上昇で借金返済が難しくなった農民が農地を手放すケースも続出し、勝ち組と負け組の二分化が進んだ点を取り上げれば、セラードはあまりうまくいかなかったという評価になってしまうかもしれない。

元々ブラジルの穀倉地帯は南部と言われており、セラードはサバンナ地帯である上に土地が強酸性で貧栄養状態であり、穀物生産に不向きだと考えられていた。しかし、アフリカのサバンナと違い、降雨量や川の流水量が豊かで、技術や資金さえあれば土地改良ができる土地だとも考えられていたらしい。

セラードの農業上の価値が上がったのは、1973年に米国ニクソン大統領が穀物の対外輸出禁止措置をとったため穀物価格が急騰、最も深刻な打撃を受けた日本が、穀物の輸入チャンネルの多角化を図ろうとして期待を寄せたのがブラジルだったらしい。(というコンテクストからも、なぜ今頃またセラードの話が持ち出されているのかはだいたいおわかりいただけるだろう。)

日本の協力は、初期の入植者による試験的事業に対するJICA(当時)投融資と、その試験的事業の成果をもとに入植者の本格的な事業の実施をOECF(当時)の円借款ツーステップローンにより融資するという2つのスキームを中心に、農業技術協力のための専門家派遣も併せて、1979年から2001年にかけて行なわれたようである。

ただ、『甦る大地セラード』を読んだ時にも感じたわかりづらさを、『ブラジル大豆攻防史』もひきずっているような気はした。ジャーナリストとしてセラード農業開発の光の部分も陰の部分もあまねく紹介しようという姿勢はフェアだと思うが、章建てがなぜこうなのかについては何ら説明もないため、今自分がどこにいるのかがものすごくわかりづらい書き方で終わっている。少なくともダラダラと1回読んだだけでは理解が難しく、多分もう1回読み直しでもしない限りはすんなりとは理解できないと思う。

我が社にはこの協力について生き字引のような人がいらっしゃる。その方は自分の理解度をスタンダードに定めて話し相手にも同等の理解水準からスタートして議論について来ることを求められるので、正直言って門外漢の僕にはしんどい。ただ、穀物市況が高騰している今日、1970年代前半と同様のコンテクストからアフリカを見る見方が台頭し、セラードの頃はどうやっていたのかというのを調べておく必要が生じてきた。少なくともにわか勉強で決裁稟議書のお経の部分ぐらいは書けるようになったらいいとは思っているのだけれど…。

取りあえず今週中に稟議書を書き上げない状況です。

EPSON003.JPG

甦る大地セラード―日本とブラジルの国際協力 (国際協力選書)

  • 作者: 青木 公
  • 出版社/メーカー: 国際協力出版会
  • 発売日: 1995/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0