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『大延長』 [読書日記]

大延長 (実業之日本社文庫 堂場瞬一スポーツ小説コレクション)

大延長 (実業之日本社文庫 堂場瞬一スポーツ小説コレクション)

  • 作者: 堂場 瞬一
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2011/06/04
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
公立の進学校・新潟海浜と、私立の強豪・恒正学園との夏の甲子園決勝戦は延長15回でも決着がつかず、再試合にもつれこんだ。両チームの監督は大学時代のバッテリー。中心選手はリトルリーグのチームメイト。互いの過去と戦術を知り尽くした者同士の壮絶な闘いのなかで、男たちの心は大きな変化を遂げていく―野球を愛するすべての人に贈る、感動の傑作長編。
少し前に『8年(Eight Years)』を紹介した時にも述べたことであるが、堂場作品に登場する人物は、極端な性格や才能、技能を持った者が多く、状況設定も極端というものが多いような気がする。後先のことを考えずにその場の勝負に全てを賭け、結果体のどこかを故障して、それ以降の競技生活をふいにしてしまう者もいるし、癌を患いながら教え子2人が監督を務めるチーム同士が激突する決勝戦のテレビ中継に臨む老解説者もいる。相手の出方を読む能力に長けていて三振を絶対にしない選手はいるは、逆に試合の流れを見守らずにベンチ裏にこもってひたすら自分の打席に備えて素振りを繰り返す強打者もいる。場面設定は延長15回0-0を戦い終えて翌日の再試合に臨むところからスタートする。400頁あまりの文庫版の中で、ひたすら描かれるのは再試合前夜から再試合もまた延長戦にもつれ込むまでの群像劇だ。確かに面白いのだが、前にも書いた通り、あまりスパイスの効いた料理ばかりを食べていると舌が麻痺してくると感じるところはある。

『大延長』というのには3つの意味があるようだ。1つは文字通り夏の甲子園の決勝戦が延長15回引き分け再試合になり、翌日の再試合でも再び延長戦に突入するという、新潟海浜高校と恒正学園の果てしない闘いのドラマのことだ。もう1つは、両校の監督が大学時代にバッテリーを組んでいたというところから始まり、2人の教え子が甲子園の決勝戦という舞台で監督としてあいまみえ、さらにその新潟海浜のエースと恒正学園の4番打者がまたそれぞれ高校チームを率いて神奈川県大会で激突するという、三世代にもわたる闘いの歴史のことを表している。そして3つめは、この新潟海浜のエースと主将、そして恒正学園の4番打者は、中学時代はチームメートだったが、高校進学時に道を分かち、そしてお互いに新潟と東京の代表として甲子園で再会するというのも、中学時代から、高校、そして競技生活を引退して監督として野球に関わるまでの20年余りにわたる壮大なドラマであることも表している。

―――まあ、このあたりまでで本書の紹介は宜しいでしょう。

ところで、本書を読みながら、中学や高校、大学で野球をやるということが、時代や世代を経てもチームメートや監督と教え子という関係で繋がっているというところには、少しばかり感動を覚える今日この頃である。自分の高校時代を振り返ってみても、野球部といったら1学年に20数人は部員がおり、それが毎年連なっているわけだから、横だけではなく、縦の繋がりも相当に強い。この夏、僕は母校の同窓会総会というのに卒業後初めて顔を出したが、その時にも、各学年で人を集めたコアになっていたのは皆野球部のOBのネットワークであり、総会後に開かれた僕らの学年だけでの同窓会の出席者の中核も、野球部のメンバーであった。どこの高校でもそうだとは言わないが、こと我が母校に関して言うならば、高校卒業後に地元から通える大学に進学してその後も故郷で生活を送っているOBが野球部の場合は多く、僕がいた剣道部なんてのは同期が比較的少なく、卒業後もばらばらで、一度も集まったことがない。

野球部ってある意味いいですよね。そんなことを考えました。
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