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岡谷蚕糸博物館訪問記 [シルク・コットン]

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5月1日(日)、実家のある岐阜から東京へ帰る途中、岡谷で高速を下りて岡谷蚕糸博物館に立ち寄ってきた。僕自身は2月に出張で岡谷には来ているが、時間がなくて蚕糸博物館を訪れることができなかったので、この連休の帰省の行きか帰りに立ち寄ろうとかなり以前から考えていたものだ。岡谷出張後、少しばかり製糸の勉強もしたが、何しろ繰糸機の実物を見たことがなかったので、イメージがなかなか湧かなかった。(いや、八王子で座繰りの繰糸機は見たことがあるけれど、多条繰糸機の実物は見てないもので…)

以前ここの館長さんに手狭だとは聞いていた。確かに手狭な印象はあったけれど、陳列のされ方には工夫もあってわかりやすかった。例えば、1人で煮繭から繰糸まで行なう糸車2個の足踏式座繰機(▼写真上)から、糸車が4個になり、8個になり、やがて20個の御法川多条繰糸機(▼写真下)に至るまで順に陳列されており、工員1人当りの生産性を向上させていく技術開発のプロセスが理解できるようになっていた。

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多条繰糸機といえば、南インドに導入されていて、1974年にカルナタカ州を訪れた製糸分野の日本人専門家が、「あまり使われずに置かれていた」と報告されていた増沢式繰糸機(下写真)も展示されていた。こんな器械なんだなというのがわかってよかった。

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今回は子連れで見学に出かけたので、子供が退屈しないかどうかが気になったが、繰糸機の改良プロセスや繭の毛羽取り機、蚕の上蔟器(まぶし)の展示(下写真)などを見せて知ったかぶりで説明をしたら、ちゃんと聴いてくれたのは嬉しい。

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《さまざまな「まぶし」の展示。蚕は独力では丸い形の良い繭は作れないと子供に解説》

また、蚕の繭から糸がどのように引かれるのかはただ単に展示されている繰糸機を見てもなかなかイメージしづらいと思うが、ここでは実際に繭を洗面器のような鍋で水にひたし、そこから糸を引く簡易な繰糸の体験コーナーが設置されていて、子供達も面白そうに糸車を回していた。僕自身も、糸を撚るというのがどういうことなのかを実際に見ることができて参考になるコーナーだった。

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館内には何組かの方々が見学に来られており、「昔やったなぁ」といった声が所々で聞かれた。館長さんに御挨拶して少しばかり立ち話をさせていただいたが、この日は昔岡谷で製糸工女をなさっていたという方が博物館を訪問されていたそうで、当時製糸工場で使われていたような機材や工具、帳簿類等をご覧になって、懐かしい懐かしいと仰っていたらしい。正直言うと今の岡谷は日中通りを歩いている人を殆ど見かけない静かな街になってしまっているが、製糸で栄えた当時は大賑わいだったようだ。

ついでながら、蚕糸博物館には美術考古館も併設されている。実は先週ご紹介した『お産の歴史』の中で、本館に所蔵されている土偶の挿入写真があったのだが、その実物を見ることもできた。縄文時代に作られた「壺を持つ妊婦土偶」(下写真)で、妊娠した女性をあらわしたもので、豊穣と安産を祈願したものとされている。壷を抱えて腰に手をあてたポーズの完全な姿は、国内でただ一点という貴重な土偶らしい。

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昼過ぎに博物館に到着してひと通り見学した後、どこで昼食を取ろうかということになって、館長さんにお薦めのお店を聞いてみた。岡谷といえば鰻か蕎麦ということで、館長さんからは上諏訪の「そば蔵」を薦めていただき、さっそく行ってみた。1時半過ぎとピークは過ぎていたと思うが、6組待ちの大賑わいだった。ウェイティングリストに名前だけ書き込み、上諏訪の片倉館にも行ってみた。片倉館は、製糸事業主の二代目片倉兼太郎が工員の福利厚生のためにと建設したリゾート施設で、山本茂美『ああ野麦峠』でも紹介されている。そこで食事できればと思ったわけだが、温泉入浴しないと食事はできないそうで、結局あきらめてそば蔵に戻ってお蕎麦をいただいた。

帰省の度に毎回通過している諏訪湖畔だが、天候さえ良ければ楽しい施設が幾つかあり、今後も立ち寄ってみたいですね。今回は天候もイマイチだったし、そこから東京に戻る中央道上りは交通渋滞がひどくて疲れたけど。

それにしても渋滞ひどいね。

岡谷インターネット美術館
http://www.okaya-museum.jp/
片倉館
http://www.katakurakan.or.jp/
そば蔵・本店(上諏訪)
http://r.tabelog.com/nagano/A2004/A200404/20000441/
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