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インドの原子力発電所 [インド]

インド:反原発デモで1人が死亡 福島第1事故で高まり
毎日新聞、2011年4月19日
【ニューデリー杉尾直哉】インド政府が世界最大の原発建設を予定する同国西部ラトナギリで18日、計画に反対するデモ隊が一部暴徒化し、警察の発砲で住民1人が死亡、数人が負傷した。反対運動は数年前から起こっているが、福島第1原発事故をきっかけに運動は高まりをみせ、死者が出たのは初めて。
 住民が反対するのは、ジャイタプール原発(原子炉6基、出力計990万キロワット)計画。完成すれば東京電力の柏崎刈羽原発を抜き、世界最大となる。原子炉はフランスが提供する。
 デモ参加者が19日、毎日新聞に語ったところによると、予定地近くに18日、住民ら約700人が集まり、一部が重機などを破壊した。警察が警告射撃し、警棒で女性や子供の参加者を殴ったため、デモ隊が暴徒化し、投石などで警察側にもけが人が出たという。デモ隊の数十人が拘束された。19日も商店などが閉められ緊張が続いているという。
 ムンバイの反原発活動家らによると、現地は良好な漁港でマンゴーの特産地としても知られる。原発予定地が海岸に近く、福島第1原発の事故以降、地震・津波を恐れる声が高まっているという。
 計画では、約700ヘクタールの敷地に職員の居住区などを含めた「原発パーク」を築く構想。約2300世帯が立ち退きを要求されたが、反対の住民が多く、補償金を受け取ったのは約30世帯にとどまっている。営業運転開始時期などは未定。
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20110420k0000m030031000c.html
福島第一原発の事故を受けてもインドの原発推進政策は不変と政府首脳が強調していたのとは裏腹に、この事故の報道はインド国内の操業中の原発及び建設予定地周辺の住民にも伝わっており、これまでにもあった反対運動にも拍車がかかっているようである。今回の事故で図らずも露呈してしまったことは、①原子炉が密集していると、そのうちの1基で事故が発生するだけで周辺の原子炉にも影響を及ぼし得ること、②核保有国にならなくても、相手国の原発にミサイルを撃ち込めば核保有国になるのと同じ効果が得られること(テロの場合も同様)等である。

現在インドで建設中の原子炉は次の6基である。
-タミルナドゥ州クダンクラム(2基)、
-ラジャスタン州ラワットバータ(2基)、
-グジャラート州カクラパール(2基)

さらに今回問題となったマハラシュトラ州ラトナギリにあるジャイタプール原発の新規建設も含め、次の6箇所で新規の原発建設計画がある。
-タミルナドゥ州ティルネルベリ、
-マハラシュトラ州ラトナギリ、
-アンドラプラデシュ州スリカクラム、
-グジャラート州バーヴナガル、
-ハリヤナ州ファテハバード、
-マディアプラデシュ州マンドラ

グジャラートやマハラシュトラ、それにラジャスタンもパキスタン国境からは近いし、グジャラートといったら2001年の大地震を思い出させる。地震多発地帯での原発立地が反対派の大きな抵抗を呼ぶポイントとなっている。逆に東海岸沿いに立地するタミルナドゥやアンドラプラデシュ州の原発は、まあないとは思うけれどスマトラ沖地震津波以上の大津波が来た時に大丈夫かという心配はあるかもしれない。

ところで、インドには稼働中の原発がどれくらいあるのだろうか。気になって調べてみたことがある。

IndiaNukePlants.jpg
《見にくいですが、地図をクリックすると拡大されます。》

インドで稼働中の原発は6ヵ所、19基存在する(上図と数が合わないのは、地図作成時と現在との時間差によるものと思われる)。実は最初に調べてみようと思ったきっかけというのが、僕がまだインドに駐在していた2009年に起きたカルナタカ州カイガ原発の放射能漏れ事故だった。この原発は同州北部沿岸部にあり、その近くに知り合いがいたので、「大丈夫か」と問い合わせるメールを送信したのでよく覚えている。当時はインドに原発が存在すること自体が意外だったのだが、その後2010年春に訪れたアンドラプラデシュ州スリカクラムにも原発建設計画があると聞き、これは結構身近なところにも原発が存在しそうだと感じた。

インドは計画立案をする高級官僚はとても頭が良いと思うが、実際に原発の建設や操業を行なうのはこういう人たちではないので、安全基準のマニュアル通りに作業を行なわない作業員がけっこういても不思議ではないと思う。万が一トラブルが発生した場合でも、放射能防御服や放射線計測機器など十分揃っていない可能性があり、目に見えないから作業員が危ない処理をやって被曝してしまうリスクはかなり高いだろう。中央の頭の良い人々が思っているほど末端で作業をやっている人々はちゃんと動かない。だから、政府からは勇ましく原発推進が叫ばれていても、周辺住民は不安を感じることが多いのだろう。

実際大事故には至っていないけれど、カイガ原発の事故以外にも、重水型原子炉からの水漏れは1992年にコタ原発(ラジャスタン州)とタラプール原発(マハラシュトラ州)、1999年にはカルパッカム原発(タミルナドゥ州)で起きているし、デリーから近いところでは、ナローラ原発(ウッタルプラデシュ州)で1993年に火災が発生し、核燃料棒の部分溶融スレスレまで行ったという事故があり、国際原子力・放射線事象評価尺度でレベル4と評価されたことがあるらしい。

福島第一原発の事故と絡めたインドの原発推進政策への懸念を表明している雑誌の記事をもう少し読み込んで、いずれ追加でご紹介してみたいと思う。

【参考記事】
"Is India a Nuclear Time Bomb?"
India Today, March 19, 2011
http://indiatoday.intoday.in/site/story/japan-tsunami-earthquake-radiation-what-india-needs-to-learn/1/132787.html
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コメント 1

toshi

インドにも、こんなに多くの原発があるのですね。
知りませんでした。
by toshi (2011-04-20 13:37) 

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