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『戦後野球マンガ史』 [読書日記]

戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景 (平凡社新書)

戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景 (平凡社新書)

  • 作者: 米沢 嘉博
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
戦後すぐから現在まで、少年たちを魅了し続けてきた野球マンガ。井上一雄の「バット君」を出発点として、「背番号0」「ちかいの魔球」等。そして梶原・川崎コンビの「巨人の星」は日本中を熱狂させた。さらに「アストロ球団」、水島新司の作品群、「キャプテン」「タッチ」と多くの傑作を生み、今も読み継がれている。手塚治虫が手掛けなかった世界を、少女誌、青年誌まで目配りして書き上げた、日本初の野球マンガ史。
暇つぶし――というと語弊があるけれど、まあクリスマス休暇の頃でもあり、1冊ぐらいいいかと思い、息抜きで借りた。この手の本は「おぉ懐かしい~」とその時々の感慨に浸るのにはいいけれど、後で振り返って「だから何?」と問い直すと何も残っていない自分に改めて愕然とするのである。要すれば息抜きであり、時間つぶしでしかない。

だからと言って批判するつもりはない。僕も野球マンガに心を躍らせた少年時代を送ってきた。「巨人の星」ぐらいからが僕のカバー範囲になるが、その後、「侍ジャイアンツ」、「アストロ球団」、「1、2のアッホ!!」、「進め!!パイレーツ」、「キャプテン」、「プレイボール」、「男どアホウ甲子園」、「野球狂の詩」、「ドカベン」、「一球さん」、「光の小次郎」、「ヒットエンドラン」、「どぐされ球団」、「タッチ」、「セニョール・パ」、「バツ&テリー」、「名門・第三野球部」等は、リアルタイムで読んでいた。今でも「あぶさん」や「MAJOR」の読者である。昔の作品に関する時代背景とか、作品に対する評価とか、そういうのを知るのにはよい。何と言われても読んでいたのは僕らであり、僕らが読んで面白かったのだからそれでよいではないかと思う。

ただ、こういう本に対する評価としては、自分が読んでいたのに本書でその作品に言及がないのが悲しいというレベルのものがどうしても多くなるように思う。例えば、僕は小学校1年生だった頃、小学館の『小学一年生』では「カーブくん・ドロップくん」という野球マンガが連載されていた。僕的には初めての変化球の話で、カーブやドロップ(縦のカーブ)が投げられないかと原っぱで練習した同世代の人は結構いたのではないかと思う。内山まもるという漫画家は僕らは『小学二年生』で「帰ってきたウルトラマン」のマンガ版を連載していた作家として認知しているが(僕は彼の描く「ジャンボーグA」の画風がとても好きだった)、その彼も、ウルトラシリーズにひと区切りした後は、「リトル巨人くん」、「番外甲子園」を描いていた。

この他にも、発表年はわからないけれども、タイトルだけは記憶にあり、にも関わらず本書では全く紹介されていない作品には次のようなものがある。
 「泣くもんか!ガッツでGo!」
 「一斗の誓い」

本書では魔球の話は結構書かれているが、それに比べて打法にはバラエティがないとも述べている。まあ、「アストロ球団」がやりたい放題やって、あの「ジャコビニ流星雨打法」とか、究極奥義とも言えるような技が出て来てしまったので、もう何もできないというのがあるのだと思うけれど(殿馬の秘打は別として)、実は1つだけ、自分も小さかったので記憶も定かでないけど強烈過ぎて脳裏に深く焼き付いている打法がある。

僕が小学校に入る前の話だから1960年代の野球マンガの中での話だと思うし、内容的にも中学や高校野球の話ではなく、むしろプロ野球の話だったと思うのだが、次のような殺人打法が描かれていた。
1)打者は右打席に立つ。
2)バットは左打者のように握り、バックネット方向に投手がいるような構え方をする。
3)投手が投げてきた投球に合わせ、打者はボールと同じ方向にバットを振る。つまり、捕手に向って左打者がバットを振るようなイメージ。
4)球速よりも速くスイングし、バットにボールを乗せるような感じになる。
5)打者のスイングはそこから1回転し、三塁線の外から内野に入って来るライナー性の打球を放つ。
その結果は、球速にバットのスイング速度を乗せたライナー性の打球が三塁手を襲うため、よしんば三塁手がグラブを構えて捕球できたとしても、その球速のせいでグラブを持った腕や肘の筋肉や骨を破壊されてしまう。

本書を読んで調べたかったことがあるとしたら、この打法が描かれていた作品が何だったかについてである。でも、結局何ら言及されていなかったのが残念。誰か覚えておられる方がいらしたら是非コメント下さい。

最後に、今月コミックス最終巻が発売された『MAJOR』について。この作品で特に面白かったのは中学から高校にかけてのシーンで、いろいろなエピソードを盛り込んだアニメ版では意外といいと思ったマイナーリーグ編も、原作の方ではえらくあっさりとしていた気がする。メジャー昇格してからの展開は、急ぎ過ぎだなとすら思っていた。そんな作品だったが、1994年連載開始でコミックスが78巻まで出て、アニメも6シーズンも放映されたという人気超大作だったし、僕は子供と同等かそれ以上に熱中して愛読していた。

本日紹介した新書は2002年発刊なので、『MAJOR』人気に火がつきかけた時期だったように思う。もう少し後だったら本作品の扱い方ももう少し変わったものになっていたかもしれないが、当時は少年野球編だけを見ての評価だったので、少子化が進んでチームを作るのに必要な9人のメンバーを揃えるのに苦労したエピソードとかを取り上げ、野球はもうメジャーなスポーツではないと著者は断じてしまっている。そこは今読んでみてもちょっと残念なポイントだ。

MAJOR(メジャー) 78 (少年サンデーコミックス)

MAJOR(メジャー) 78 (少年サンデーコミックス)

  • 作者: 満田 拓也
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/12/17
  • メディア: コミック


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コメント 1

toshi

コメントありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
by toshi (2010-12-28 20:26) 

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