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安かろう悪かろう [インド・トリビア]

タタ製の「ワン・ラック(10万ルピー)カー」は、発売当初から様々なトラブルについて報告があった。発火事故というのもその1つである。僕がインド駐在していた頃には既に指摘されていたので、これらは決して最近の問題ではない。

ナノに関しては、駐在員時代末期に自分も巻き込まれたトラブルがある。

僕のマイカーはトヨタのワンボックスカー「イノーバ」という。日本では同じ車種は販売されていないが、強いて言うなら「イプサム」と「エスティマ」を足して2で割ったような車だ。しかもそのごっついイノーバには、サイドステップバー、リアフェンダーなどのアクセサリーも装備され、多少の接触事故でもボディに傷がつくような事態を未然に防ぐ措置が施されている。(中古車で買った時からそうなっていた。)

離任まで1ヵ月を切ったある日、僕はデリー市内グリーンパーク地区の住宅地の中を走っていた。運転手はインド人のグーラム。本人は認めないが、個人的にはここ数カ月彼の運転が粗くなっているのが気になってはいた。この日も、宅地を走るなら時速10km程度に落として慎重に徐行して欲しいところを、30~40kmで走っていた。宅地とはいえメインロードだから、彼も直進車としての優先権はこちらにあると思っていたのだろう。

そこに、側道から突然真紅のナノが突っ込んできた。ターバンを頭に巻いたシークの爺さんだったが、年寄りだからというのもあったのか、いや、そもそもインド人は発進前に左右確認をあまりやらないのだが、側道から出てくる際に一旦停止も減速もせずにいきなりメインロードに飛び出してきたのである。

幸い出会いがしらの正面衝突は免れたが、うちのイノーバの右側壁にナノが頭から突っ込む形となった。その結果何が起きたかというと、イノーバの方はサイドステップバーが多少曲がった程度で済んだが、ナノはノーズ右側のバンパーからライト部分を大破してしまった。

当然ながら、誰がどう見たって左右確認もせずに突っ込んできたシークの爺さんの方に非がある。にもかかわらず車から降りてきた爺さんは、うちの運転手と相当ひどい罵り合いをやった。ナノの破損状況から見てもちょっとした接触事故程度の時の対応では済まないのではないかと僕は不安にもなったが、運転手同士の罵り合いはいつもと同じパターンで、お互い言いたいことを言い合ったら、その後は車に戻って何事もないかのように現場を走り去ることになった。ナノの方も、走行に支障まで出るほどの破損ではなかったようだ。

因みにインドでは、こういう事故を起こした際の自分の車の修理は自分の加入している自動車保険で行なうか、或いは修理費を自分で負担して保険を使わずにやってしまうことが多い。自動車保険は、相手の損害をカバーするために加入するのではなく、むしろ自分の車が他者から被るような損害をカバーするために加入するものなのである。相手の賠償能力が当てにならない、自分の身は自分で守ろうという発想だろう。だからナノの爺さんも、たとえフロント大破しても「お前が払え」とは言わなかったのだろう。

僕はこの事故が起きた時、後部座席で本を読んでいた。ぶつかった瞬間体が前に投げ出され、助手席に左肩をしこたまぶつけた。日本では最近は後部座席に座っている同乗者にもベルト装着が厳しく求められるようになってきているが、それをちゃんと実践していなかった自分にも非があるとはいえ、30~40kmでもこんなに投げ出されるとは思っていなかった。皆さん注意しましょう。ご主人さまがそういう事態に陥っているのに、先ずは車の損害を気にし、さらに相手の運転手とのバトルに臨んだうちの運転手にも苦笑した。「お前、優先順位が違うだろ~」と思ったが…。

結論:
ナノは当たり負けする。その壊れっぷりは半端ではない。
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yukikaze

「安物買いの銭失い」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。
by yukikaze (2010-11-16 16:57) 

prismiclyon

大変でしたね。そしてご主人様そっちのけで口論に挑んだインド人運転手がいかにもインドっぽくて笑えました。
インドの車ってクラクションの作りもよその国とは違うと聞きましたが、ボコボコの車だらけで、何もかも驚きです。
by prismiclyon (2010-12-30 23:20) 

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