『「気づき」の力』：サンチャイ☆ブログ（संचै पत्र）：SSブログ

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『「気づき」の力』　[読書日記] [編集]

作者: 柳田邦男
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2010/10
メディア: 文庫

内容（「BOOK」データベースより）
「孤独な時間」はなぜ大切か。人は孤独な時こそ悩み、苦しみ、寂寥感にとらわれ、それらを乗り越えるために懸命に考える。孤独なしに、考えるという「心の習慣」は身につかない。ネットの便利さやコンピュータが作る疑似体験に浮かれて、自己の内面と向き合う静かな時間や、現場体験によって自ら気づくことの意義を見失う現代人に、「目を覚ませ」と呼びかける警世の書。

柳田邦男の著書なんて、学生だった28年前に『マリコ』を読んで以来であるが、何となくタイトルに惹かれて買って読んだ。本当はインド旅行中に読み終わればウッタルプラデシュ州中部在住の知人のところに置いて行こうと考えていたのだが、その方とカンプールでお目にかかるまでに読み終われなかったというだけでなく、収録されているうちの2章が結構有用だったので、そのまま日本に持って帰ることにした。

有用だと思った2章は「パリ展が気づかせてくれた絵本の力」と「足下への気づき「地元学」が国を変える」である。まあ他の章も読者に考えさせるという点では有用だという気はしたので、お薦めはしたいと思う。

「パリ展が気づかせてくれた絵本の力」からは、近い将来、また地元の小学校で児童相手に朗読ボランティアをやる機会があれば、是非取り上げてみたい題材のヒントを幾つかいただいた。末っ子が通う1年生相手にはちょっとつらいかもしれないが、小5の娘のクラスであれば使ってみたい。或いは、帰宅後の夜の読み聞かせで使ってみるのもいいかもしれない。著者は最近、こうした大人向けの絵本の翻訳活動にも関わっているようである。

ルリユールおじさん

作者: いせひでこ
出版社/メーカー: 理論社
発売日: 2006/09
メディア: 大型本

ヤクーバとライオン　（1）　勇気 (講談社の翻訳絵本)

作者: ティエリー・デデュー
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2008/03/28
メディア: 単行本

ヤクーバとライオン 2 信頼 (講談社の翻訳絵本)

作者: ティエリー・デデュー
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2008/07/08
メディア: 単行本

「足下への気づき「地元学」が国を変える」については、章の冒頭で示されている引用が気に入った。それ自体は著者が別の本から引用したものであるが、原典の著者である水俣市の元農林水産課長だった吉本哲郎氏が発案した、水俣市における「村丸ごと生活博物館」というコンセプトに心惹かれるものを感じた。

〈「地元学」とは、地元に学ぶことである。人のつぶやきにある背景や自然に耳を傾け、「なぜだろう？」と問いを発しながら、自分で見て歩き、自分の住んでいる地元を深く掘り下げ、自分の言葉で語って地域を自覚し、ものづくり、地域づくり、生活づくりに役立てていく。〉
　要は、この村にはあれもなくなった、これもなくなったと、「ないもの探し」をするのでなく、地元・足下の生活と生業の１つ１つを見直せば、こんな貴重なものがあるではないか、まだまだこんなものが残されているではないかという「あるもの探し」へと、発想の転換を図ることだという。
　「あるもの探し」――これは人間が足るを知ってこそ、心が豊かになるという人生観そのものでもあるだろう。「五十年戦争」の敗戦と拝金主義から過疎地が息吹きを取り戻すには、「あるもの探し」から出発するしかないのかもしれない。（pp.120-121）

「あるもの探し」というのは、最近僕がブログで度々言及しているNGOソムニードがインド・アンドラプラデシュ州スリカクラム県での事業でも取り入れているもので、過疎が進む日本の農村部だけではなく、途上国でも、ましてやコミュニティ自体が崩壊している中で急速な高齢化が進む日本の都市部でも、共通する考え方ではないかと思う。恥ずかしながら水俣で「村丸ごと生活博物館」のような取組みが行なわれているということは知らなかったので、それを知ることができたというだけでも収穫であったと思う。