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人口問題のその先に [少子高齢化]


Joel E. Cohen,
"Beyond Population: Everyone Counts in Development,"
Center for Global Development, Working Paper 220, July 2010
URL:http://www.cgdev.org/content/publications/detail/1424318/
【要約】 このエッセイは、2010年から2050年にかけて起きると予想される人口学上の重要な趨勢を振り返り、グローバルな経済開発に向けた幾つかの含意を探り、こうした趨勢と開発課題への対処として考えられる政策について提案するものである。1950年から2050年までの1世紀は、①過去に例を見ない世界的な高い人口増加率、②過去に例を見ないほどの世界的な人口増加率の急速な落ち込み、③より開発の進んだ国と遅れた国との間の過去に例を見ないほど大きな人口学的シフトを経験する。殆どの人口学者は、これからの半世紀で、世界の人口は20世紀後半の50年と比べて、①より歳をとり、②より増加し(但し増勢は衰えるが)、③より都市に集中するとみている。但し、この趨勢は、同一域内でも地域間でもバラつきはある。人口規模はどの程度が適切なのか、理想的な人口構造とは何を指すのか、どのようになれば持続可能と言えるのか――これらについては誰もわからない。しかし、慢性的に空腹状態にある人口が10億人もいる状況はこれまでの人類の選択の結果の総計であり、生物物理学上の必要性に基づくわけではない。こうした人口学上の趨勢に対応した政策オプションとしては、①初等中等教育の普及、②避妊や母体の健康に向けたニーズの充足、③人口学的な配慮を施した都市計画、特にエネルギー効率の高い建設や人口高齢化を考慮した建設等が考えられる。
暦も9月を迎え、図書館などで借りてきた本の読書記録だけではなく、ウェブ上で検索してダウンロードしてきた論文などを読んだ記録についても残す努力をしたいと思っている。7月頃は少しだけ取り組んでいたものであるけれど、8月は読んだ本の記録を残すのに精一杯で、折角8月中に読んでいた論文についてもメモするのが延び延びになってしまっている。今後時々は記録を残すようにしたいと思う。

本日ご紹介するのは米国ワシントンDCにある有力シンクタンク「グローバル開発センター(CGD)」から今年7月に出たワーキングペーパーである。恥ずかしながら知らなかったのだが、CGDには「21世紀の人口動態と開発」というイニシアチブがあるらしい。
http://www.cgdev.org/section/topics/population/

「世界人口は今後も規模は拡大するが、拡大ペースは地域によって異なる」「人口の増勢は鈍化するが、その鈍化ペースも地域によって異なる」「世界人口はより高齢化が進むが、そのペースは地域によって異なる」「人口は都市により集中するが、全ての地域で同様に都市化が進むわけではない」といった予測はこれまでもいろいろな論者がいろいろな場で述べてきているのでそれ自体は目新しいものではない。中にはショッキングな予測も幾つかあったが。それに、政策オプションの提示についても教育や保健絡みのものが上位を占めるのは当たり前のような印象を受けるが、この論文を読んで僕がオヤッと思ったのは、都市化に絡む政策的含意の記述である。

2050年に向けて、都市部で人口増加は進み、農村人口は減り始めると予想されているが、取り分け途上国においては、人口100万人を吸収できるような都市が今後40~45年間のうちに、5日に1つのペースで建設されていかないと都市の生活水準を維持できないという。結構ショッキングですね。そして、今後の都市計画を考える上で先ず重要なのは、都市で高齢者人口の絶対数が増えるという状況への対応策として交通インフラや建築物の設計に工夫を求めたりすることや、買い物や銀行、社会活動、娯楽等を狭い地域で済ませられるコンパクトシティ化、交通インフラや建築物のエネルギー効率改善の必要性について訴えている。

インフラ整備への支援など、円借款を援助手段の主力商品の1つとしている日本が元々得意としている分野だと思うが、①バリアフリー、②コンパクトシティ、③エネルギー効率の3点について十分考慮されているのかどうかは要注目である。今後どれくらいの規模の人口流入が支援対象としている都市では見込まれるのか、流入の結果人口構成はどのように変化していくのか、そういう予測をちゃんとして、30~40年先まで利用可能な都市計画とそれに基づくインフラの整備が行なわれなければいけない、ということなのだろう。

さて、著者のジョエル・E・コーエンだが、実は日本語版も出ている有名な著作How Many People Can the Earth Support?(どれだけの人口を地球は養えるか)がある。

新「人口論」―生態学的アプローチ

新「人口論」―生態学的アプローチ

  • 作者: ジョエル・E. コーエン
  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
地球上で暮らせる人間の数はどのくらいなのか。地球の養うことのできる人口が、自然の拘束ばかりではなく、人間自身の選択によって大きく左右されることを、世界的数理物理学者がダイナミックに解明する。
本書では、地球上で暮せる人間の数の限界はいくらかという疑問に関し、1679年から現在に至るまでに行なわれた60件以上の予測をレビューしている。そして、20世紀後半の50年間の間に行なわれた予測は10億人から10兆人(!)までバラつきがあり、こうした極端な予測はたぶんに政治的意図を反映しているが、科学的根拠に基づく予測であってもバラつきは完全には解消されず、人間が生活スタイルについてどのような選択をするかにもかかってくると指摘している。

本書は専門書にも関わらず650頁以上ある大作であり、とても現時点では読む気が起きない。その気になったら読んでみてもう少しご紹介してみたいと思っている。
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