SSブログ

マルチ・スズキ社員の社会貢献 [インド]

CScover.jpgインドに赴任してきて以来、僕がこのブログで力を入れている「インドにおける開発課題への官民の取組みのグッドプラクティスに関する情報収集と発信」という目的において、月刊誌『Civil Society』ほどその目的にかなったグッドプラクティスの宝庫と思える雑誌はない。ウメッシュ・アナンド編集長には一度お目にかかり、今でも時々メールの交換をさせてもらっているが、この雑誌のバックナンバーからカバーストーリーばかりを集めた『Innovative Indians』という本も今年は出版されている。安い本じゃないが、1冊購入させてもらった。

さて、本日ご紹介したいのは、この『Civil Society』誌の2009年12月号(右写真)pp.24-25に紹介されていた、マルチ・スズキ社の社員による社会貢献活動参加プログラム「E-パリヴァルタン(e-Parivartan)」に関する記事「マルチ社のE-パリヴァルタンプログラムが発進(Maruti's e-Parivartan gets going)」である。
*記事全文はこのURLからダウンロード可能です。
http://www.civilsocietyonline.com/dec09/dec0913.asp

記事を簡単にご紹介していきたい。

1)マルチ・スズキ社といえばインド最大の販売台数シェアを誇る自動車メーカーであるが、その従業員及びその家族や友人も巻き込んだボランティア活動の推進という点でもインドで先頭を走ろうとしている。同社のボランティア事業「E-パリヴァルタン」は昨年11月立ち上げられ、その従業員が社会貢献やコミュニティ活動に関れるためのプラットフォームとして、既に200人の従業員がこのプログラムに参加している。

2)E-パリヴァルタンでは、首都周辺地域のNGOで、同社の従業員が日曜朝に参加できる活動を特定し、これらを従業員に提示する。相談役(mentoring)や教師、コミュニティ開発、環境啓蒙、ヘルスキャンプ運営といった活動だ。

3)E-パリヴァルタンの企画立案に当たっては、当初から従業員自らが参加型で関わって来た。構想自体が従業員からの提案に基づくもので、これに対して企業トップがマルチ・スズキ社に最も適した形のプログラムを立案するようゴーサインを出したものだ。タスクチームはオーストラリアや英国、米国の従業員ボランティア制度を調査した。そこでわかってきたのは、多くの企業では、従業員ボランティア制度も企業の社会的責任(CSR)に基づく活動も、その企業の事業活動領域で行なわれ、業績に連動したインセンティブとして設計されていることがわかった。しかし、マルチ社の場合は純粋にボランティア制度として検討した。本当の意味で安定的で持続可能で、かつ柔軟で拡大していくことが可能な形になるよう設計されている。ボランティア参加したい従業員が自分のやりたい活動を特定し、自分でそのNGOを訪問して日程や活動内容の調整を行なう。

4)E-パリヴァルタンは、グルガオンのNGO「Literacy India」とマネサールのNGO「Shikhar」が運営している5ヵ所の事業拠点で始まった。いずれも恵まれない子供達のエンパワーメントに向けて活動している団体だ。それが現在では19ヵ所に広がり、参加可能なNGOとして新たに「Navjyoti India Foundation」「Divya Chaya Trust」「Deepashram」「Udayan Care」等も加わった。

5)従業員からの反響も上々。「素晴らしい気持ちです。私達の時間を、日曜日にこうした事業地の子供達と一緒に過ごせる喜びを味わっています。子供達は私達が来てくれるのを心待ちにしてくれています。いろいろ学びたいと一生懸命になってくれます。でも、私達も子供達からそれ以上のものを得ているような気がします。自分の存在が評価され、自分が求められているのだと実感できるからです。」こうした反響が新たな従業員の参加も促し、さらには従業員の家族も巻き込み始めている。マルチ・スズキ社の従業員は7,000人以上。その影響力は多大である。

xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

インドが今後経済発展を遂げていく際、必ず直面すると思っていたのが、会社勤めの従業員が自宅と会社との往復を強いられるようになり、会社人として有能であればあるほど地域との関係性が断絶するのではないかということだった。日本は高度経済成長期にこの点では何もやってなかったに近く、このために退職期を迎えた団塊世代が、会社に没頭した男性ほど地域社会デビューがなかなかできないという現象が観測されている。

企業の社会貢献が叫ばれるようになった今の日本でも、辛うじて正規雇用でいられる従業員の多くは、コスト削減のために少ない人件費で多くのの仕事をさせられており、自分の住む地域社会との繋がりが余計に分断されているように感じる。僕は決して優秀な社員ではないので東京在勤時代には地域でのボランティアも多少させてもらっていたが、僕がいた職場では、仕事ができると言われる社員の人ほどよく残業していた。

こんなことがインドでも今後起きて来るのかなと思っていたら、さすがに今の時期に高度成長を迎えている企業は、社会貢献への意識も高い。従業員が今からボランティアのような形で地域デビューをしていけば、最初はたとえ企業側が企業に近い地域で従業員に場を提供していたのだとしても、いずれは従業員個々人が独り立ちして、自分で自分のやりたいことを、自分が住む地域で見つけていくことも可能になってくるのではないかと思う。

こうした取組みを、インドでもトップの企業の1つであるマルチ・スズキ社が進めているという点には惹かれる。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0