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携帯電話と開発 [仕事の小ネタ]

今週の英エコノミスト誌に"Mobile Phones and Development(携帯電話と開発)"という興味深い記事があったのでご紹介したい。

先週、英国グレンイーグルズで開催されたG8サミットの議題の1つはアフリカの開発問題であった。アフリカの開発が援助の増額だけで達成されるわけではないことは誰もが周知の事実であるが、それでは民間投資主導での経済発展がこの地域で可能かというと、それも難しい。世界の中で最も投資環境が未整備で民間セクターがリスクを取って投資を行ないづらいのがアフリカでもあるのだ。ところがそんなアフリカでも急速に伸びている民間セクターがある。それが携帯電話会社なのだ。

とはいっても携帯電話サービスにアクセスできる受益者は限られているのが実情。最大のネックは、1台200ドルもする携帯電話セットであった。しかし、最近、モトローラ社が複数の中小通信事業主をまとめて1台40ドル未満で600万台納入する数量割引契約を結んだことが話題になっている。しかも、これに対して6月29日にフィリップス社は、アフリカ諸国の事業主と来年には1台20ドル未満で供給する協議にまで入っているという。

これらの通信機器メーカーは、こうした契約で果たして儲かるのか。これに対する同社の見解は、利益率は低いかもしれないが絶対的な売買高が大きいため、ある程度の利益は確保できるという。即ち、高付加価値商品の利益で低所得国向け販売の損失を補填する内部相互補助とか、企業の社会的責任(CSR)とかではなく、その単体ビジネスで利益が確保できる純粋なビジネスとして取り組んでいるというのである。

こうして携帯電話セットの小売価格が下がれば、低所得者であろうと購入を検討可能になってくるであろう。しかし、そこにはもう1つの大きな課題がある。それは、途上国の政府が、このように急速に成長する産業に対して高い課税を適用している現状である。例えば、トルコでは携帯電話新規加入に15ドルの加入料と、携帯電話セットに18%の売上税と25%の特別通信税がかかる。アフリカでは経済改革が比較的成功しているといわれているウガンダでも、携帯電話には10%の売上税がかかるという。このように急速に成長している産業では、増税よりもむしろ減税することで産業成長が加速され、かえって経済全体での税収が増加すると見られている。従って、通信事業に対する課税はむしろ減税する方向で改革を図るべき―――同誌の論調はざっと以上の通りであろう。

情報通信は民間主導での発展が可能なセクターで、援助で何ができるのかを考えるよりも民間投資が促進される環境をいかに作るのかが課題となる。通信機器メーカーによる数量割引や通信減税はそのような課題に、官民両サイドで取り組む可能性を示すものだと思う。僕達はすぐに援助で物事が変えられると考えてしまうことが多いが、開発事業に援助資金を投入するというよりも、投資環境整備や政府の税制の改革といった川上での制度改革の議論にも加わっていくことが必要となるのではないだろうか。
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