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NGO大国インド [インド・トリビア]

…というタイトルの本が昔あった。執筆者の1人からいただいて、今は東京の自宅の書棚に眠っている。もう10年近く前の話である。当時からそういう見方がインドのNGOにはされていて、それが僕の今のインドのNGOに対する一種のリスペクトを形作っている。

信頼性があるから、外国からの資金もインドのNGOには流れる。その規模がどの程度かについてはこれまで調べたこともなかったのだが、12月24日付のTimes of India紙にこんな記事が載っていて参考になった。「外国からNGOへの寄付は56%も増加(Foreign donations to NGOs go up 56%)」(Vishwa Mohan記者)というタイトルである。
《NGO向け援助上位5カ国(2006/07年度)》
第1位 米国(297億1000万ルピー)
第2位 ドイツ(164億8000万ルピー)
第3位 英国(142億5000万ルピー)
第4位 スイス(60億5000万ルピー)
第5位 イタリア(48億8000万ルピー)

総額 787億8000万ルピー⇒1,229憶ルピー
インドでは外国から資金を受け取る現地NGOはFCRA(Foreign Contribution Regulation Act)に登録していなければならない。FCRAによれば、こうした援助を受ける団体は年に1回不定期の監査を受けて適切に資金が使われているかどうかを確認させられる。だから意外とちゃんと統計が取れている。こうした数値は内務省が発表している。

ところで、新聞記事で面白かったのは、意外な国が入っていることである。それはパキスタンである。パキスタンによるインドNGO活動支援は、2004/05年度が432.8万ルピー、2005/06年度が717万ルピー、2006/07年度は219.9万ルピーと、記事が目くじらを立てるほど巨額でもないし、直近ではむしろ激減している。まあこんなご時世だからマスコミも取り上げたのだろう。パキスタンの援助は、文化・経済・教育・宗教・社会セクター等に対して行なわれているという。マスコミはこうした資金がインド国内でのテロリスト活動の支援に充てられているのではないかという仮説の下に書かれているが、FCRAはそうした活動をチェックするための設けられたような法制度なので、内務省はそのような可能性はないと否定しているという。(ま、そりゃそうでしょう。)

上位5カ国の顔ぶれは2004/05年度から変わっていない。また、この5カ国に続く国も、スペイン、オランダ、ベルギー、カナダ、フランスといったお決まりの顔ぶれだと記事は指摘している。

あれ?日本はどうなってるの?そう、円借款のような大きなODAはやっているのに民間レベルの援助になるとからっきし資金が流れていないのが今の日本とインドの関係だ。第10位のフランスからどれくらいの資金が流れているのかわからないが、僕の予想としては、草の根無償資金協力のようなODAを通じた政府資金と純粋にNGOからの自己資金とを合わせてもせいぜい6、7億ルピーだろう。やっぱり少ないな。まあ、FCRAという手続きにあまり慣れていない団体が多いのではないかと思うし、民間援助をやるにもインドは難しい国なのだろう。

但し、1つだけ述べておきたい。知り合いの方からよく言われているのだが、インドのNGOも系列化のようなことが起きていて地域の代表としての草の根団体としての存在意義を忘れつつあるのではないかという点である。実はこれを裏付けるような話を最近プネで聞いた。

資金調達部門を持っていない現地のNGOがどのようにしたら米国のクリントン財団やらフランスのハンセン病患者支援団体(名前忘れた)から資金援助を受けているのかという単純な疑問をその団体の代表にぶつけてみた。すると意外なことを言われた。団体側から事業提案書を持ち込んだのではなく、向こうの方から資金提供の打診を受けたのだというのだ。つまり、スポンサー側にはその資金を使って達成したい目標があり、その目標達成への取り組みをプネ地域で行なうためのパートナーを向こうから探していたのだという。例えば、エイズだとかハンセン病だとか女性のエンパワーメントだとかという取組み課題を進めるのにその対象地域で最もノウハウを持っていて成果を挙げてくれそうなのがどこかという目で支援対象団体を探していたというわけだ。

そうなると、札びらをチラつかせて現地のNGOの頬を叩くようなものである。たとえそのNGOがその地域の開発課題としてエイズやハンセン病やジェンダーよりももっと優先度が高いと思っているものがあったとしても、援助資金に色が付いている以上、趣旨を曲げてでもそちらの活動に重点を置かねばならなくなる。これでは、誰のためのNGOなのかわからない。

資金流入が多ければいいというわけでもない。欧米のNGOから大きな支援を受けた現地NGOの代表が、その事業実施期間中に車を買い替えたとかいうことでも現場では起きているという。

また、欧米のNGOは意外と逃げ足も速い。特定地域に集中投入して指標の改善が確認できたら、「次は別の地域で」というのでさっさと移っていく。そうすると現地NGOに何が起きるか。代表が別の地道に活動している草の根団体のところに来て、「自分を雇え、自分はこんなに経験豊富だ」と売り込みをかけるようなこともあるらしい。

こういうのが良いのかどうか、考えさせられる。

因みに州別でNGOが援助を受け取っている上位5州の顔ぶれは次のようなものである。
《NGO援助受益州上位5州》(2006/07年度)
第1位 タミル・ナドゥ州(224億4000万ルピー)
第2位 デリー準州(218億7000万ルピー)
第3位 アンドラ・プラデシュ州(121億1000万ルピー)
第4位 マハラシュトラ州(119億5000万ルピー)
第5位 カルナタカ州(107億7000万ルピー)
なんのこっちゃない、元々NGO活動が比較的進んでいて経済発展も社会開発も比較的進んでいると見られている州が上位に並んでいる。やりやすいところでやっているという傾向がよく出ているではないか。

ただ、そこがODAとの棲み分けの部分だとも思う。民間でできるところは民間でやるという発想からいけば、これらの州への支援は民間援助と上手くタイアップし、ODAはむしろもっと難しいと言われる州(ウッタル・プラデシュ、ビハール、ラジャスタン、マディア・プラデシュ等)に集中的に支援していった方がいいということも言えると思う。
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