SSブログ

『ジェネラル・ルージュの凱旋』 [海堂尊]

ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/04/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか…。そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。
少し前に『空中ブランコ』を読んでハチャメチャ精神科医・伊良部一郎にハマってしまった僕は、「火喰い鳥」白鳥圭輔のストーリーが無性に読みたくなった。丁度、実家の両親が海堂作品を1冊持ってきてくれたのでそれを読むことにした。

結論から言うと、『ジェネラル・ルージュ』ではICUの速水晃一部長が白鳥の役どころをかなりカバーしているので、白鳥の無神経さ、傲慢さというのはあまり際立つ作品ではなかった。あまり話すとネタばれになるが、今回の白鳥の登場は、別のスキャンダルとの関係で東城大学医学部付属病院に調査に入っていた中で起きたものであり、そもそもが白鳥をハイライトすることができる作品ともいえないと思う。節目節目で適切なアドバイス、ロジックの援護射撃等を行なっているぐらいである。

逆に、速水部長についてはしっかり描かれている。僕は元々海堂作品には『ひかりの剣』で入っているので、速水のその後という関心から次の作品を読んでいる。学生剣道の雄だった速水は、「自分がいなければ、自分がやらなければ」という責任感から逆に自分の殻を破れずにいたが、高階顧問(現在の病院長)の指導により剣道部部長を明け渡し、自身の技を磨くことに専念した結果、東城大学剣道部は医鷲旗を決勝戦で争うまでにチームとしても成長した。卒業して外科医となった彼も、人を動かすことに異才を発揮し、数々の伝説を作ってきた。学生時代と比べてしゃべり口調の違いには違和感も感じたが、「こういう形で人は伸びるのね」というのがわかって面白かった。また、学生時代に速水や田口の雀友であった優等生・島津も、本作品では精神科医として登場し、重要な役どころを担っている。

但し、この作品を単品として読むと、生煮えの登場人物、生煮えの逸話が所々にあるのが気になった。小児科で起きたトラブルとは一体何だったのか、小児科勤務の看護師・浜田小夜はいつの間に小児科を辞めたのか、伝説の歌姫・水落冴子と速水は一体どこで知り合ったのか…。本作品をいきなり読んだ人は、前作『ナイチンゲールの沈黙』を読む必要に駆られるに違いない。誰あろう僕自身がそういう事態に陥っている。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1