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今年のマンタン賞 [インド]

最近、国際的な表彰の話になると意識的にブログで取り上げているのは読者の方々であればご存知であろう。マグサイサイ賞やライト・ライブリフッド賞といった国際財団が設けている賞でインド人や団体の取組みが表彰されるのはとても嬉しいことである。

今回紹介するのはそうした国際的な賞とはちょっと違う。元々インド国内の取組みを表彰するために2004年10月に創設された賞であるが、今年から南アジア地域域内諸国に対象を拡大したもので、その名をマンタン賞(The Manthan Award)という。ITを駆使して開発された優れたコンテンツとその創造性を表彰するもので、13の部門に分かれていて、それぞれ2、3の個人・団体が表彰されている。2008年度は33の個人・団体が受賞している。応募は自薦他薦を問わず、単純計算だと競争倍率は10倍程度と先述の2つの表彰よりもインド人にとっては広き門となっている。

ITの普及のためにはそれに載せるための優れたコンテンツが必要とされる。こうしたコンテンツ開発にインセンティブを付与することを目的として、デリーにあるデジタル・エンパワーメント財団(Digital Empowerment Foundation)が、世界情報社会サミット賞及び米国インド財団(American India Foundation)との共同で創設したのがマンタン賞で、毎年10月に表彰が行なわれる。
⇒マンタン賞の概要はこちらから!

どんな個人・団体が表彰されているのだろうか。ビジネス日刊紙The Mintウェブ版の10月19日の記事から幾つか紹介してみよう。
1.衛星放送を利用すれば数学はもっと楽しい
カテゴリー:学習・教育のための電子コンテンツ
受賞者:Centre for Child Development & Disabilities(バンガロール)
 バンガロールの小さなスタジオを拠点として、カルナタカ州農村部の14の学校を繋ぎ、計420人の生徒に60分の数学の授業を行なうという試み。この取組みのミソはスマーナ先生という非常に魅力的な授業をされる先生の授業を農村部の生徒にも一斉配信するというところにあり、これによって落第率が軽減することが期待されている。
2.テレビ受像機を通じた医学研修
カテゴリー:学習・教育のための電子コンテンツ
受賞者:MEdRC EduTech(ハイデラバード)
 この取組みは、全国の医学部学生に対して、人体内部の3D映像を見せる機会を設けるというもので、医学部の授業で用いられることによって、それまでの授業の70%が単に教師の講義をただ聞くだけで終わっていたものを、逆に医学生のスキル強化のために70%の時間を設けられるように変えていくことを狙っている。既にアンドラ・プラデシュ州のNTR保健科学大学ではパイロット的に導入が始まっている。
3.ライプールの物資配給用スマートカード
カテゴリー:E-ガバナンス
受賞者:Unified Ration Card Project(チャッティスガル州)
 ナクサライトと呼ばれる左翼ゲリラが活動拠点としているチャッティスガル州ダンテワダ県での取組みで、ビジャプールの政府運営の配給物資販売所(ration shop)にコメを搬入するトラックは郊外のビダムにある製粉工場にいったん搬入し、そこでコメの質と重量が登録され、州都ライプールにあるコールセンターを通じてこの情報が配給物資販売所に連絡される。この制度によるメリットは、製粉工場と出荷場のオーナーによる「中抜き」を防止することができるという点にある。
4.女性向け乳がん啓蒙普及キャラバン
カテゴリー:保健分野の電子コンテンツ
受賞者:Project HighWays Infiniteのリトゥ・ジョゼフ・バイヤニさん(プネ)
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 そもそもこのネタでブログ記事を書こうと思ったのは、月刊誌『Civil Society』でバイヤニさんのプロジェクトの記事が掲載されていたからである。バイヤニさんは陸軍部隊長を退役してプネで歯科医を営んでいたが、2000年に乳がんとの診断を受け、この病気との闘いが始まった。バイヤニさんは、乳がんとの闘いを自分だけのものとはせず、インド全国の女性に乳がんの早期発見・早期治療に向けた啓蒙普及を行なう活動を始めた。2006年に始められたこのキャラバンは、フォード社製4WD「エンデバー」をバイヤニさん自身が運転し、14歳の娘とともに、6ヶ月をかけて延べ30,200kmを駆け抜けるというものだった。
 西はグジャラート州、東はアルナチャル・プラデシュ州、南はカルナタカ、ケララといった州を回った。訪問した村々で、バイヤニさんはがんに関するプレゼンテーションを行なった。広い国土を持つインドのこと、訪れる先々の言語は当然異なり、農村女性に語りかけるのには困難も伴う。そこで、バイヤニさんは、啓蒙普及でよく利用されるフリップ・チャートだけではなく、パワーポイントでアニメーションや図表、患者の写真等をスライドに盛り込み、携行した自家発電機とプロジェクターにPCを繋いで農村女性への説明に用いた。
 決してITの最新技術を駆使した取組みではない。僕達が普通に用いているパワーポイントと4WDによる全国巡回というローテクを組み合わせ、効果の最大化を計っている。それが評価されての今回の受賞に繋がった。
これらはまさに氷山の一角。ご関心ある方は是非マンタン賞HPに行って他の受賞案件も見てみて下さい。
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