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ラジャスタンの在宅医療 [インド]

ラジャスタンの高齢者向け在宅医療
Home Nursing For Seniors In Rajasthan
ジャイプール発、2月1日付
 雇用機会の創出と高齢者の福祉向上を狙い、ラジャスタン州政府は、病床の高齢住民を支援する在宅医療スキームを創設した。アビラシャ・ヨジャナ(Abhilasha Yojana) と呼ばれるこのスキームは、同州内にある全ての医科単科大学で導入された。
 「こうすることにより、高齢住民は毎日のように病院に来る必要はなくなる」――医療保健部の高官は木曜(1月31日)に記者にそう語る。「このスキームは職を持たない女性に雇用機会を提供するものであるだけではなく、子供達が仕事で家を空けることの多い高齢の住民のケアを行なうのにも役立つ。」
 このスキームは、州内ジャイプール、アジュメール、コタ、ジョドプール、ウダイプール、ビカネールの医科大学で導入され、木曜日付で各校に通達されている。但し、在宅医療サービスの利用料は各病院の裁量で決定されることになっている。こうした病院の看護婦は1日8時間は勤務せねばならない。
 ジャイプールでは、社会福祉部が20人の女性を既に採用している。これらの女性は6週間の研修の後、州営のSawai Man Singh Hospitalに登録される予定である。
 「これは良いスキームです。私は病床の母を世話してくれる看護婦を探していました。訪問医療サービスに対して利用料を支払う用意はありました。でも、この6ヶ月の間、そうしたサービスを見つけることができずにいました。」――Kamal Chaudharyさんはこう語った。
 「このスキームは一見良さそうに見えます。でも政府はそれを適切な方法で運営していかねばなりません」――医療保健部のKailash Joshi代表はそう語った。
 高齢者を支援する試みとしては、この他に政府は遠隔地に医療サービスを提供するための移動式遠隔医療ユニット(Mobile Telemedicine Unit, MTU)施設の創設も計画中である。州政府は有資格事業者に入札公示を行なっている。入札業者は全ての医科大学に設置されるVSATベースのMTUのために資機材を提供、設定するだけでなく運営も行なうことが期待されている。
出所:IANS(Indo-Asian News Service)、2月1日


このブログでは、高齢者問題に関する新聞やITメディアの報道等、日本では普段からあまり接することができないインドの高齢化の問題についてでできるだけ取り上げて紹介するように心がけている。僕の頭の中での整理としては、高齢者の老後の生活の保障は、①所得、②健康、③尊厳ある生活という3つの要素から成り立っていると考えている。①に相当するのは年金制度や貯蓄手段の整備、②は高齢者医療・介護制度、③は家族の中での高齢者の位置づけに加えて、地域社会の中で高齢者をどう位置づけるかという日本の地域福祉のような考え方である。

インドに来てから半年、振り返ってみるとこのブログで取り上げた記事の多くは①に関するもので、③もたまには見られるが、②は意外と少ないように思う。インドでは核家族化があまり大きく進行していなくて、複数世代の家族が同居しているというケースがまだまだ見られるため、お年寄りのケアといったら家族介護が一般的であろう。勿論、デリーのような大都市では高齢者夫妻だけで居を構えているところが多いので、地域単位でのケアという考え方は意外と進んでいるようにも思えるが。

介護サービスは在宅でもかなり受けられるようになってきていると思える一方で、診療サービスを受けようと思ったら依然としてお年寄りは病院までは自分で行かなければいけなかった。それを逆の発想で病院側から各家庭に出向き、診療サービスを行なおうというのがこのスキームの狙いである。勿論、医科大学を出たばかりの人件費が安い看護師が訪問するのだから、診療に必要な専門知識が十分備わっているわけではない。そこで、IT技術を駆使して各大学のMTUに専門医が残り、出先の訪問看護師からの問い合わせに対して指導助言を行なうのであろう。

考えてみたら、バングラデシュのグラミン銀行が金融サービスの普及に当たって取り入れた手法とよく似ているように思える。銀行の支店でふんぞり返って客待ちしているのではなく、自分から現場に出て行く。或いは、こうして村々を動き回っている銀行員ひとりひとりが一種の支店の役割を果たしている。これを医療の世界でやろうとすると、ラジャスタンの訪問診療のような形態になるのだろう。

通信インフラがある程度整備されているからこそ実現可能なスキームであるように思う。


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コメント 1

世界からの意見を言えるサンチャイさんはすごいね。
他国の状態も日本にいるだけでは解らないから、教えてくれてこちらも考えさせられるよ。
by (2008-02-03 21:57) 

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