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『哀愁的東京』 [重松清]

哀愁的東京

哀愁的東京

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/08/21
  • メディア: 単行本


出版社/著者からの内容紹介
週刊誌のライターで生計を立てている絵本作家が主人公。作者自身を重ね合わせたかのような、ライターとしての多忙な日々と、絵本作家としての作品が書けない日々。元ITビジネスの旗手、落ちぶれたアイドル歌手、年老いたSM嬢、ホームレスの夫婦…
彼が出会い、見送ってきた「東京」が描かれる。
直木賞作家が『ビタミンF』でもなく『エイジ』でもない、新しい世界を描いた、連作短編集。

コミセンにある重松清作品の蔵書は、残すところ3冊ほどになった。昨年の今頃に初めての重松作品を読み、1年かけて14冊を読んできた。この1年、忙しかったわりにはよく読んでいたなと思う。

重松作品は、読者層を40歳前後の男性で、かつ故郷を離れて高校卒業とともに上京し、親から離れて東京に長く暮らす男性に絞っているような気がする。社会の中で自分の能力の限界がそろそろ見えてきて、これ以上の伸びしろはないなと悟りを開く時期、新しいものに挑戦するよりも守りに入り始めた時期、子供とのコミュニケーションの難しさを感じ始めた時期、そんなのに該当する。読んで何かしらの爽快感が得られるような明確なハッピーエンドはあまりない。登場人物は皆何かしらわけありであり、また明確に言葉で語れるような思想や生き方をしているわけでもない。それだけに、どこにでもあるような親近感を抱く作品が多い。

『哀愁的東京』には9つの短編が収録されている。9編を通じて主人公は1人で、それを取り巻く登場人物が少しずつ変化していく。週刊誌のライターとして生計を立てる本業は絵本作家の主人公で、数年前に賞を取るほどの絵本作品を描いたにも関わらずその後絵本を描くことができずにライターが本業と化した毎日を過ごしている。そして、その取材対象がまた、一世を風靡した後凋落の一途にあるような人々である。破産したり、自殺でなくても亡くなったり、行方がわからなくなったり、そんな人々を描いている。従って、各編とも読後感がイマイチであった。時代が共有でき、凋落の過程に対して共感できるものがあるような世代の人々を扱った短編であればまだいいが、40代後半の人物を扱うような短編は正直なところあまり共感を抱けなかった。

従って、「マジックミラーの国のアリス」や「鋼のように、ガラスの如く」「魔法を信じるかい?」あたりはまだ集中して読めたが、「虹の見つけ方」や「女王陛下の墓碑」「哀愁的東京」などは全くダメだった。


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