SSブログ

『持続可能な福祉社会』 [読書日記]

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想

  • 作者: 広井 良典
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 新書

内容(「BOOK」データベースより)
かつての日本社会には、終身雇用の会社と強固で安定した家族という「見えない社会保障」があり、それは限りない経済成長と不可分のものだった。経済成長という前提が崩れ、「定常型社会」となりつつある今、再分配のシステムである「福祉」を根底から考え直す必要がある。本書は、「人生前半の社会保障」という新たなコンセプトとともに社会保障・教育改革の具体的道筋を示し、環境制約との調和、コミュニティの再生を含みこんだ、「持続可能な福祉社会」像をトータルかつ大胆に提示する。

広井先生の著書は難しい。読者の知的レベルを問うてくる。お前はここに書かれていることを理解できるかと挑戦してきているような気がする。
 
昨年7月に最初に読んだ時、最初の印象は「難しいな」だった。教育とか、年金とか、医療保険とか、コミュニティ論とか、さらには環境問題やグローバル課税まで扱っている。その1つ1つが個別の学問にもなるものだが、それを網羅的に扱っているので、読んでみてすぐに広井先生の見識の広さに驚いたし、文章のスタイルが難しかったので、サクサク読み進めるというわけにはいかなかった。当時は一度読んだらすぐに当ブログで記事を書こうと思っていたのだが、書く自信が全く湧いてこなかった。
 
あれから半年が発ち、僕も高齢社会を切り口に相当の勉強をしてきた。お陰で、前回よりははるかにサクサク読めるようになった。今週金曜日、僕は九州の某大学からお誘いを受け、国際シンポジウムで発表を行うことになっている。そのために、この日曜日から昨日にかけて、会場で配布してもらうためのディスカッションペーパーを一気に書き切った。この書き下ろしのために、先週もう一度広井先生の著書を読み直してみたのである。延べで24時間程度を費やして昨夜ようやく完成させたが、このペーパーのベースには広井先生の著書にある「人間の三世代モデル」がある。
 
本書を紹介する場合には、「人生前半の社会保障」という概念が先ず最初だろうと思う。昨秋、世界銀行が「開発と次世代」と題した世界開発報告を発刊したが、発刊前のドラフトを5月くらいに読ませてもらった際、読んでみてもしっくり来ないものを感じていた。それをどう説明するかで悩んでいた。その後広井先生の本を読んで、「人生前半の社会保障」の概念が、高齢者と次世代を繋げて考えるための枠組みを提供してくれているのに気付いた。読み直してさらにその意を強くした。
 
新書ながらとても示唆に富んだ本だと思う。お薦めです。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(3) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 3