高齢者ケアの新たな潮流 [地域愛]
5月25日(水)、日本経済新聞夕刊の記事から・・・。
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「遠くの施設より、なじんだ自宅で介護を受けたい」。そんな親の気持ちをくみ取り、子どもが親の家を改装し、介護保険を利用する日帰りのデイサービスやグループホームを始めている。高齢者ケアの新しい潮流、「小規模・地域密着」のモデルとしても注目される。
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介護保険のデイサービスは、これまでの特別養護老人ホームにおける施設内デイサービス(施設ケア)から、宅老所のような民家利用のデイサービスを経て、現在、自宅を利用したデイサービス(在宅ケア)が目立つようになってきているという。介護する側の子の世代がNPO法人を設立し、改造した自宅でデイサービスを起業するのだ。昨今の高齢者ケアはできるだけ在宅に近い環境が指向されるようになってきており、住宅地で民家を活用した宅老所のような1990年代以降のケア形態がより発展して要介護者の自宅利用という形態に繋がっている。
確かに、僕が故郷に残してきている両親も、以前、どちらか片方が欠けた場合にどうするかと尋ねた時は、自分は長くここに住んでいて知り合いも多いので、ずっとここに住み続けたいと言っていたのをよく覚えている。親を残して東京に所帯を持った僕にとっては、両親のケアをどのようにすればできるのか、とても大きな課題である。
日経が書いているような自宅利用のデイサービスは、確かにトレンドなのかもしれないが、それは要介護の親がすぐ近くに住んでいるからできることだと思う。それに形態として自宅介護みたいなものだから、サラリーマンが片手間にやっててできるようなことじゃない。サラリーマンやめて、NPO法人を立ち上げてそれを生業にするというのが理想だろうが、そんなこと今の僕にはできない。
昨秋、市の公開講座で「地域ケア」という概念について学ぶ機会があったが、その中で、これはヒントになるかもしれないと思った取組みがあった。NHKの「難問解決!ご近所の底力」で2年ほど前に紹介された京都市の春日学区の取組みだ。簡単に言えば、「元気なお年寄りが、元気でないお年寄りをケアするコミュニティ」という考え方である。しかも、この地域ケアの形態は始めからこのような形が指向されたのではなく、25年間もかけて徐々に出来上がっていったのだそうだ。そして、こうした地域住民を仲間につけ、地域の学校や行政、企業まで巻き込んで一大ムーブメントにしてゆくには強力なリーダーが必要だが、春日学区の場合は床屋さんだったのだそうだ。
こうした地域ケアは、要介護者の自宅で介護が行なわれるという点では在宅ケアに近いが、宅老所のような活動の拠点があるわけではなく、言ってみれば住民相互の信頼で結ばれたネットワークに依存しているところが大きい。そして、京都の街中で成功しているのならコミュニティの概念がまだしっかりしている僕の故郷ではもっと上手く短期間で出来上がるのかもしれない。
さらに、僕はこれに上手くITの活用を組み合わせられないものかと思っている。僕のように故郷に年老いた両親を残してきている子どもにとって、親の様子が毎日伝えれられるようなサービスを誰かがやってくれれば、その受益に対してきちんと対価をお支払いする気持ちはある。一時期、電気給湯ポットの使用にセンサーを付けることによって、介護サービス会社や遠く離れた子どもが、元気で日常生活を過ごしている親の様子を確認できるといったメリットが紹介されていたのを覚えている。これも一種のIT活用なわけだが、さらにもう一工夫すれば、介護サービス会社に映像ファイルを添付したり、介護日誌みたいなものにデジカメ画像を添付してメール配信するサービスとかをやってもらい、親の様子を毎日子に知らせるという事業を考えてはどうかと思う。或いは、介護サービス会社でなくとも、年齢は高くてもパソコンを使いこなせる人が中心となって地域のボランティア活動として展開する(そして僕たちはその活動に対して利用料を払う)というのも、パソコンを使えるお年寄りの生きがいにも繋がっていいかもしれない。(昔、米国に住んでいた頃、この構想を上司に話してみたところ、そうしたモデルの研究をスタンフォード大学でやっている学生がいると教えてもらえた。誰でも考えることが似ているのだな。)
こんな構想を具体化してくれる人がいたら嬉しいなと思う。
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