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スポーツ選手の出稼ぎ送金と開発 [外国人労働者]

金曜夕方に上司から月曜朝までにアイデアをまとめておけとのキツイ伝言メモを見て暗い気持ちになって迎えたこの週末、ボクは学会出席のために東京にご出張されていた社会人大学院時代の指導教官とお目にかかり、近況報告などさせていただくよい機会を得た。土曜の夕食会は、今年同課程に入られた関幸生さんも同席され、とても楽しいお話をさせていただくことができた。6時30分から飲み始め、気付いたら10時30分を回っていた。

このブログでも以前書いた通り、ボクの仕事上の当面の課題は労働移動(Migration)にある。でも、これにはいろいろな側面があって、開発資金としての送金の可能性と不規則的な人の移動における人権配慮と移動を管理する国際的な枠組みの構築などが目下の国際社会の関心事だと思う。

関さんは日本陸連にお勤めで、アフリカの陸上関係者と幅広いネットワークをお持ちだ。ご関心分野は「スポーツと開発」なのだそうだが、最近労働移動について考えてばかりいたボクにとっては、とても興味深いテーマであるように思えた。アフリカの陸上選手が、国外の陸上大会の獲得賞金をどう母国で使っているのか―――財政規模が小さく末端の受益者にまできちんと届く行政サービスの提供がなかなかできないアフリカ諸国の政府に代わって、陸上選手が国外で稼いできたお金が個人の貯蓄ではなく社会に還元されれば、政府に代わって貧困からの脱却につなげられる可能性があるからだ。

例えば、宗兄弟や瀬古選手のライバルだったタンザニアのイカンガー選手は、自分が国外のレースを走ることによって得た賞金や世界の陸上関係者とのネットワークを活用して、ダルエスサラーム郊外に陸上スクールを開校し、次世代の陸上選手を育てる環境作りに還元している。それはただ貧しいだけのタンザニアの住民に希望を与えることになるかもしれない。アフリカの陸上選手がどれくらい国際レースで稼いでいてそれをどの程度母国に持ち帰って社会に還元しているのかは、統計ではなかなか取れない。その点で、関さんのようにネットワークをお持ちの方は、インタビューを通じて情報蓄積ができると思うので、こうしたテーマの調査研究は関さんでないとできないと思う。

関さんは、スポーツの商業化も悪いことばかりではないとおっしゃっていたが、考えようによってはその通りだなと思う。陸上から話が外れるが、米国メジャーリーグで活躍するスター選手の多くは、莫大な富を築いたものの、それを母国の貧しい社会に還元しようという取組みをしており、これも母国にとっては貴重な外貨収入源に繋がっている。出稼ぎ労働者の海外送金は、その使途が奢侈品の消費や賭博にすぐに消えてしまうとすれば問題だが、それがきちんと社会やコミュニティに還元される仕組みがあれば、開発目的にも合致する。

関さんのお話でも面白かったのは、一時女子マラソンの世界最高タイムを保持していたケニアのテクラ・ロルーペ選手の現役時代、やたらとカネ、カネ言う選手だという印象を受けていたが、引退したら自ら財団を設立して社会還元を行なっているのを見て少し見方が変わったというお話とか、そういう社会還元を行なうアフリカ人選手の多くは、欧米のフィランソロピーの影響を受けているのだというお話とかだった。

今の体型から誰も信じてくれないが、ボクも少し前までは市民ランナーで走っていたので、陸上についてはとても関心があった。関さんとお話できたお陰で、日本のフルマラソンで海外から招待されるペースメーカーのギャラが幾らくらいだとか、アフリカのトップ選手が国外の賞金レースで優勝して獲得する賞金がいくらくらいだとか、いくつも質問が湧いてきて、あっという間の4時間だった。

関さんはTBSのホームページの世界陸上サイトで実名でコラムを書いておられる。お目にかかった後でちょっと読んでみたが、陸上に多少関心があるような者にはとても面白い内容だった。(URLはhttp://www.tbs.co.jp/seriku/2005/pn/column/

こういう社会の様々な分野でご活躍されている人が集い、それぞれ独自の視点から開発を語り合える場であるから社会人大学院は面白いと改めて思った。


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