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『ミュゲ書房』 [読書日記]

ミュゲ書房

ミュゲ書房

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: Kindle版
内容紹介
そこは、人も物語も再生する本屋さん―――
小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。挫折を味わった編集者は書店主となり、そしてまた編集者として再起する。本に携わる人々と、彼らの想いを描いたお仕事エンターテインメント。
【購入(キンドル)】
ブータンから日本に帰国する機中、せめて1冊ぐらいは本を読もうと思い、ダウンロードしたのが本書である。パロ空港の待合室で読込み開始し、経由地バンコクの空港で乗継便待ちの間に読み終えた。所要時間は約5時間。最近本を読んでなかったので、景気づけに小説を選んでスピードを上げようと狙ったが、久々の読書で感覚がつかめず、途中で何度も休憩を入れた。読書の方もリハビリが必要だ。

本書は、1年半ぐらい前からずっと「読みたい本」のリストに入っていた。この書店に関わったすべての人が最終的にはハッピーになれるエンディングで、若干予定調和的な印象は受けるものの、僕ごときの読者には、こういう静かでほっこりする終わり方でもとても嬉しい。

かつ、そんな中でも、地方の書店がどんどん閉業していく現状に対して地元の小規模スタートアップに場所を貸して集客の一助にしようとするサバイバル策とか、編集者と新人作家との力関係とか、逆にこだわりの強すぎる執筆者をどうやって編集者がいなしていい本に仕上げて行けるのかとか、装丁デザインやイラストの採用のされ方とか、1冊の本ができ上がっていくプロセスを追体験できる要素も相当盛り込まれていて、読みながらも勉強になった。

僕の親友が数年前から北海道に移住し、全道中で読書の楽しさを普及させる仕事に取り組んでいる。彼とのやり取りでも出てきたことがある「選書サービス」や「書店スペースを使ったイベント開催」等も、本書には登場する。帰国を機会に、彼ともどこかで会ってみたいと思う。

会えば話題は本の話となる。書店や出版、編集、文学賞、作家、図書館、まちづくりといったいくつかの切り口があるが、本書はそれらの要素をひと通り備えた作品として、彼との話のネタの1つにさせてもらえそうだ。


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