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魅力ある南部へ [ブータン]

東部・南部諸県、インフラなしで旅行客招致に着手
Eastern and southern dzongkhags prepare to welcome tourists amid limited infrastructure
MB Subba記者、Kuensel、2022年7月23日(土)
https://kuenselonline.com/eastern-and-southern-dzongkhags-prepare-to-welcome-tourists-amid-limited-infrastructure/
【要約】
国境が9月23日に再開されるのを受け、東部及び南部の県は、旅行客招致に向けた準備を進めている。しかし、インフラ整備状況は十分とは言えない。プンツォリン門に加え、サムドゥップジョンカル、ゲレフ、サムチ門も旅行客の往来に対して開かれることになっている。旅行客は、一部例外地域を除き、持続可能な開発基金(SDF)を払えばどこでも訪問できる。

ブータン観光評議会(TCB)では、SDFを払わなくても立入りできる地域も定めている。現在は、日帰りで入国し、帰国もする場合はSDF支払いは免除となっている。TCBはこの適用拡大を検討していて、SDFを支払わずにブータン国内で1泊できる地域を定めようとしている。そのための国境門の施設整備も行われている。

サムドゥップジョンカルのホテル経営者はSDFの東部諸県への適用は延期すべきだと主張するが、今のところ政府にもTCBにも延期の考えはない。

外国人旅行客もこれらの地点からの入国が認められる。タンディ・ドルジ外相によると、路面状況はほとんどの場所で良好で、旅行者歓迎の準備はできていると述べる。

観光業界関係者は、観光開発で遅れている県におけるインフラ開発のため、譲許性の高い融資を行うべきだと主張する。東部の県は、政府や金融機関からの支援なくして他の県と競争することはできないと指摘。サムドゥップジョンカル経由でインドから入国する旅行者は東部県へのアクセスがしやすいが、インフラの改善が徐々に進まないと、インドからの来訪者は増えないと見られている。また、ハイエンドの観光客用のインフラは東部では整っていないとも。

サルパン県では、ホテルのようなインフラの整備は数年前から進んでおり、SDF支払い免除でゲレフ等に宿泊できれば、地元経済には利益をもたらすと見られている。サルパン県だけでなく、隣りのチラン、ダガナ県等も恩恵を受けるだろう。

南西部では、サムチ経由でインドからハに向かう移動はより容易になる。これまでなら、プンツォリン経由でハに向かう必要があった。

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《プンツォリンの国境ゲートの様子》

このクエンセルの記事は、9月23日にインド国境が開放された後の、インドからの入国者の増加を当て込んだ南部ベルトの可能性と誘致策を簡単に俯瞰するという内容になっている。

インドからの人の流れについては、僕もそれほど実態を承知していないものの、観光目的で陸路で入国するインド人がパンデミック前のレベルよりも増加するのかどうかはわからない。そもそもSDFはインド人旅行者にはこれまで適用されて来なかった(インド人にも適用すべきという議論も実際にはあるようだが)。だから、SDF免除の効果をいくら追求しても、インド人旅行者の新規の掘り起しには繋がらないのではないかと僕は見ている。

では、インド人のような「域内旅行者(regional tourist)」ではない、「外国人旅行者(international tourist)」というカテゴリーで、インドから陸路入国してくる旅行者はどれくらいいるのだろうか。

例えば、ダージリンやカリンポンを訪れた外国人観光客が、陸路でブータンに入国するというケースがこれに該当する。でも、残念ながら、ちょっと思い付かないです。というのも、もしそういう行程を考えるなら、ダージリンやカリンポンを訪ねた観光客はいったんシリグリやバグドグラに出て、そこから飛行機でパロに入る方が合理的なルート選択だからだ。また、アッサム州の方面を旅行するような外国人観光客がいたとしても、次の目的地にブータンを選ぶとしたら、グワハティから飛行機でパロに入る方が合理的だ。

陸路でのブータン入りを選択させるためには、西ベンガルの場合、サムチやプンツォリンから入国して、パロに至るまでの間に、ものすごく「ここに行きたい」という観光スポットがあることが前提となる。また、アッサムの場合も、サムドゥップジョンカルやゲレフから入国して、タシガンやタシヤンツェ、チラン等でどうしても「ここに行きたい」というスポットがあることが前提だろう。そもそもこんなルートで入国しそうなそれほど多くない外国人旅行者を当て込むのは、費用対効果としてどうなのかなという疑問は、僕にはどうしても残る。

記事ではプンツォリンのことは与件として見られているので、言及はほとんどない。でも、僕は「観光」という観点ではなく、別の機能を以って南部訪問を目的化するアプローチの仕方も、検討の余地があると思っている。「プンツォリンはなんだかティンプーよりも面白いことをやってるので、行ってみようか」と思わせればいいのだ。別に、インフラ整備にお金をかけなくても、町や県の取組みが面白ければ足を運んで下さる外国人は増える。また、外国人だけじゃなく、ブータン人も増えることが見込める。そういう「発信」を、南部の県や都市、そこに立地する大学等の機関はもっとしていくことが必要だ。

もう1つ考慮すべき点は、インド側でも「仲間」となってくれそうな拠点との特別なコネクションを作っておくことだ。例えば、シリグリの木材市場とか、ジャイガオンの国境ゲートから20㎞ほどインド側に入ったところにあると言われているアマゾン・インディアのピックアップセンターとか、カリンポンのサイエンスセンターとか…。アッサム側でいえば、日本大使館やJICAのインド事務所が協力している「日本・インド北東部竹イニシアティブ」のカウンターパートとか―――。そういう、物流やイノベーションハブ、イシュー毎の域内協力の枠組み等に基づく両国内の拠点間の関係を構築して、人流の相互支援ができれば、シリグリ・バグドグラ、グワハティ経由でのブータン入国ももう少し増えるのではないだろうか。

個人的には、9月23日に国境が再開したら、カリンポンの友人を13年ぶりに尋ねてみたいと思っている。たぶん、これが最後の訪問になると思うし。

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