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豪州の言う「人材育成」とは? [ブータン]


4月30日(土)のBBS報道で、オーストラリア絡みのニュースが2点取り上げられていた。おそらく、オーストラリアが提供しているブータン公務員向け留学支援制度で、COVID-19の影響で留学出発が延期されていた公務員向けに、オンラインで壮行会が開かれたというのが先ずあって、それにデリーの豪大使館から同席した一等書記官に、BBSが単独インタビューしたという記事がくっ付いたということなのかと思う。

昨年度選抜された人も含め、2021年度、22年度で合わせると合計21人が対象らしい。また、サクテンの女性教員(41歳)でも選抜されているそうなので、募集にあたってのカバーの広さにも驚く。この女性教員にとっては、この留学機会は大きなチャンスに違いない。サクテンも相当な遠隔地である。代わりの教員がすぐに配置されることを祈りたいものだ。

で、1つめの記事には、長期短期合わせ、豪政府の奨学金を受けて豪州へ渡航したブータン人は総数2,000人にも達するとの記述がある。短期も含んでいるのが実態をわかりにくくしているが、同じ短期研修も含めた日本での技術研修員受入れの累計が800~900人程度だというのからすると、豪州の力の入れようがわかるというものだ。

そして、2つめの記事にある一等書記官へのインタビューの内容から、豪州の対ブータン開発協力が、コロンボ計画を忠実になぞっているというのが伺える。記事ではわからなかったのでちょっと調べてみたが、豪州はコロンボ計画の1950年設立当初の加盟国の1つで、1954年加盟の日本よりも古い。設立メンバーだからというのもあるのだろう、豪州の開発協力のやり方が研修員受入(留学生だけど)や専門家派遣(シニアボランティアだけど)といった人材育成に相当特化しているというのも合点がいく。

ここまでバーンと「人材育成」と言い切っちゃっているので、ブータン政府が豪政府に「橋作って下さい」とか「耕運機下さい」とか「東部地域の支援を検討して下さい」とか要請することにはなかなかならないのだろう。豪州がブータン国内で行っているプログラムとして目立つのは、せいぜい、DFAT(外交通商部)がスポンサーになっているジェンダー啓発のラジオスポットCMぐらいではないかと思う。

今、日本政府がどれくらいコロンボ計画を意識しているのかはわからない。ブータンでも、西岡京治専門家の最初の派遣はコロンボ計画経由だったし、ブータン人研修員の本邦受入れもコロンボ計画に則って行われていた筈だが、最近はまったく聞かなくなった。今でもコロンボ計画の既存枠組みに準じて、豪州の若手研究者を1年間南アジアに派遣する「新コロンボ計画」奨学金制度を新設している豪州とはエライ違いだ。

でもですね、この記事では、公務員向け留学支援制度だけが取り上げられているけれど、これとあのIELTS受験登録に並んでいたブータン人の長い行列の話とは別だ。もっと多くのブータン人が豪州に渡航しているし、そこで働いて得たお金でブータン国内で土地を購入し、地価がどんどん上がっている。そんな勢いで若い人材を吸い上げたら、国内に開発の担い手がいなくなってしまう。公務員向け留学支援制度にしても、配偶者の就労を認めるビザを発給されていたら、何が真の応募動機なのか、本当のところはわからない。

今回取材に応じた一等書記官がブータンの開発について包括的に論じられる立場の人なのかどうかはわからないが、「人材育成」を唱えるだけでなく、ちゃんとドナー円卓会議にも出てきて、ブータンの開発を包括的に議論する輪に入ってきたらどうなのかという気はしてしまう。

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