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『「デザイナーではない人」にデザインを伝える本』 [読書日記]

「デザイナーではない人」にデザインを伝える本

「デザイナーではない人」にデザインを伝える本

  • 作者: アトオシとデザイン(永井弘人)
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2018/04/11
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「デザイン思考」を「日本一、わかりやすく」知れる本。本書は、「『デザイナーではない人』にデザインを伝える」ための、「デザイン構築にまつわる、思考・解説・雑文・ストーリー」を書いた本です。これ1冊を読むと、「へぇー! こうやって、デザインってつくられてんだ。」「このデザイン思考は、わたしの仕事や日常にも生かせそう!」という感情をいだきます。つまり、「デザインやデザイナーに対する、新しい感度が芽生え、日常に生かせる発見がある」はずです!
【Kindle Unlimited】
以前、アドビ社が主催していた「いろはシリーズ」で、この著者が「デザイナーじゃないけど、いいデザインをつくりたい!~ そもそも、デザインってなぁに??~ 」というウェビナーシリーズの講師をされていたのをたまたま見て、そこで本書のことを宣伝されていた。そのうち読もうと思って数カ月経過してしまったが、今は週末だし、軽めの本が読めたらと思っていたので、Kindle Unlimitedでダウンロードして、本当に軽く読んでしまった。

真面目にデザインのことを知りたい読者には、この著者のかなりくだけた文体に肩透かしを食らったと感じる人もいるかもしれない。僕も、著者の半生の部分の記述がデザインとどう関係するのか理解に苦しむ箇所も多々あったけれど、軽めの本が読みたかったし、なにしろKindle Unlimitedだから、はずしてもダメージは少ないので、僕のような状況には向いていたと思う。

なお、著者の名誉のためにも述べておくが、この本の文体自体はくだけすぎているが、アドビのウェビナーの方は勉強にはなった。別に自分はデザイナーになるつもりはないし、残りの人生を考えたらロゴ制作をプロのデザイナーに頼むような機会もまずないだろう。(会社が傘下のシンクタンクのロゴを外部に発注して、わけのわからぬロゴを提案されて、公開までに時間がかかっていたみたいだけれど、それは外野から聴いていた話…。)

そんなわけで、別に直近で自分がデザインを手掛けるような予定があるわけでもなかった僕がアトオシさんのウェビナーを訊いたのは、首都がロックダウンで手持ち無沙汰だったことや、そんな中で僕の配属先(CST)に新設されるファブラボのロゴを学内公募にかける動きがあり、僕も応募作品の審査を頼まれたからだ。ウェビナーを聴きながら自分なりに審査の基準を考え、評価シートを埋めたつもりだが、僕の推しはブータン人審査員の大多数の推しとは明らかに異なり、結局ブータン人審査員の間で高評価を得た作品が採用されることになった。

学生に広くその存在を事前に知ってもらったり、学生や教員にオーナーシップを持ってもらうという意味では、学内公募自体には意味はあったと思うし、こうして決まったロゴの下で、長く大事に使ってもらえる施設になっていくのがいちばんだから、審査結果については云々するつもりはない。

さて、話が脱線してしまったが、勢いでしゃべりまくる早口ではあるものの、講師としての著者はいたってクリアなメッセージをウェビナーに込められていた。なので、「もう少し知りたい」という受講者は必ずおり、そこに本書を宣伝されていた。その流れで本書をダウンロードした人は結構いるものと推察されるが、それでこのくだけっぷりには、恐れながらギャップを感じられた読者は多かったのではないか。(逆ならありかもしれないが。)

でも、本書にメッセージがまったくなかったというつもりはない。

「人の目的(=こうなったらいいな、と思うこと)を達成させる力」。これこそが、「デザイン」だと考えています。(p.79)

良いデザインとは、「想い・オリジナリティ」「強み・売り」を具現化することである。(p.101)

「完成したロゴを初めて見たお客さんに、どう感じて欲しいですか?”感情面”で、一言で言うと?」(中略)この質問は、自分のロゴ(デザイン)がどう見られたいか、奥底に持っている希望を意識させてあげる効果があるんです。(p.102)

この直感、つまり判断力を鍛えるためには、常日頃から、「何が良いデザインなのか?」を知って、「どうして良いデザインなのか?」を考える必要があります。(中略)そもそも、良いデザインを知らない人は、良いデザインを作れない(p.107)

デザインリサーチは、自分が立てた、「コンセプトに近い、既存デザインを探す行為」。
すぐにラフを描いちゃう人がいますが、遠回りになることも。
世にあふれる、デザインの力を借りましょう。デザイン書籍や資料、実際に配布されている印刷物や冊子など。(p.108)

「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」(p.110)

ベストアンサーを出す方法は、検証・調整の反復に尽きます。
形を起こす→プリントする→改善点に気づく→調整する→プリントする→別の改善点に気づく→調整する→プリントする→別の改善点に気づく……。(p.113)

「リアルな人に向けた実践提案」を何度もやって、「コミュニケーション力」をつけて、「相手のことを想いやるハート」を持つことが必要(p.120)

”デザイン”の醍醐味は「相手と自分で、一緒につくりあげる」こと。協業。セッション。(中略) ”デザイン”は、クライアントとデザイナーが、お互いに気持ちよくなる方法を考え、最高に気持ちよくなっていただき、売上や認知といった「結果」という子供を生みだす。(中略)
”アート”は、見る側の気持ちよさよりも、まず、つくり手自身が目一杯気持ちよくなることを考え、実行する。その快感自体に、最高の「価値」が生まれる。(pp.121-122)

あなたの「頭の中で考えていること」がある。
それを惜しみもなく、人に話す。否定される。笑われる。
賛同されない、イコール、「あなただけが持つ、強いオリジナルの考え」ということ。
むしろ、ヤッタ!!と感じ、迷いなくGOしましょう。
(p.253)

デザインの文脈での話ではないが、ここで言われている「検証」って、プロトタイピングの「検証」とすごく近いと思ったし、「相手と自分で一緒につくりあげる」のも、プロトタイピングを共創デザインと位置付けている僕らの仕事に近い。既にあるデザインをリサーチして、それにアドオンして新たなデザインを生み出すという方法論も、実は僕らがやっていて、他者にも推奨している「シェア」というプロセスと近い。

そして、社内公募で採用されたにも関わらず組織論で各論反対の憂き目にあって断念を余儀なくされた新規事業のアイデアも、自分の説得力のなさばかりを責めていた自分に、いや先見性があると言えるのではと救いの言葉をいただいたような気がした。

そして何よりも、これらのクライアントとの協働とか、「相手のことを想いやるハート」とかは、著者の中心的メッセージだと思うが、これらは本書で紹介されている著者の実際のロゴデザインの事例紹介からも十分読み取ることができると思う。それらのロゴのデザインに込められたクライアントの思いや創業に至るまでのストーリー、それらに対する著者の共感、熱いハートは、軽く読んでいても十分感じることができる。

最後に、本書は写真やグラフィックを多用しているので、電子書籍オンリーとはいえKindle Paperwhiteのような白黒画面では読みづらいので注意が必要。読むならPCのKindle Cloud Readerで読む方がおススメだろう。

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