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プログラミング教育推進熱を少し冷静に見てみる [ブータン]

オンラインプラットフォームCodeMonkeyが、コーディング学習を
より楽しく生徒を惹きつけるものにする

CodeMonkey, an online platform, to make coding more fun
and engaging for students

BBS、2021年7月20日(火)
http://www.bbs.bt/news/?p=154077
code-monkey-launch.jpg
【抄訳】
CodeMonkeyと呼ばれる新しいコーディングオンラインプラットフォームが、本日、教育省に提出された。これにより、コーディングはより楽しくない、学校での取組み加速が期待される。CodeMonkeyは、有料レッスンを提供できる人気のオンラインプラットフォームで、ゲームを通じて子どもたちにコーディングを学ぶ機会を与える。 CodeMonkeyは、ブータンの子供たちへの国王陛下からの贈り物である。コーディングとは、コンピューター言語を使用してゲームやウェブサイトなどのアプリケーションを開発するプロセスを言う。

今年2月、国王の勅命により、王立STEM教育協会(RSSTEM)は、幾つかの教育プラットフォームの調査を行った。教育省及び情報通信省情報技術通信局(DITT)との協議を経て、RSSTEMは、幾つかの有力プラットフォームの中から、CodeMonkeyを選定した。

CodeMonkeyは、学習者が視覚的に面白い画像を自分で作っていくことで、コードを書いてしまうことを可能にする。オンライン上で様々な課題をこなしたり、活動を行なったりすることで、学習者は批判的、創造的、論理的思考を発達させるものと期待されている。

ジャイ・ビル・ライ教育相は、CodeMonkeyローンチングの席上、将来の仕事では複雑な問題を解決できるスキルが必要であり、批判的思考や創造的思考などのスキルを学校時代から開発し、育成する必要があると強調した。その「戦略の1つは、幼稚園からとは言わないまでも、小学校低学年からのコーディング教育を行うことだ。」教育省は、来月から学校においてオンラインプラットフォームを展開する予定である。

RSSTEMのプロジェクトディレクターであるカルマ・ワンディ会長は、こう述べる。「コーディングはクラス7及びクラス8のICTカリキュラムの一部として組み込まれ、他の教科の補足学習となる。クラス6以下の小学校及び就学前教育の場合は、コンピューターの利用可能性とネットワーク接続が許す限り、展開していきたい。」

教育省、DITT、及び王室事務局直下のRSSTEMの三者はこの日、プログラムの迅速な実施のため、覚書に署名した。コーディングは、学生が急速に変化するデジタル世界に追いつくことを奨励するため、昨年教育カリキュラムに導入された。

7月22日、仕事の関係でRSSTEMのカルマ会長に面談した際、CodeMonkeyというプラットフォームをローンチしたところだと伺った。無知な僕はてっきりブータン政府が国王陛下の命を受けて独自で開発したプラットフォームだと思い込んでいたが、あとで宿舎に戻って調べてみたところ、既に確立されて世界的にも利活用が進んでいるプラットフォームだった。日本語のページもあるくらいだから、きっと日本でのプログラミング教育でもかなり活用されているのだろう。なので、日本で小学校プログラミング教育に多少でも関わったことがある若い教員経験者にとって、ブータンは教えるチャンスかもしれません。興味ある方は、是非CodeMonkeyは覚えておきましょう。

ちなみに、その際、カルマ会長から「君、コーディングできる?」と訊かれたので、「ScratchやMicrosoft MakeCodeなら少々」と答えておいた。私、一応Scratchプログラミング指導法の講習を受講し、修了試験もクリアして資格証明デジタルバッジも持ってます。カルマ会長より年上だと思いますが、その気になればオジサンでもなんとか教えられると思います(笑)。「やれる?」と訊かれれば、取りあえず「イエス」と答えます。なにせ、人に教えるのが自分自身の学びの機会になるから。それに、何をプログラムしたいかがはっきりしていれば、子どもたちは自分で探求を始めるだろうし。

だから、重要なのは、カリキュラムを作ってその通りにコードの書き方を教えることではなく、何を作りたいのか自由なアイデアを出させることだと思う。そして、そのアイデアを手描きでいいのでアルゴリズムに描いてみて、それに基づいてコードブロックを組み立てていけばいい。

自由なアイデアを出させること、それをスケッチしてアルゴリズムを描いてみること―――ここが、ブータンがこれからコーディングを教育カリキュラムに取り込んでいく際のきわめて大きな課題なのではないか。

アイデア出しの訓練は、ファブラボ・ブータンでの研修を拝見する限り、あまり重要視されているようには思えない。僕自身も、先週、大学生向けに3Dモデリングの研修をホストした際に、具体的な課題を提示して、それに対して自由なアプローチで問題解決につながるようなものをデザインしてみて欲しいと指示したところ、受講していた大学生は思考停止を起こしてしまった。(しょうがないので、第2グループの研修からは、既存のデザインの中から気に入ったものを探し、それをハックしろという演習に切り替えた。)

おそらく、コード書いていてシミュレーターで操作しても思うように動かないことも頻繁に発生するだろう。そういう時に、どこがおかしいのかを生徒が自分自身で見つけ出せるのが本人の学習につながるのだが、そこで安易に先生に「どこがおかしいでしょうか」と訊いて来られる。それは僕の3Dモデリング研修でもそうで、自分自身である程度仕上げるところまで全然到達してない段階から、「先生、これ見て下さい。これでいいですか?」と声をかけてくる。安直に正解を欲しがっているように思えてならない。

日本のプログラミング教育経験者がもし青年海外協力隊のような形でブータンに来られて、学校でコーディングを教えて欲しいと要請されたら、付けなければいけない付加価値とはこういったところにある。日本だったら当たり前のことかもしれないが、当地では当たり前ではないので、葛藤は大きいと思うが。

最後にもう1つ。今こうしてプログラミング教育は過熱ともいえる状況にあるが、そうやって初等中等で教わったコーディングが、その先のキャリア形成で使用される機会がどれくらいあるのかは冷静に考えてみる必要がある。その先のプログラミング言語を教えられる教員が大学レベルにはいるのかということや、その書いたコードを用いて何を社会で実装していくのか―――ハードウェアにどう組み合わせれば社会実装が可能なのか、そのハードウェアはどのように作ったらいいのか等、考えなければいけないことは他にも多い。

今、ブータンで「STEM教育」と言ったら、「プログラミング教育(コーディング)」と同義といってもいいかもしれない。でも、そうやってせっかくコードを書く経験を積んだIT人材が増えてきても、それだけでは大幅な雇用増にはつながらない。隣の大国の「雇用なき経済成長」を見ればわかることでもある。単にコードが書けるというだけではなく、そのコードをハードウェアに組み込んで、忍耐強く社会実装にまで持って行ける人材が増えてきてこそ、仕事につながっていくのではないだろうか。

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