『境界線』 [読書日記]
内容紹介【購入】
2018年5月某日、気仙沼市南町の海岸で、女性の変死体が発見された。女性の遺留品の身分証から、遺体は宮城県警捜査一課警部・笘篠誠一郎の妻だったことがわかる。笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流され、行方不明のままだった。遺体の様子から、妻と思われる女性はその前夜まで生きていたという。なぜ妻は自分のもとへ戻ってこなかったのか――笘篠はさまざまな疑問を胸に身元確認のため現場へ急行するが、そこで目にしたのはまったくの別人の遺体だった。妻の身元が騙られ、身元が誰かの手によって流出していた……やり場のない怒りを抱えながら捜査を続ける笘篠。その経緯をたどり続けるもなかなか進展がない。そのような中、宮城県警に新たな他殺体発見の一報が入る。果たしてこのふたつの事件の関連性はあるのか? そして、笘篠の妻の身元はなぜ騙られたのか――。
寂しいお話になるが、こちらでの単身赴任生活の間、PCを使った作業や読書の際によく使っていたタリーズの入っていた蔦屋書店が、11月4日で閉店となった。タリーズは営業続けるらしいが、タリーズでひと仕事終えた後に書店の方の棚をぶらぶら観て、気に入った本を買ってくるというのはもうできない。先週末の連休の中日、11月3日は、せっかくなので何冊か本を買って帰った。
その1冊が本日紹介する中山七里作品。引用にはNHK出版から出ている単行本を使っているが、実際には宝島社から最近出た文庫版を購入している。SSブログのAmazon書籍検索で、宝島社文庫版の方がヒットしなかった。
初めて読む作家だが、プロフィールを見たら、1961年岐阜県出身だという。新たな岐阜県出身の作家で、かつ多作ときた。これからは作品を重点的に読んでいきたい。ちなみに、ご出身の街が僕の社会人1年目の時の職場の2年先輩と同じ。小さな街なので、先輩のお知り合いかもしれない。
あらすじは既にご紹介したので、あまり書き足す必要もないと思う。読みながら、あちら側とこちら側といったいくつもの「境界線」があることは感じた。
1つ気になったのは、あまり見慣れない苗字の登場人物が相次いだこと。これらの苗字は、宮城県や岩手県では多いのだろうか。「佐々木」とか「佐藤」といった、東北ではかなり多い苗字の登場人物が一人もいなかったので、わずかだが本作品が異世界の感覚を受けてしまった。
『ピープルデザイン』 [仕事の小ネタ]
ピープルデザイン: 超福祉 インクルーシブ社会の実現に向けたアイデアと実践の記録
- 作者: NPO法人ピープルデザイン研究所
- 出版社/メーカー: NPO法人ピープルデザイン研究所 発売:ポット出版プラス
- 発売日: 2020/08/03
- メディア: 単行本
内容紹介【大学図書館】
2014年に設立されたNPO法人「ピープルデザイン研究所」は「意識のバリアフリーをクリエイティブに実現する思想と方法論」を「ピープルデザイン」と定義し、従来型の福祉を飛び超えた「超福祉」を標榜し活動している。 この本では5つのマイノリティ(障害者、 LGBTQ、子育て中の父母、高齢者、外国人)と4つの切り口(シゴトづくり、ヒトづくり、コトづくり、モノづくり)をかけあわせて、多様性に寛容な社会の実現にむけてピープルデザイン研究所が行なっている様々なプロジェクトをパートナーとなった人たちの声とともに紹介する。
project01 ワクワクの“晴れ舞台"で働く「就労体験プロジェクト」
project02 1日15分からの新しい働き方「超短時間雇用モデル」
project03 国内外の次世代の大学生が挑んだ「認知症国際交流プロジェクト」
project04 市民自らが解決策を考える「みやまえ子育て応援だん」
project05 LGBTQフレンドリーを目指した「ピープルデザインシネマ」
project06 地元の人とまちの空気をつくる「ピープルデザインストリート」
project07 人とテクノロジーで超福祉を実現する「超福祉展」
勤務している大学の図書館で、「インクルーシブデザイン」で検索をかけたら、『超福祉』というタイトルで検索にヒットした本。表紙を見ると、「超福祉」がタイトルだというのなら、そのあとに続く「インクルーシブ社会の実現に向けたアイデアと実践の記録」までがタイトルに含まれるのかと思ってしますが(いや、たぶんそこはサブタイトルなんだろうけど)、それ以上に、「PEOPLE DESIGN」の文字の方が目立つ。それじゃ英語表記で「PEOPLE DESIGN」がタイトルなのかと思えば、背表紙は「ピープルデザイン」とカタカナ表記がなされている。中味とは全く関係ないけれど、検索泣かせのブックタイトルだな(笑)。
本書は発刊が2020年8月と比較的新しく、今もきっと行われているであろう活動を紹介されている気がする。単発のイベントを年次開催するというのが結構多い印象で、そういうのに向かって人々が力を結集していく、その過程で参画した住民や行政の担当者がノウハウを蓄積し、さらにボランティアとして加わった大学生や若手の社会人が楽しさに魅せられて次から企画運営の中枢を担うという、人づくりの拡大再生産も行われていく仕掛けになっている。
紹介されている全ての事例がそうだというわけではないが、ピープルデザイン研究所は最初の「場」づくりのきっかけこそ代表の須藤シンジ氏個人に話が行ってそれを氏が引き受けたという形だが、毎年そうした場づくりを続けるうちに、研究所に新たなメンバーが加わり、そうした若い人材が徐々に場づくりのファシリテーションを担っていくようになるというモデルになっているのだろう。