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『クック・トゥ・ザ・フューチャー』 [仕事の小ネタ]

クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食

クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24 の未来食

  • 出版社/メーカー: グラフィック社
  • 発売日: 2024/03/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
介護食、災害食、食育、肥満対応、食品ロス、代替タンパク源 など、24のテーマに分け、3Dフードプリンターによって可能になるであろう2055年の未来の食卓を、3Dフードプリンターの第一人者が予想するアカデミックなSFフードテック本。
【大学図書館】

時々聴いているポッドキャスト『ものづくりnoラジオ』で、最近フード3Dプリンティングの特集回があり、管理人のしぶちょーさんが参考文献として筆頭に挙げていたのが本書である。市立図書館では借りられないかもと思い、勤務先である大学の図書館で検索してみたら、貸出可能な新着図書として挙がってきたので、大学図書館利用の手始めとして、借りてみることにした。

フード3Dプリンティングというと、僕は過去の見聞に絡めとられ、次の2つ以外のイメージがなかなかできないでいた。

1つはチョコレートやグミ、羊羹などのカスタマイズ造形で、少し前にチョコレート3Dプリンタ―が実用化されたのが報じられていたのに代表される、同室の食材を希望する形状に成型・出力するとか、色を様々に混ぜ込んでカラフルな食べ物にするとか、そういった類のものである。ポイントはカスタマイズの仕方はともかく、食材としては単一のものということになる。

2つめは昆虫食で、その昆虫の原型をとどめているとどうしても食べられない、けどタンパク質がふんだんに摂取できるといったコオロギやイナゴ、甲虫の幼虫等を、いったん乾燥し、粉末化して、これに何か別の食材も混ぜ込んで別の形状に再成型するのに、積層印刷を行うというもの。

これらは当然本書でも紹介されている(第1章「斬新なかたちをデザインすることができる」と第4章「新奇食材の利用を促進することができる」)。

でも、フード3Dプリンティングの適用範囲はもっと広い。それを知ることができたのが収穫だった。

例えば、すぐになるほどと思えるのは、第3章「食品ロスを削減することができる」である。甲殻など食べられない部位を食べられるようにするとか、野菜カットの後捨てられる部位も有効に使って豊富な野菜を摂取できるようにするとかいったものだ。また、第5章「時間や場所の制限をなくすことができる」にあった、自然災害等に遭った直後の避難生活で同一の食事ばかりで飽きが来た時に、希望すれば出てくる豊富なバラエティの食事とかも、そうだなと思った。

一方で、それのどこに積層印刷技術が必要なのか、それが本質的な技術要素ではなく、重要なのは他の技術なのではないかと首を傾げたところもあった。二度見しないと3Dプリンティングがどこに組み合わさっているのかわからないとか、あってもちょっと空想世界の話過ぎないかと眉をひそめざるを得ない記述もあった。

それに、変に写真を挿入して既に現実化された技術なのかと思ってしまったものもあった。それで次のページに行ったら、2055年の仮想ストーリーだと書かれると、ちょっと「おいおい」と思ってしまう。それなら口絵を挿入したのと同じページに、そういう断り書きを付けて欲しい。

ちょっと物足りなさを感じたのは、フード3Dプリンティングの技術進化がどこまで進んでいるのかが、2055年までにそこまで到達できそうなのかの評価について言及がないことだ。例えば、待ち時間の限界は3分だというのでカップヌードルの「お湯を注いで待つこと3分」が割り出されたと何かで聞いたことがあるが、これだけ大きくて複雑な造形物を、果たして3分以内に出力完了できるようになるのか、しかもそれが十分小型化されて、一事業主でも複数導入できるほど低価格化が本当に進むのか、そのあたりの見通しについて、著者なりの評価が述べられておらず、本当に夢で終わっている。

1970年の大阪万博の頃、僕は幼稚園年長から小学1年生だったが、当時の少年雑誌で描かれていた未来予想図が、文章化されたらこんな本ができましたというのが本書のイメージである。面白いのだけれど、本当に2055年にそこまで到達できているのか、それは僕らにはわからない。僕たちが子どもの頃に見せられた未来予想図のうち、携帯電話のように実現しちゃっった技術もあるので、本書に書かれた未来予想のうち、実現してしまうものはきっといくつかはあるのだろう。

その頃まで僕が生きていたら、87歳か。たぶん、摂取する食事はかなり保守的になってバリエーションも無くなっていると思うが、過去に何度もお世話になったあの地のあの店のあの品を、もし目の前で再現してもう一度食べられるのだとしたら、確かに利用してみたいとは思うだろうな。

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