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大学プログラムの改編で思う、過去の経緯 [ブータン]

自分の仕事と若干なりとも関係すると思えそうな現地報道には、少しばかり思うところも述べておこうかと思い、今回紹介することにした。自分自身の情報収集にもなるし。

王立ブータン大学、3プログラムを廃止
RUB discontinues three programmes
BBS、2021年7月20日(火)
https://www.bbs.bt/news/?p=154084
【抄訳】
王立ブータン大学(RUB)は、傘下の各カレッジのプログラムを国内労働市場のニーズを踏まえて調整している。今年度、RUBは、労働市場との関連性がないと判明した3つのプログラムを廃止した。

廃止されるのは、タクツェ言語文化大学(CLCS)のブータン・ヒマラヤ研究学士、サムツェ教育大学(SCE)のソーシャルワーク学士、およびシェラブツェ大学の英語・ゾンカ語学士の3プログラム。RUBによると、大学はこれらのプログラムの卒業生はどこにも受け入れられていないというフィードバックがあったという。ソーシャルワーク学士については、SCEの大学卒業証書の要件すら満たしていなかったという。このため、王立人事院(RCSC)はこれらのプログラムの卒業生の公務員応募も受け付けていないという。RUB関係者は、これらのコースの卒業生の60%以上がまだ失業していると語った。

その間、RUBは3つの新しいプログラムを導入した。これらは、市場の需要が高いスキルの習得機会を提供するものと期待されている。新設されたのは、シェラブツェ大学のデータサイエンス学士、統計学士、CLCSのゾンカ文化研究学士の3プログラム。

シェラブツェ大学の新設プログラムについては、社会のニーズには合っていると思う。逆に、シェラブツェ大学が持っていた英語学士というのについては、未だ存在していたこと自体が意外だった。確か、2017年7月にヨンフラ・センテナリー大学がシェラブツェから独立した際、英語学科はそちらに新設大学に移ったものだと思っていたから。だから、「社会のニーズがない」なんて理由を付けられても、それじゃヨンフラはどうなっちゃうのかなと別の疑問も湧いてきた。

CLCSについては、ゾンカ・ヒマラヤ研究がゾンカ・文化研究に改編されただけのように見受けられるが、一見するとよくわからない。「社会のニーズがない」というのは、そうなのかなと思う反面、外国でブータンやヒマラヤ山岳文化研究に携わっている研究者にとってはCLCSは重要な研究パートナーなのではないかと思う。卒業して企業や政府公的機関に就職を考えているような学生にとっては魅力的な教育機関ではないかもしれないが、研究機関としては重要だし、文化人類学者を輩出できる教育機関としては、小規模ながらもニーズはあるんじゃないかなと思ったりもする。

ところで、タクツェのCLCSといえば、2017年10月18日のBBSの報道で、2020年に人類学博士課程を新設する("RUB to offer PhD in Anthropology by 2020")と報じられていた筈だけど、あれどうなってるんですかね?今回の駐在の間に、在籍できないかと考えてウェブサイトとか幾つか調べてみたのだけれど、見つけることができなかった。それを思い付いた頃と比べて、今の僕は博士課程への執着心がかなり薄れてきているので、この話が立ち消えになっているのならそれで構わないのだけれど。

報じられたことも、何年か先に「ところであれどうなってる?」と思い出して調べてみると、報道された通りには実現していないというのはよくあることだ。でも、僕は前回の駐在時代にその報道に基づいてこのブログでブータン紹介を展開していたので、ちょっと責任を感じている。

最後に、今回の報道でこれがいちばんの驚きだった。サムチ教育大学のソーシャルワーク学科って、新設が報じられたのは2018年7月9日のことで(”SCE to introduce a course in social work" BBS)、その時の報道では、新設時期は来年度(2019年度半ば)となっていた。また、この当時は国連――確かユニセフだったかな――がこのソーシャルワーク学科の新設には相当力を入れていて、研修だかカンファレンスを開いただとかで、華やかな集合写真が新聞紙上を賑わせていたと記憶している。2019年5月にも、3日間にわたる国際会議をホストしている("International conference on Emerging Social Work Practices and Education held at SCE" BBS)。

2年前にこれだけ華々しいことをやっておいて、今や学科廃止って―――。これぐらい思い切った方針転換ができるというのはある意味すごいことだ。日本も見習うべきかもしれない。

その後の市民社会組織(CSO)へ就職するソーシャルワーカーのスキルアップを目指しての学科開設だったことは、当時の報道のされ方からよくわかる。一方で、この2年の間に、そのCSOの登録申請がどっと増えて、現在は承認手続きが一時凍結されていると聞く。「社会のニーズがない」というよりも、需要を抑制しようとしているのではないかと思われる。

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