『日本でいちばん大切にしたい会社』2 [読書日記]
内容紹介【市立図書館】
"日本中に感動の渦を呼んで2年、待望の続編が登場。これまでに訪問調査した6300社から、価値ある会社を改めて抽出。前作同様、働くことの意味、会社の使命に気づかされる、心を打つストーリーが満載。35万人が涙を流し、各メディアが絶賛した前作から2年。読者の熱いご要望にこたえて続編を発売いたしました。日本にはまだまだ素晴らしい会社がたくさんあるんです。7,000社のフィールドワークで見出した、「日本一」価値ある企業とは。
自分が長岡にいる間に、全巻読破してしまいたいシリーズ。市立図書館の「経営」の棚に行くと、「借りろ」と言わんばかりに全8巻が鎮座しておられるので。シリーズも8冊まで行くと、しかも同じ「経営」というジャンルで括ってこれだけ揃えられると、ちょっと迫力がある。
シリーズと言えば、昔働いていた会社で、10年ほど前からシリーズ物の書籍刊行が行われている。既に30冊に到達している。その最初の枠組みを作るのにかかわらせてもらったが、当時感じていた危惧は、これって各巻がそれぞれ「各国事情」の棚に行ってしまって、これらをひとまとめに括る図書分類がないことで、シリーズとしてのインパクトを出しにくいという点だった。今でも書店や図書館に行っても、このシリーズが数冊であっても書棚を占拠している光景は見たことがない。
当時一緒にこのシリーズ物のシリーズ化に携わった上司は、「20冊まとまったら、専用ボックスを作って、中学高校に寄贈したい」と夢を語っておられたが、すでに社を去っておられるし、当時のビジョンを直接耳にしていた僕も社を後にした。今も書籍刊行は続けられているが、こういう活用の仕方はされているのだろうか―――などと組織の記憶の伝達がうまく行われないことを嘆く前に、僕がこの専用ボックスをデザインして、とっとと前例を作っちゃえばいいんじゃんと思うに至った(笑)
話が大幅に脱線しました。申し訳ありません。
『母の待つ里』 [読書日記]
内容紹介【購入】
40年ぶりにふるさとに帰ると――。感動の傑作長編!
「きたが、きたが、けえってきたが」
40年ぶりに帰ってきたふるさとには、年老いた母が待っていた――。大手食品会社社長として孤独を感じている松永徹。退職と同時に妻から離婚された室田精一。親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。還暦前後の悩みを抱えた3人が、懐かしい山里の家で不思議な一夜を過ごすと……。家族とは、そしてふるさととは?すべての人に贈る、感涙必至の傑作長編。ふるさとを想う人、ふるさとに帰れぬ人、ふるさとのない人。ふるさとをあなたに――。
8月末、右目の白内障手術を受けた。しばらくは車の運転はNGだと言われ、仕方ないので僕は通勤にはバスを利用している。職場は駅の西側、さらに信濃川を渡った川西にある。そして僕の宿舎は駅の東側、国道17号よりもさらに東側で、もう少し東に行くと盆地の外輪山に到達する。距離としては約7㎞。当然、この区間を1本でつなぐバス路線はない。駅でバスを乗り換えるが、乗り継ぎがうまくいかないと1時間以上かかってしまう。
そうなると、バスの車内だけでなく、バス停での待ち時間、乗り継ぎの時の待ち時間をどう過ごすかが大きな問題となる。ついでに言えば、術後の経過観察もあって眼科には毎週通わなければならないが、その待ち時間もある。
手持ち無沙汰になるので、何か小説でも読もうと考え、先週末、術後の検診で眼科に行った後、駅ビル内の書店を物色し、平積みになっている浅田次郎の新刊が目についたので買ってしまった。2年ほど前に単行本で出たらしいが、最近文庫化された。それに、8月のお盆の時期に、こんなタイトルの本を出されたら、どのようなストーリーであろうと手に取ってしまうだろう。
面白かったかと聴かれれば、面白かったことは間違いないのだが、なんか、思っていたのと違う展開だった。展開が今風なのだが、こういうビジネスが本当に存在しているのだとしたら、ちょっと悲しい気がしてしまう。あまり書くと著しくネタバレになってしまうので、これくらいにとどめておく。浅田次郎作品をそんなに読んでいるわけではないが、過去に読んだ作品とは著しく異なる。ひと言で言えば、繰り返しになるが「今風」であり、浅田次郎ってこういう作品も描くんだというのが新鮮だった。
『世界から感謝の手紙が届く会社』 [読書日記]
世界から感謝の手紙が届く会社―中村ブレイスの挑戦 (新潮文庫)
- 作者: 望, 千葉
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/11/29
- メディア: 文庫
内容紹介【N市立図書館】
世界遺産「石見銀山」の町、島根県大田市大森町。その製品を作る人も使う人も幸せにする会社、中村ブレイスは、この山中の町にある。義足や人工乳房などを作る同社が目指すのは、「欠けた体の一部を補うことで心の穴を埋め、お客様に生き直す力を得てもらう」こと。「志と技術力があれば世界に貢献できる」──それを実証する地方企業の感動的足跡。『よみがえるおっぱい』改題。
先日、坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』のレビューをご紹介したが、その中で取り上げられていた島根県の「中村ブレイス」という企業を特出しで紹介したルポが本書である。元々単行本で出たのは2000年のことで、改題して文庫版が刊行されたのも2010年といささか古く、今も本書で描かれたような体制で現存するのかどうかはちょっとわからない。
中村ブレイスのウェブサイトを見てみた。本書のヒューマンストーリーの主役として書かれている中村俊郎氏は、2018年に会長に退かれていて、息子さんが社長に就任されていた。
ヒューマンストーリーとしてはとても面白い。本書の挿入口絵を見ても、ウェブサイトを見ても、社員をとても大切にしておられる企業だというのは伝わって来る。今は従業員数も70名程度に増えているそうで、小さなこの町の雇用や税収、そして地域の活性化にも大きく貢献しておられるのだろう。
義肢装具の製作に関しては多少の予備知識もあるので、筆者が1990年代の取材をもとに2000年に書かれた記事というのは、やはり情報としての古さは感じた。3Dプリンターなどは当然出てこないし、インドのジャイプール・フットのようなBOPビジネスとの比較もなされない。ジャイプール・フットに限らず、一人一人のニーズに合った義肢装具を利用者の手元に迅速に届ける仕組みを考えた起業家はインドあたりには少なからずいる。潜在的需要は大きいが自社の肩幅でできることをというので少量カスタマイズ生産に振り切って長年操業を続けられている中村ブレイスのあり方も、経営戦略として当然ありだと思う。
そこで気になるのが、そういう時代背景の違いはあるにしても、著者はもうちょっと引いて中村ブレイスや中村俊郎氏を相対化して描くことができなかったのかという点である。「先端技術」と言われるが、その技術のどこがどのように先進的なのかは正直わかりにくかった。技術の説明や従業員の方々の実際の作業にもっと焦点を当てた描写があったらもっとt良かったとも思う。