SSブログ

『開発コンサルタントという仕事』 [仕事の小ネタ]

開発コンサルタントという仕事

開発コンサルタントという仕事

  • 作者: 笹尾隆二郎
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2020/10/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
途上国で政策提言や技術協力を担う専門家、それが開発コンサルタント。その仕事内容とキャリアパスを、具体的に詳しく紹介。
【市立図書館】
長年勤めていた法人を早期退職して、フリーランスでありながら、機会があれば年3カ月ほど海外に行ける仕事を作ることができるのが理想だと僕は考えている。たぶん今の開発コンサルタントの業界にいらっしゃる方とはそれほど競合しない領域でそれなりに経験と実績を積んできているので、ニーズがあれば手を挙げたいし、仕事を取れる自信もある。問題は、そういうニーズが顕在化するかどうかなのだけれど(苦笑)。なにせ、開発コンサルタントに仕事を外注する側の組織の人々に間で、「デジタルファブリケーション」や「3Dプリント」の潜在性をご理解いただけているとは思えないので…。

今から1年前、開発コンサルタントの卵とも言える若手の方々を対象とした研修会でお話をさせていただいたことがあるが、彼らからいただいたレスポンスは、「その潜在性は理解できるが、そういう要素を活動に取り込めという業務指示が発注者からなければコンサルタントとしては動きが取れない」とのことだった。残念ながら、それが現実だと思う。自分の寿命が来るのが先か、国際協力の業界で理解者が増えてくるのが先か、今のところはわからない。

そんな「開発コンサルタント」の仕事について、一緒に現場で働いたことがある経験上、相手のことを改めて知っておくのもいいかなと思い、今回は市立図書館で借りた本の中に、本書を含めることにした。こんな本が地方の公立図書館に所蔵されているのには正直驚いた。版元が働きかけたのか、著者の勤務先(アイシーネット)が働きかけたのか、それとも僕の知らないこの地域の方が、関心があって図書館での購入を依頼したのか、理由は何なのかはわからないが、所蔵に役割を果たされた方には感謝したい。

内容としては、大学や大学院で国際開発を勉強した人が、将来のキャリアパスとして「開発コンサルタント」を目指して欲しいという、著者の所属先の強い要望を反映させ、その面白さ、仕事の内容、そこに至るまでのキャリア形成のあり方などを述べた内容だ。特に、コンサルタントの仕事の内容については、そうした方々と現地で一緒にお仕事してきた人間としては、描かれていることにはいちいち首肯するところがあった。若い読者には、一読を期待する。

続きを読む


nice!(5)  コメント(0) 

『友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術』 [仕事の小ネタ]

友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術

友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術

  • 作者: 末岐碧衣
  • 出版社/メーカー: アルファポリス
  • 発売日: 2021/04/01
  • メディア: 単行本
「コミュ障」で「友達が0人」という、社会にうまく適応できない著者が、多くの挫折を経てたどり着いた、一人でも稼げるようになる技術「ぼっち仕事術」を指南する。コミュ障の人間関係を改善するコミュニケーションのとり方から、収支を安定させるお金の管理の仕方、病みがちな心を整えるメンタルケアまで、コミュ障ならずとも使える実践的テクニックが満載。不安定な現代を生き抜くあらゆる社会人必携のビジネス書です。
【市立図書館】
自分が目指そうとしているものがこれに近いのではないかと思ったので、図書館で借りてみることにした。自分がコミュ障であるかどうかは自分ではわからないが、プレゼン本番にあまり強くないのは自分でも自覚があり、それを人並み以上の準備と直前リハーサルで補って、なんとか取り繕って会社員生活をやり過ごした。これから目指すのは「SE」はともかくフリーランスであることは著者と同じである。

それだけに、細々とでも安心できる固定収入を確保した上で、いくつかのアドホックの仕事を組み合わせてやっていけるのが理想だと思う。このあたりは、著者と同意見である。また、がつがつ営業目的で人と会わなくても、緩いつながりをキープしておく意味でたまには会うべきだというのも同感だ。僕はそこがあまりちゃんとできていないと思う。しかも、人的ネットワーク理論で言われるような1年に1回ではなく、著者は半年に1回を推奨している。これはもうちょっとちゃんとやらないといけないと痛感させられた点だった。

続きを読む


nice!(6)  コメント(0) 

『はじめての木工家具づくり』 [仕事の小ネタ]

はじめての木工家具づくり (012DIYシリーズ)

はじめての木工家具づくり (012DIYシリーズ)

  • 出版社/メーカー: 大泉書店
  • 発売日: 2013/09/12
  • メディア: 単行本
内容紹介
木を使ったナチュラル家具づくりの基本&コツ
テーブル、机、イスなどの定番から、キッチンラック、踏み台、すき間収納まで、写真とイラストでビジュアル解説。
・基本の道具の紹介から、作品づくり、塗装の方法まで、誰もがつくれるように写真を多用してわかりやすく解説
・読者自身が自分の好みにあわせてカスタマイズできるよう、塗装の方法も複数紹介
【市立図書館】
7月下旬から8月上旬にかけてメキシコに出かけて、うち前半の1週間はチアパス州で先住民の女性グループと木工家具作りをしてきた。今振り返っても貴重な経験だったが、ああいった内容での活動になると事前にわかっていたら、今年2月に既にメキシコ行きにエントリーしていた経緯からすれば、本書のような作例集を参考にして、1つ2つ木工家具を作る経験を積んでから現地入りすれば、できたことの幅はもっと広まったのではないかと思う。

メキシコ行きは貴重な体験だったけれど、逆に今の自分に何が欠けているのかを見直す場でもあった。メキシコでできたことを喜ぶ気持ちがある一方で、できなかったことを今後どのようにできるようにしていくか、復習のための課題を突き付けられたような気がしてならない。

渡航準備の段階で、何もやっていなかったわけではない。実際のところ大型CNCを用いた家具作りは経験していた。ただ、大型CNCで切り出し、接着剤なしで組み立てるところまでは経験済みだったが、その後の仕上げで困った。どのように塗装すればいいか、その下準備で行っておくべきことは何か、何もわかっていない自分に気付かされた。

さらに言えば、大型CNCを使って正確なカットは確かにできるようになったが、そもそもカットするためのボードを買いにホームセンターに出向いた時、どのボードを使うか、すぐに決心がつかなかった。樹種による加工の難易度やクセ、留意点の違いなど、実際選択を迫られる場面に来て、どうすればいいのか途方に暮れる数分間を経験したのである。

そういうことも含めると、カットするためのデザインのところに気を取られ過ぎていて、他の工程についての予習が全然足りていなかった。そんな苦い経験が過去にはある。

続きを読む


nice!(7)  コメント(0) 

『ハート形の雲』 [読書日記]

ハート型の雲

ハート型の雲

  • 作者: 高橋 三千綱
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2019/03/13
  • メディア: 単行本

内容紹介
「アノ家は貧乏だからよ。貧乏すぎるからよ」――順風満帆かと思われた東大卒官僚との縁談に対する、「鬼婆」と言われた母からの反対。箱入りで育てられた家を飛び出した恵美子の運命は。
昭和30年代、浅草。「株式会社菱川」の令嬢・恵美子は子どもの頃から何一つ不自由なく生活していた。「鬼婆」のように厳しかった母親は恵美子の尊敬する兄にいつも辛くあたっていた。そんな恵美子も年ごろになり兄の友人からプロポーズされるが、母に猛反対されてしまう。果たして恵美子の運命は!?そして、実家の会社から造反し独立した兄・貞夫を待つのは成功なのか、破滅なのか……。時代を駆け抜けた家族の息遣いを生々しく描く、芥川賞作家渾身の一作。
【市立図書館】
先週末市立図書館で新しく借りる本を物色していて、小説を1作品だけチョイ足ししようと思いながら、小説の棚を見て目にとまったのが高橋三千綱の棚であった。タイトルから内容は想像できないので、適当に手に取った。

高橋は2021年8月に鬼籍に入っている。2019年3月発刊の本作品は、かなり晩年の作品ということになる。また、この兄妹が築き、守り上げてきた「染めQ」という会社は実存するし、そこの代表取締役社長は菱木貞夫さんという方である。作品中で兄の貞夫が開発に取り組んだ「ミッチャクロン」や「パテ」は、現在、染めQテクノロジイ社の取扱い製品の中にそのままズバリで含まれている。「菱木」を「菱川」に変えるなどの加工はあったようだが、大半は実話なのではないかと思う。

作品誕生の背景までは知らないけれど、菱木社長の妹さんあたりに口述してもらった菱木家のライフヒストリーをもとに、高橋が小説化したのかなと思う。妹さんの口述を筆記したのだと思うと、最初から最後まで「世間知らず」と謙遜しつつ、対比的に兄や周囲の人々の凄さを際立たせる描き方になっているのも納得がいく。

続きを読む


nice!(5)  コメント(0) 

『日本でいちばん大切にしたい会社』2 [読書日記]

『日本でいちばん大切にしたい会社』2

『日本でいちばん大切にしたい会社』2

  • 作者: 坂本光司
  • 出版社/メーカー: あさ出版
  • 発売日: 2016/05/20
  • メディア: Kindle版
内容紹介
"日本中に感動の渦を呼んで2年、待望の続編が登場。これまでに訪問調査した6300社から、価値ある会社を改めて抽出。前作同様、働くことの意味、会社の使命に気づかされる、心を打つストーリーが満載。35万人が涙を流し、各メディアが絶賛した前作から2年。読者の熱いご要望にこたえて続編を発売いたしました。日本にはまだまだ素晴らしい会社がたくさんあるんです。7,000社のフィールドワークで見出した、「日本一」価値ある企業とは。
【市立図書館】
自分が長岡にいる間に、全巻読破してしまいたいシリーズ。市立図書館の「経営」の棚に行くと、「借りろ」と言わんばかりに全8巻が鎮座しておられるので。シリーズも8冊まで行くと、しかも同じ「経営」というジャンルで括ってこれだけ揃えられると、ちょっと迫力がある。

シリーズと言えば、昔働いていた会社で、10年ほど前からシリーズ物の書籍刊行が行われている。既に30冊に到達している。その最初の枠組みを作るのにかかわらせてもらったが、当時感じていた危惧は、これって各巻がそれぞれ「各国事情」の棚に行ってしまって、これらをひとまとめに括る図書分類がないことで、シリーズとしてのインパクトを出しにくいという点だった。今でも書店や図書館に行っても、このシリーズが数冊であっても書棚を占拠している光景は見たことがない。

当時一緒にこのシリーズ物のシリーズ化に携わった上司は、「20冊まとまったら、専用ボックスを作って、中学高校に寄贈したい」と夢を語っておられたが、すでに社を去っておられるし、当時のビジョンを直接耳にしていた僕も社を後にした。今も書籍刊行は続けられているが、こういう活用の仕方はされているのだろうか―――などと組織の記憶の伝達がうまく行われないことを嘆く前に、僕がこの専用ボックスをデザインして、とっとと前例を作っちゃえばいいんじゃんと思うに至った(笑)

話が大幅に脱線しました。申し訳ありません。

続きを読む


nice!(8)  コメント(0) 

『母の待つ里』 [読書日記]

母の待つ里(新潮文庫)

母の待つ里(新潮文庫)

  • 作者: 浅田次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2024/07/29
  • メディア: Kindle版
内容紹介
40年ぶりにふるさとに帰ると――。感動の傑作長編!
「きたが、きたが、けえってきたが」
40年ぶりに帰ってきたふるさとには、年老いた母が待っていた――。大手食品会社社長として孤独を感じている松永徹。退職と同時に妻から離婚された室田精一。親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。還暦前後の悩みを抱えた3人が、懐かしい山里の家で不思議な一夜を過ごすと……。家族とは、そしてふるさととは?すべての人に贈る、感涙必至の傑作長編。ふるさとを想う人、ふるさとに帰れぬ人、ふるさとのない人。ふるさとをあなたに――。
【購入】
8月末、右目の白内障手術を受けた。しばらくは車の運転はNGだと言われ、仕方ないので僕は通勤にはバスを利用している。職場は駅の西側、さらに信濃川を渡った川西にある。そして僕の宿舎は駅の東側、国道17号よりもさらに東側で、もう少し東に行くと盆地の外輪山に到達する。距離としては約7㎞。当然、この区間を1本でつなぐバス路線はない。駅でバスを乗り換えるが、乗り継ぎがうまくいかないと1時間以上かかってしまう。

そうなると、バスの車内だけでなく、バス停での待ち時間、乗り継ぎの時の待ち時間をどう過ごすかが大きな問題となる。ついでに言えば、術後の経過観察もあって眼科には毎週通わなければならないが、その待ち時間もある。

手持ち無沙汰になるので、何か小説でも読もうと考え、先週末、術後の検診で眼科に行った後、駅ビル内の書店を物色し、平積みになっている浅田次郎の新刊が目についたので買ってしまった。2年ほど前に単行本で出たらしいが、最近文庫化された。それに、8月のお盆の時期に、こんなタイトルの本を出されたら、どのようなストーリーであろうと手に取ってしまうだろう。

面白かったかと聴かれれば、面白かったことは間違いないのだが、なんか、思っていたのと違う展開だった。展開が今風なのだが、こういうビジネスが本当に存在しているのだとしたら、ちょっと悲しい気がしてしまう。あまり書くと著しくネタバレになってしまうので、これくらいにとどめておく。浅田次郎作品をそんなに読んでいるわけではないが、過去に読んだ作品とは著しく異なる。ひと言で言えば、繰り返しになるが「今風」であり、浅田次郎ってこういう作品も描くんだというのが新鮮だった。

nice!(5)  コメント(0) 

『世界から感謝の手紙が届く会社』 [読書日記]

世界から感謝の手紙が届く会社―中村ブレイスの挑戦 (新潮文庫)

世界から感謝の手紙が届く会社―中村ブレイスの挑戦 (新潮文庫)

  • 作者: 望, 千葉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/11/29
  • メディア: 文庫
内容紹介
世界遺産「石見銀山」の町、島根県大田市大森町。その製品を作る人も使う人も幸せにする会社、中村ブレイスは、この山中の町にある。義足や人工乳房などを作る同社が目指すのは、「欠けた体の一部を補うことで心の穴を埋め、お客様に生き直す力を得てもらう」こと。「志と技術力があれば世界に貢献できる」──それを実証する地方企業の感動的足跡。『よみがえるおっぱい』改題。
【N市立図書館】
先日、坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』のレビューをご紹介したが、その中で取り上げられていた島根県の「中村ブレイス」という企業を特出しで紹介したルポが本書である。元々単行本で出たのは2000年のことで、改題して文庫版が刊行されたのも2010年といささか古く、今も本書で描かれたような体制で現存するのかどうかはちょっとわからない。

中村ブレイスのウェブサイトを見てみた。本書のヒューマンストーリーの主役として書かれている中村俊郎氏は、2018年に会長に退かれていて、息子さんが社長に就任されていた。

ヒューマンストーリーとしてはとても面白い。本書の挿入口絵を見ても、ウェブサイトを見ても、社員をとても大切にしておられる企業だというのは伝わって来る。今は従業員数も70名程度に増えているそうで、小さなこの町の雇用や税収、そして地域の活性化にも大きく貢献しておられるのだろう。

義肢装具の製作に関しては多少の予備知識もあるので、筆者が1990年代の取材をもとに2000年に書かれた記事というのは、やはり情報としての古さは感じた。3Dプリンターなどは当然出てこないし、インドのジャイプール・フットのようなBOPビジネスとの比較もなされない。ジャイプール・フットに限らず、一人一人のニーズに合った義肢装具を利用者の手元に迅速に届ける仕組みを考えた起業家はインドあたりには少なからずいる。潜在的需要は大きいが自社の肩幅でできることをというので少量カスタマイズ生産に振り切って長年操業を続けられている中村ブレイスのあり方も、経営戦略として当然ありだと思う。

そこで気になるのが、そういう時代背景の違いはあるにしても、著者はもうちょっと引いて中村ブレイスや中村俊郎氏を相対化して描くことができなかったのかという点である。「先端技術」と言われるが、その技術のどこがどのように先進的なのかは正直わかりにくかった。技術の説明や従業員の方々の実際の作業にもっと焦点を当てた描写があったらもっとt良かったとも思う。

続きを読む


nice!(6)  コメント(0)