『ピープルデザイン』 [仕事の小ネタ]
ピープルデザイン: 超福祉 インクルーシブ社会の実現に向けたアイデアと実践の記録
- 作者: NPO法人ピープルデザイン研究所
- 出版社/メーカー: NPO法人ピープルデザイン研究所 発売:ポット出版プラス
- 発売日: 2020/08/03
- メディア: 単行本
内容紹介【大学図書館】
2014年に設立されたNPO法人「ピープルデザイン研究所」は「意識のバリアフリーをクリエイティブに実現する思想と方法論」を「ピープルデザイン」と定義し、従来型の福祉を飛び超えた「超福祉」を標榜し活動している。 この本では5つのマイノリティ(障害者、 LGBTQ、子育て中の父母、高齢者、外国人)と4つの切り口(シゴトづくり、ヒトづくり、コトづくり、モノづくり)をかけあわせて、多様性に寛容な社会の実現にむけてピープルデザイン研究所が行なっている様々なプロジェクトをパートナーとなった人たちの声とともに紹介する。
project01 ワクワクの“晴れ舞台"で働く「就労体験プロジェクト」
project02 1日15分からの新しい働き方「超短時間雇用モデル」
project03 国内外の次世代の大学生が挑んだ「認知症国際交流プロジェクト」
project04 市民自らが解決策を考える「みやまえ子育て応援だん」
project05 LGBTQフレンドリーを目指した「ピープルデザインシネマ」
project06 地元の人とまちの空気をつくる「ピープルデザインストリート」
project07 人とテクノロジーで超福祉を実現する「超福祉展」
勤務している大学の図書館で、「インクルーシブデザイン」で検索をかけたら、『超福祉』というタイトルで検索にヒットした本。表紙を見ると、「超福祉」がタイトルだというのなら、そのあとに続く「インクルーシブ社会の実現に向けたアイデアと実践の記録」までがタイトルに含まれるのかと思ってしますが(いや、たぶんそこはサブタイトルなんだろうけど)、それ以上に、「PEOPLE DESIGN」の文字の方が目立つ。それじゃ英語表記で「PEOPLE DESIGN」がタイトルなのかと思えば、背表紙は「ピープルデザイン」とカタカナ表記がなされている。中味とは全く関係ないけれど、検索泣かせのブックタイトルだな(笑)。
本書は発刊が2020年8月と比較的新しく、今もきっと行われているであろう活動を紹介されている気がする。単発のイベントを年次開催するというのが結構多い印象で、そういうのに向かって人々が力を結集していく、その過程で参画した住民や行政の担当者がノウハウを蓄積し、さらにボランティアとして加わった大学生や若手の社会人が楽しさに魅せられて次から企画運営の中枢を担うという、人づくりの拡大再生産も行われていく仕掛けになっている。
紹介されている全ての事例がそうだというわけではないが、ピープルデザイン研究所は最初の「場」づくりのきっかけこそ代表の須藤シンジ氏個人に話が行ってそれを氏が引き受けたという形だが、毎年そうした場づくりを続けるうちに、研究所に新たなメンバーが加わり、そうした若い人材が徐々に場づくりのファシリテーションを担っていくようになるというモデルになっているのだろう。
実際に取り組まれた事例はどれも素晴らしいと思う。還暦過ぎたオヤジが地方都市の自宅の窓から朝日を眺めながら、1人で考えていたって決して実現できないような活動なので、若い人をこうして呼び込んで地域に長年住んでいる人々と交流させる仕掛けを若い世代の人たちの中から育んでいく姿はても眩しく感じる。地方都市での暮らしも一時的なものだと割り切っていて、あまり地域の同世代の人々との接点もない今の自分は、こういう「場」にどうやったら入って行けるのか、ちょっと悩んでしまったが。
また、NPO法人だから設けてはいないとは思うが、この研究所はこうした場づくりへの協力を通じて、どのように収入を得て、スタッフの人件費に充てているのか―――そこらへんのビジネスモデルにはちょっと関心がある。本書はピープルデザイン研究所としては一種の名刺か事業紹介パンフレットのようなものなのだろうから、これまでの事業実績にオントップで事業拡大していきたいとは化が得ておられるのだろう。単発のイベントも準備過程でのファシリテーションで、コンサルタント料を取っているとしたらいくらぐらいなのかとか。
また、このノウハウは、国際協力でも生かせたらいいだろうなと思う。特定カウンターパートを対象にしたマンツーマンに近い技術移転も必要だが、このように地域の人々の力を結集できる場をプロデュースするプロセスをファシリテートし、それを通じて現地の若い人材を何人も育てていくような国際協力があってもいいのではないかと思えてきた。
もっとも、そういうのを今思えてきても僕にはもう遅い。せめて10年前に気付いていれば、そしてそういうプロセスに関わった経験をもっと早くから自分の地元で蓄積していたら、開発途上国の現場に出てもっとできたこともあったかもしれない。
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