『60分でわかる!SDGs超入門』 [持続可能な開発]
内容(「BOOK」データベースより)
ビジネス×サステナブルの決定版! なぜSDGsは注目されるのか?CSRと何が違うのか? 企業が取り組むべき理由とビジネスチャンスのある領域は? SDGs目標達成のカギを握るESG投資とは? 経営とリンクさせるツールSDG Compassについても解説。課題と目標がひと目でわかるバリューチェーンマップ付き。
先月あたりからプチブームになっている、SDGs関連書籍の読み込み。そんなにいろいろ読む気はないものの、顔を知っていて名刺交換をしたことがあるぐらいの方の著書ぐらいは目を通しておこう―――そんなシリーズの第二弾は、蟹江憲史『SDGs(持続可能な開発目標)』以上にビジネスに重心を置いた編集になっている。SDGsをメシの種にして企業コンサルタントで食っていくならこの程度のことは知っておけという内容だな。肝に銘じておこう。
ここまで思い切って「SDGsはビジネスチャンス」と謳っている本は気持ちがいい。想定読者もビジネスマンに絞り込んでいるんだろう。だから、本書にはもう1つのシリアスアクターである自治体ですら姿が薄いし、次世代を担う大学生や中高生というのも出てこない。今ビジネスやっている人が読む分にはいいが、大学生や高校生が本書を読んでSDGsをわかった気になるのはちょっとリスクがあるかも。
企業の取組みに絞っているから、自社製品のバリューチェーン全体をSDGsへの貢献で見て、リスクとチャンスを包括的に把握しようという興味深いメッセージになっている。監修者のお二人が「持続可能なサプライチェーン」という研究会で主要メンバーになっておられるのも、本書を読めば合点がゆく。この点は本書の大きな特徴なんだろう。
但し、そこに物足りなさも感じるところがある。
第1に、本書のバリューチェーン・マップは、「企画・設計」→「調達(購買物流)」→「生産・製造」→「輸送(出荷物流)」→「販売(流通)」→「消費・使用・廃棄」という事業プロセスを包括的に見ていることになっているが、その割には、本文中では「消費・使用・廃棄」というところへの言及がほとんどない。
プラスチックコーティングした紙コップとか、再利用のための分離が難しい製品を作ることはSDGs的に良いのかとか、プラスチックを燃えにくくするために難燃剤を加えることは許されるのかとか、ちょっとプラスチック問題をかじってしまった今日、SDGsを扱った書籍で、プラスチック問題への言及を避けるのは良くない。
第2に、本書は、SDG12の「つくる責任、使う責任」の、前者(つくる責任)の方はまあ重点的に扱っていると言えるが、後者(使う責任)については「エシカル消費」の盛り上がりという言い方で、消費者は既に変化してきているという前提でSDGsを語っておられる。消費者の責任への言及が端折られているのである。
「エシカル消費」は確かにブームとも言える状況だが、消費者も移り気で、エシカルだから消費者は買って下さるというわけではない。エシカルだけで何年も続けられない。また、プラスチック問題はつくる側だけではなく、使う側のモラルの問題もかなり大きい。
そういう点での物足りなさ、さらに細かいところではツッコミどころもあるけれど、基本的には本書はボリュームのわりに情報量には富み、ビジネスマンが読むSDGsの入門書としては最適だと勧める。本書も図書館で借りて読んだが、挿入図表は引用して使いたくなるものが3点ほどあり、本書は1冊購入して座右に置くことにした。
余談だが、エシカルファッションだということで、欧米のオーガニックコットンのブランドから服を仕入れて日本で出されているポップアップショップに行ってみたことがある。そういうところで、例えばインド産のオーガニックコットンを使ってますというデザイナーが、時々インドの綿花畑でコットンを収穫している写真や映像を見たりすることがあるが、それじゃそこで採れたオーガニックコットンから、種取りして、糸にして、生地にして、染めもやって、それで服に仕上げているのかというと、そういう仕組みではないらしい。
インドの繊維メーカーが介在していて、オーガニックコットンを調達して、自社で製品を出す以外に、プライベートブランドにオーガニックコットンの糸や生地を供給しているのだという。だから、ああいう写真や映像を見せて、だからここのファッションブランドはエシカルですと言われても、間に別のサプライヤーが入っていて、そこの綿花畑から採れたコットンを使っているわけじゃないじゃないかというツッコミもできてしまう。別のサプライヤーが介在しているのが悪いことだと言っているわけでは決してない。単に、バリューチェーンの各プロセスには、別のアクターが関わっているから、そういうところも含めて最終製品を扱うメーカーは、ちゃんと見ておいて下さいということである。
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