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生態系保全をPFで [ブータン]

4300万ドルの生態系保全イニシアティブ
Bhutan launches USD 43M conservation initiative
Kuensel、2017年11月13日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-launches-usd-43m-conservation-initiative/

2017-11-13 Kuensel.jpg

【ポイント】
11月11日、第四代国王の誕生日でもあったこの日、資金総額4300万ドル(28億ニュルタム)に及ぶ生態系保全イニシアティブ「ブータン・フォー・ライフ(BFL)」が発表された。ブータン政府と世界自然保護基金(WWF)の共同イニシアティブで、国土の51%に及ぶ自然保護区域の管理保全を、持続的な資金拠出により実施していこうとする仕組みである。

BFLは、官民を問わず、複数のドナーの資金拠出を1つの財布にまとめ、必要総額4000万ドルに到達するまでコミットメントを求めることになっていた。WWFの他、緑の気候基金(GCF)、地球環境ファシリティ(GEF)、タイのBT家財団、ブータン環境保全信託基金、その他民間財団等が拠出を表明。4300万ドルにまで基金が積み上がったことから、今回のローンチングとなった。

この基金は今後14年間にわたって執行され、徐々に基金残高が減少していく一方、ブータン政府は、生態系保全に充ててきた予算を今後年間5~7%のペースで増額を進め、14年後には年間600万ドル規模で外からの資金を完全に代替するシナリオになっている。その財源としては、車両輸入にかかる環境税(Green Tax)、水力発電事業収入の一部、保護区域におけるエコツーリズムの収入等が充てられる。

BFLは政府とは独立した理事会により、事業の監督を行う。政府の代表やBFLへの資金拠出ドナー、生態系保全にかかる専門家等が理事を務める。BFLが一種のプロジェクトファイナンスとして独立執行されることで、ブータン政府が生態系保全に充ててきた国庫負担は大きく軽減され、政府は社会サービスや、経済多様化、その他のニーズへの取組みにより注力できるようになる。

ブータンの自然環境は、世界に貢献している。森林の年間CO2吸収量は、ブータンの排出する年間CO2の4倍とも言われている。この日のローンチングで主賓となった王妃は、そのステートメントの中で、ブータンのビジョンは、単に国際的な義務を履行するだけではなく、その取組みの成功を通じて、世界に範を示してその方向への世界的な努力を仕向けることにあると強調した。

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規模に度肝を抜かれたので、ブログで紹介する順番を大幅に変え、最も新しいクエンセルの記事からこの話を紹介することにした。WWF、GCF、GEFともに、本部からそれなりの大物が顔を揃えて来ており、各機関、ブータン政府ともに、力の入れようがわかろうというものである。また、LDC卒業国入りを控えて、いつまでも二国間援助には頼れないという制約や、だからといって返済義務のある世界銀行やアジア開発銀行の融資には大きく頼れないし、資金供与額は大したことはないものの、国際的な規範の適用が求められる国際機関からの支援にもそんなには頼れないだろうし、逆に民間資金フローは今後も増額が見込まれるだろうから、これをうまくブータンの開発課題に誘導する仕組みとして、BFLはその1つの方向性を示していると思う。

また、ブータンの自然保護区域の中では人々の生活も普通に行われているが、自然保護区域の大半を占めている北部の山岳地域は、高地民が住んでいてブータン政府の重点支援対象となっているけれども、裨益人口や高山病リスクを考えると、JICAなどが直接協力するというのはなかなか考えにくい地域だとも思う。高地民はその過酷な生活環境を考えると、子息をより海抜の低い地域の学校に通わせたいとする希望はわからないでもないが、政府としては中国と国境を接するこのエリアに、人がいなくなるという事態は避けないといけないので、自ずと重点支援対象としていかないといけない。こうしたジレンマをある程度軽減できる仕組みとして、こういう複数ドナーの拠出金を1つの財布で管理する仕組みはありなのかもしれないなと思う。その中の1コンポーネントとして、高地民の生活支援は含まれるのだろうし。

ただ、この民間ファイナンスのスキームで狙っているのはやっぱり民間資金なのだとしたら、例えば日本にカバレッジを拡げたとして、どういう人が資金を出してくれそうかというと、ちょっと分散されすぎているのではないかという気もする。民間ドナーの数は多いけれど、1ドナー当たりの拠出可能額が比較的少額だとすると、費用対効果を考えると日本でのマーケティングの優先順位は低いのではないかと思える。民間財団だといっても、政府の息がかかっているところとか、財閥系で代表がうんと言えば話がサクサク決まっていくようなところとかが、今後も優先ターゲットとなっていくのだろう。

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