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ポンプ動かぬ消防車 [ブータン]

整備士不足が消防車8台を出動困難に
Lack of mechanics keep eight fire engines off road
Kuensel、2017年10月30日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/lack-of-mechanics-keep-eight-fire-engines-off-road/

2017-10-30 Kuensel.jpg

【ポイント】
消防車のポンプ部の修理やメンテナンスができる整備士の不足が、消防局の頭痛の種になりつつある。現在、消防局には52台の消防車が配備されている。26台はインド製、残る26台は日本製である。ティンプーには、チャンザムトック地区にある消防本署に9台、デチェンチョリン、モティタン、タシチョゾンの分署に各1台が配備されている。しかし、52台のうち、8台は現在使用不能で、その内訳は、モンガル、タシヤンツェ、トンサ、プナカ、タシチョゾンの各1台と、ティンプー本署の3台となっている。消防局は2011年にインド政府の援助で19代を配備して以降、新たな消防車は供与されていない。

消防局関係者によると、消防車のエンジン部分の整備はブータンの自動車整備工場でも可能だが、ポンプ部分の修理やメンテナンスを行える専門的な整備士が自動車整備工場にはいないという。出動回数が少ない夏場に消防局が行った修理・メンテナンスにより明らかになった。LBプラダン消防局長によると、国内の自動車整備工場では、溶接やタイヤ交換、補充等の小さな修理は喜んで行うが、一般車両と違って消防車の整備は収益性が高くないので、専門知識を持った整備士を配置していないという。

スペアパーツの調達にも課題がある。特にポンプ部のスペアパーツは、調達業者も整備工場もストックを置くのに消極的である。一般車両よりも場所を食う消防車は、整備工場での取扱いも消極的。日本製消防車はそれが機能しているうちは効率的だが、エンジン部の問題発生は少ないものの、ポンプ部が壊れた場合、パーツに名前が付いていなかったり、品番号がなかったりして、たとえ整備工場が修理を請け負ってくれたとしても、仕様がわからないことが問題となるケースが多い。

現在、2人の整備士が消防局に常駐して、試行錯誤を繰り返しながら、修理や整備にあたっている。3人目の整備士は1年間の訓練のためインドに行っている。

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くだんの消防車は、公益財団法人日本消防協会が寄贈したもので、日本大使館の草の根無償資金協力事業を通じて、車両の整備と日本からブータンまでの輸送が行われている。あまり自分とは関わりの少ない事業ではあるが、こうやって記事が出てしまうと、何だか自分が悪いことをしているような気持ちになってしまう。

日本消防協会の公表している資料を読むと、「援助車輌の保守管理」と書かれている。詳細はわからないが、これが資料のフローチャート上で「援助車輌の寄贈」という矢印の上に書かれていることから、保守管理は寄贈の前の1回きりで、寄贈された後の車両の点検やアフターケアについては特に言及されていない。そこだけを書いてしまうと、寄贈しっ放しのスキームに問題があるようにも思えてしまうのだが、長年行われてきた中古消防車の供与事業で、ブータン側が修理や保守点検に必要な人材育成や体制整備を行ってこなかったことにも問題があるようにも思える。

ではどうすべきか―――以下は僕が漠然と考えているアイデアである。

【その1:ティンプー技術訓練校(TTI)での特殊車両整備施設の新設】ティンプーは元々自動車整備を専門とするTTIなので、ここに消防車のポンプ部や救急車、パトカー等のアタッチメント部分の整備等を外注で請け負える機能を付加し、実習生はこれらの修理や保守点検も習う。

【その2:スペアパーツを作れる生産施設の新設】ファブラボをイメージしてのアイデアだが、どんなスペアパーツが必要なのかをある程度明らかにして、その仕様を3Dデータで入手できるようにして、ブータン国内で作ってしまうというもの。少なくとも日本消防協会とのデータ共有に関する協力は必要だが。強度確保は期待しづらいだろうが、ある程度は壊れることを前提に、ここで作ってしまえる仕組みを作る。

【その3:特殊車両の整備を専門で行う本邦企業の新設とブータンへの展開】修理専門のよろず何でも屋的な企業が、例えばJICAの中小企業海外展開支援事業スキームを利用してブータンに進出。上記2でも記した日本消防協会や特殊車輌製造業者とも連携し、現地で作れるパーツは作り、本邦や第三国での調達が必要なパーツは調達の仕組みを作る。出張整備も料金を取って行うが、専用ワークショップとして、民間整備工場を借りるか、ティンプーTTIの公設施設の運営を請け負う。

消防車の問題から論を展開したので、こんな書き方にしてみたけれど、別に特殊車両の整備に特化しなくてもよい。機械修理・整備のニーズはそこら中にあるので、マーケットをもっと大きく捉えたよろず修理業というのもありだろうとは思う。ブータン人にはなかなかできないが、日本なら修理業者は結構あるだろう。民間ベースで商売としてやる分には、変に人材育成を考えなくてもいいので、働かない人を雇って被るストレスも少ないだろう。勿論、儲かるとわかって入社希望するブータン人も現れるだろうが、日本の職人養成のように厳しく接すればよい。

以上は僕の勝手な妄想である。読んで何か閃くものがあった方は、是非ブータンへの進出を一度ご検討いただけると幸いです。

タグ:JICA ODA
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