SSブログ

ブータンの「コード・ブルー」 [ブータン]

BEARチーム、10人の命を救い、今も発展中
BEAR saves 10 lives and is growing strong
Kuensel、2017年7月15日、Yangchen C Rinzin記者
http://www.kuenselonline.com/bear-saves-10-lives-and-is-growing-strong/

2017-7-15 Kuensel.jpg

【ポイント】
ジグミ・ドルジ・ワンチュク全国レファラル病院(JDWNRH)に発足したドクターヘリ緊急医療チーム「BEAR」の活躍に関する記事。BEARは、Bhutan Emergency Aeromedical Retrieval Teamの略。冒頭、サムチ県の女性患者が首都のJDWNRHに搬送されるまでのストーリーが描かれている。

チームBEARは現在3名。蘇生技術専門家のチャーリー・ハヴィランド・マイズ医師と、ブータン人緊急医療看護師のラブ・ドルジ、キラン・ディヤリ看護師の3名。チームは今年5月に、JDWNRHと保健省、王立ブータンヘリコプターサービス社(RBHSL)社の協力により結成され、患者のいる場所まで飛んで医療措置を施すだけでなく、必要あれば首都まで患者を搬送し、その移送期間中のケアも行う。ダイヤル112のヘルプセンターに電話をすることで、サービスを受けることができる。

チームBEARは2016年秋、タシガン県で屋根から落ちた14歳の男の子が命を落とす事故の経験から発想されたもの。チャーリー医師は、必要なサービスを必要な時にすぐに受けられるようにできないかと考え、ヘリによる緊急医療チームの編成に向けて動き出したのだという。

ヘリ飛行は6人チームで行われる。チームBEARから2名、その他蘇生医療専門家が2名、それに操縦士と副操縦士である。チーム発足後、既に10名の患者の命を救ってきている。

チームの持続可能性を高めるため、現在ブータン人外科医を訓練中である。外国人観光客向けのサービスも行うが、その場合は保険求償を行う。これらサービスの拡充に向け、ブータン財団が中心となって外国からの寄付を呼び掛けている。また、保健省関係者によれば、現在はパロ駐機ヘリをいったんティンプーまで来させて緊急医療チームが乗り組む仕組みになっているが、同省ではパロでもチームメンバーを訓練し、パロから直接現場に飛べるようなオペレーションにすることも考えているという。

ヘリ移送の費用は保健省持ちである。1時間当たり17万8000ニュルタムがかかり、これまでに193人の患者が搬送されている。

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

ヘリコプターに関しては昨年秋の国会でも一度現政権の閣僚による頻繁な利用に批判の声が挙がったことがあり、このブログでも取り上げたことがある(「国内配備のヘリは2機」(2016年12月6日))。その時は未だドクターヘリという発想はなく、単に患者を緊急搬送するというのみの話だったようだが、それから半年少々のうちに、医師が乗り込んで現地で応急措置を施し、患者移送中のケアも行うという体制が整備されてきたらしい。

記事の中で出てくるサムチ、タシガン、シェムガン等、車であっても簡単に行けるところではないので、地元のBHU(一次医療施設)で手が負えないようなケースに、ドクターヘリを飛ばすという対策は、「誰も取り残さない」という持続可能な開発目標(SDGs)の理念に照らし合わせても、重要かつ称賛されるべき取組みだと思う。そもそも車でアクセスできない高地の場合も同様だ。

また、記事にもある通り、この制度は着想から半年少々で実際に立ち上げられている。このスピード感自体も驚きである。JDWNRH、保健省、RBHSLと役者は揃っていたわけで、それをつないで調整する役割を外国人のチャーリー医師が果たしたのだろう。どのようなプロセスを踏んでこのコラボが実現していったのか、その部分には非常に興味がある。

また、この記事の中には、ヘルプラインとしてダイヤル112と書かれている。これは外国人観光客が覚えておいてもいい番号で、トレッキング中に高山病の症状が出て身動きが取れなくなった時の最後の手段として、利用することになるかもしれない。(トレッキングルートで携帯がつながるのかどうかという疑問もありますが…。)

但し、ヘリ利用には金がかかるということも承知しておく必要がある。昨年末の記事と比べると、1時間当たりの利用料金が若干値下げされたのかなという気がするが、それでも1時間3000ドル程度はかかっている計算になるのだから要注意だ。

nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0