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教育に関する学術書発刊 [ブータン]

教育開発の歴史と課題
Sherig journey and challenges
Kuensel、2017年5月1日、Jigme Wangchuk記者
http://www.kuenselonline.com/sherig-journey-and-challenges/

【ポイント】
4月28日、パロ教育大学教育研究開発センター(CERD)は、英国バーミンガム大学とともに、ブータンの教育に関する新たな本のローンチングを行った。

本書では、ブータンの教育政策の変遷や、ノンフォーマル教育、特殊教育、伝統医療教育、教育におけるジェンダー配慮等がテーマとして取り上げられている。

GNHに向けた教育は、教育省が2010年に掲げた政策目標で、これに沿って、「ブータン教育ブループリント2014-2024」が制定されている。既にブータンでは全ての子どもに対する教育はほぼ実現しているが、GNHの目指す価値観と学校での実際の教育実践をシステマチックにどう統合していくのかは依然として大きな課題である。

本書はおそらくブータンの教育制度の発展について書かれた書籍としては最も包括的な内容となっている。

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このクエンセルで紹介されていた本は、アマゾンで購入可能である。ブータンでのローンチングは最近なされたばかりだが、発刊年月日を見ると既に半年以上経っていることがわかる。このタイムラグはよくわからないですね。それに、クエンセルだけじゃなくBBSもこのローンチングの件は報じているが、肝心のパロ教育大学CERDのウェブサイトでは全然紹介されていない。

Education in Bhutan: Culture, Schooling, and Gross National Happiness (Education in the Asia-Pacific Region: Issues, Concerns and Prospects)

Education in Bhutan: Culture, Schooling, and Gross National Happiness (Education in the Asia-Pacific Region: Issues, Concerns and Prospects)

  • 編者: Schuelka, Matthew J, Maxwell, T.W.
  • 出版社/メーカー: Springer
  • 発売日: 2016/09/26
  • メディア: ハードカバー

ついでに、Springer社のURLもご紹介しておきます。ここを見ると、章立てがわかる。名古屋大学の上田晶子先生が執筆者に加わっておられる。その他は共編者の2名の英国人の他は、おそらく全てパロ教育大学の研究者であろう。
http://www.springer.com/gp/book/9789811016479#aboutAuthors

「包括的」と言われると、正直物足りなさは感じる。例えば、主要科目偏重主義で体育や美術、スキル教育が置き去りにされている現状や、教育省の言う理数科教育拡充の底の浅さ、初等・中等教育と大学、技術教育職業訓練との連携の欠如等には光が当たっているとは思えない。これらは今ブータンに住んでいて日常的に感じている課題なので、メーンテーマにはならないにしても、どこかで言及はして欲しかった。

あ、読んでもいないのに読んだふうなことは言っちゃいけないか…。でも、そのせいで僕自身は購買意欲を削がれているのは事実。まあ、一部の章はそうはいっても何らかの形で目を通すようにはしたいとは思うが…。また、ないのであれば自分で調べて、英語でまとめておいてもいいかもしれないとすら思っているところである。時間があればだけれど。

ところで、ブータンの教育に関しては、英語で出た本書に限らず、昨年もう1冊世に出ている日本語の本があるので併せてご紹介しておく。新品だと9180円、中古でも最低3400円もするため、教育の専門家でもない僕が、中身を事前に確認できない遠隔地からのオンラインショッピングで、自腹を切って購入するには相当な躊躇があるが。

ブータン王国の教育変容――近代化と「幸福」のゆくえ

ブータン王国の教育変容――近代化と「幸福」のゆくえ

  • 編者: 杉本均
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/08/31
  • メディア: 単行本
内容紹介
1970年以降の急速な近代化は、ブータン社会の教育と若者たちの意識に何をもたらしたのか。信仰が支える伝統と新しい価値観の相克、熾烈な試験競争がもたらすストレス、ドロップアウトする若者たちなど、近代化推進の過程で生じた諸問題を、京都大学による長年の現地調査をもとに、比較教育学の見地から考察する。

余談ですが、パロ教育大学は、4月中旬に4日間にもわたる大きな国際会議をホストした。就学前児童や小学校低学年を対象とした美術教育の重要性に関する研究会で、僕は3日目の早朝にデリーからパロに着いたので、時間つぶしのために朝のセッションをちょっとだけ覗いてプログラムももらってきたが、4日間もカンファレンスをやる割に、発表者のほとんどがオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、中国等からの参加者で、発表内容に対して、「それがブータンにどんな意味があるのか?」というフロアからの質問が、当たり前のように飛んできて、発表者を困らせていた。まあ、当然だとは思うが。ブータン人の発表者が4人ぐらいしかいないカンファレンスを、なんでパロ教育大学が主催したのか理解に苦しむが、国際会議をホストすることが、大学の年次業績評価(APA)の評価項目に入っているというのは聞いたことがある。

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