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全国教育会議に見る教育制度の課題 [ブータン]

全国教育会議、来週開催
National education conference next week
Kuensel、2017年1月5日、Tempa Wangdi記者
http://www.kuenselonline.com/national-education-conference-next-week/

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《ブータン政府HPより》

【ポイント】
1月9日から12日まで、南部の都市プンツォリンにおいて、全国教育会議が開催される。教育行政関係者、学校校長、教員、教育省やブータン学校試験評価評議会(BCSEA)、王立教育評議会(REC)の代表から成る約170名が会議に参加し、教育制度にまつわる様々な課題について議論する。

その中の1つは、クラス3(日本の小学校4年相当)における全国統一試験の廃止と、クラス6(日本の中学校1年相当)の統一試験の県(Dzongkhag)レベルへの移管である。但し、BCSEAはクラス6の統一試験の制作を引き続き請け負い、試験結果の評価については各県が責任を持つことが提案されている。

また、会議では、国際学習到達度調査(PISA)の導入の可否や、クラス3以下のクラスでのゾンカ語の必修科目化とゾンカ語専門教員の配置(従来は一般教員が複数科目をカバーしてきた)、1教員1教科制への移行、学校教員の昇進制度等も議論される。

プレミアスクールの開設も議題の1つ。但し、教育省高官によると、プレミアスクールはすぐには開設されず、2018年の開設に向けて準備を進めるとのこと。

その他、会議では教育省がセントラルスクール制度のレビュー結果について報告し、それに基づき学校運営や財務、学校施設、人材配置等の改善に向けた戦略が話し合われる。

冬休みの2週間の短縮と夏休みの2週間の延長も議論される。教育省は、冬休みを1月いっぱいとして、2月4日から学校を再開すること、逆に夏休みは6月1日から7月31日までとすることを提案している。

また、RECからは、昨年8月以降進められてきた学校カリキュラムのレビューの結果を踏まえたカリキュラム改善策の実施方針につき提案が予定されており、会議でこれを採択する予定。

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本日引用した記事は先週のクエンセルに掲載されたもので、実際は既に全国教育会議は始まっており、これを書いている1月10日の時点で、既に冬休みの短縮と夏休みの長期化については採択されている(下記記事参照)。教育省の提案は、これを全国一律に適用するのではなく、ラヤやルナナといった高地では2月初頭からの学校再開は難しいので、引き続き現行の休暇制度を適用するというような配慮もなされている。それにしても、夏休みが2ヵ月、冬休みが1カ月半というのは、日本人の僕らの感覚からいっても長いなぁという気はするが。この長期のお休みも、家のお手伝いをするとか、社会奉仕活動に従事するとか、スポーツキャンプに参加するとか、それなりに有効な使い方はされているのだと思うが。

学期の期間変更、承認される
Change in academic session endorsed
Kuensel、2017年1月10日、Tempa Wangdi記者
http://www.kuenselonline.com/change-in-academic-session-endorsed/

プレミアスクールの制度は、日本のスーパーサイエンスハイスクールに倣ったと言われているので、以前このブログでもご紹介した、『スーパーサイエンススクール』の最後に述べたブータンへの含意の部分を参考にしていただければと思う。日本の文献を読んでいて痛切に感じたのは、個々の学校及び教員自身の自己努力だけではなく、大学や研究機関等、それをサポートする制度インフラが日本の場合は整っていたことが大きいということだった。同じことをブータンがやろうとすると、最低でも大学と小中高の連携は必須だと思うが、今回の全国教育会議には王立ブータン大学(RUB)は参加しているのかどうかわからない。それならRUB傘下のパロ教育大学やサムチ教育大学の参加で事足りるだろと思われるかもしれないが、理科教育の拡充を考えるなら、プンツォリンの科学技術カレッジ(CST)やロベサの農業カレッジ(CNR)との連携は必須だと思う。教育省とRUBはもっと連携しないとプレミアスクール制度はうまく機能しないのではないか。

また、学校運営の改善策について論じられるということだが、この際だから授業時間の合間に5分でいいから休憩時間を設けるようにしてほしいと思う。こちらに来て驚いたのだが、ブータンの学校には「休み時間」というのがない。ついでに言うと、大学にも休み時間がない。ということは、前の授業が目いっぱいで終わると、次の授業に遅刻者が続出する。特に、教室を移動しなければならない保健体育とか美術とかの授業は生徒の遅刻が続出する。体育など、体操着に着替えていたらさらに遅くなる。逆に、生徒が教室を移動しなくてもよい教科であったとしても、今度は教員が遅刻する。1日6時間授業だとして、週34時間程度あるわけだが、多い教員は30時間ぐらい持たされていると聞く。平均でも20~25時間は持つというから、結構教員も忙しい。

こうして、教員も遅刻、生徒も遅刻、という状況が学校で醸成されると、大学だって同じことになるし、社会に出ても遅刻が当たり前のマインドセットになってしまう。それが、自分たちで決めた約束の時間に自分たちで遅刻してくる、スポーツキャンプでコーチも遅刻、選手も遅刻。選手に時間厳守を促そうにも、コーチが堂々と遅刻してきては選手に厳しいことも言えない、そんな状況がずっと続く。こちらに派遣されている外国人コーチの方々が一様に悩まれているのはまさにそんなことである。学校で行われていることが後々の社会に及ぼす影響はかなり大きい。

それと、学校教員の英語能力が危惧されているとも聞く。本日取り上げた記事では言及されていないが、教員の英語能力を引き上げるために教員向け英語能力試験を導入することも検討されている。こういうものを大学生とか学校教員になってからの自己研鑽を促す制度設計にするのなら、いっそのこと日本の英検のような制度を導入して、もっと小さい頃から実用英語の全国共通試験を設けて、そのグレードによって就職の際の加点要素にするような仕掛けにすればいいのにとも思う。

その他、クラス3以下の小学校過程におけるゾンカ語の必須科目化というのも議題に挙がっている。ゾンカ語はある意味日本の学校の国語みたいなものだから、今さら必須科目化と専門教員の配置と言われても、今までがそうじゃなかったという驚きの方が大きい。以前ある小学校のPP(Pre-Primary)の教室を覗いて、英語で生徒に話しかけてみたらまともな応答があった(僕の英語力がPPレベルと同等だということも言えるか(笑))。授業の多くが英語で行われているということもあるのだろうが。

今後もこの手の記事は多くリリースされると思うが、代表的な記事のみでお許しいただければ幸いです。

ゾンカ語、再び主要科目化へ
Making Dzongkha a main subject again
Kuensel、2017年1月7日、Tempa Wangdi記者
http://www.kuenselonline.com/making-dzongkha-a-main-subject-again/
タグ:教育
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