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ブータンにも汚職腐敗はあるらしい [ブータン]

情実、縁故主義が腐敗の典型例
Favouritism, nepotism, most prevalent forms of corruption in Bhutan
Kuensel、2016年12月22日、Thinley Zamgmo記者
http://www.kuenselonline.com/favouritism-nepotism-most-prevalent-forms-of-corruption-in-bhutan/

2016-12-21 BBS.jpg
《ブータン国営テレビHPより》

【ポイント】
ブータンのシンクタンク「ブータン・トランスペアレンシー・イニシアチブ(BTI)」は、21日、2016年版全国腐敗バロメーター調査(NCBS)の報告書を公表した。1200人から回答を集めた全国調査は、今回初めて実施されたもので、今後のBTI及び反腐敗委員会(ACC)の活動のベースラインとして位置付けられている。

この中で、この国で最も頻発する腐敗行為は採用や昇進、異動の際の情実加味や縁故主義であり、これに公金や公的施設の不正利用や不適切な動機に基づく意思決定の意図的遅延等が続くことが指摘されている。法制度の差別的で一律でない適用が腐敗の大きな原因を作っている。時間のかかる手続きやメディアのチェック機能の弱さ、被疑者に対する手厚い社会的保護も腐敗のはびこる環境をもたらしている。さらには、リーダーシップの欠如や規則・手続きに関する情報公開や透明性の欠如、説明責任制度の欠如なども腐敗を横行させる。

腐敗は特にトップの意思決定レベルに集中しており、末端での腐敗は少ないことも指摘されている。最も危機的と思われる発見は、25.32%もの回答者が腐敗は日常茶飯事であり、それが当たり前のものだと考えている点である。回答者が毎日直面している問題は、公的サービスへのアクセスにおいて、社会的なステータスに基づく差別が行われているという点だという。しかも、こうした差別行為は増加傾向にあると見られており、特に民主化以降腐敗傾向が強まっていると感じている回答者が全体の31.5%にも上ることがわかった。

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ブータンにも汚職腐敗はあるようである。しかも、民主化以降、その傾向は強まっているのだということを示す客観的なデータがあるらしい。普段生活していると外国人の僕たちにはあまり感じることの少ない点だが、こうしてデータで示されると、ちょっとブータンに対する見方に影響も出てくる。

政府はこうした傾向に対して非常に神経を尖らせている。ブータンは外国からの援助資金がないと国の運営が立ち行かなくなるので、そうした外国から得た公的な資金を不正に使用しているとなったら、外国からの援助も差し止められてしまう。ただでも水力資源開発が進んで1人当たり国民所得が増加し、ブータンは間もなく最貧困国(LDC)ステータスから卒業することになり、無償資金を受け取りにくくなっていくと見られている。そうした中では、日本のようにブータンを非常に大切な国として捉えて支援を続けている国も、そうした援助がどう使われているのかには関心は持たざるを得ないだろう。

BTIが行っているこの全国調査には、僕のインド駐在時代の知人が技術アドバイザーとして関わっており、インドから出張で来られた際に久しぶりの再会を果たした。その知人も、ブータンにはあまりにひどい汚職腐敗は少ないとは言っていた。メディアも腐敗に対する批判的な姿勢はチェック機能を果たしているとも言える。クエンセルの記事では、メディアのチェック機能は弱いと指摘されているが、その割にはクエンセルの記事の傾向として、汚職腐敗の報道は結構頻繁に掲載しており、報道の自由はそれなりにあるように僕も感じていた。

ただ、そうした記事で叩かれるレベルのものとは別のレベルで、僕らがなかなか目に見えない腐敗は存在しているのかもしれない。しかも、不正行為の影響を被る人たちが、「それはブータンだったらあり得ることだから」とある程度割り切っているところがあるというのも、この記事からは窺える。

また、この報告書は公金や公的施設の不正利用とか、採用、昇進、異動における情実、縁故主義等、主には公的セクターにおける腐敗行為に焦点を当てている。それじゃあ一般市民は清廉潔白なのかというと、市内のゴミの散乱ぶりを見るにつけ、どうなのかなと思うところはある。同じ日のクエンセルに、「ティンプー市、廃棄物の不法投棄を行った個人に罰金を課す(Thromde penalises individuals for illegal dumping of waste)」と題した記事が載っていた。大いなる皮肉だ。

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