道路建設の残土の処理 [ブータン]
不法な土砂処理に罰金
Contractors fined for illegal dumping of muck
Kuensel、2016年12月26日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/contractors-fined-for-illegal-dumping-of-muck/
【ポイント】
ブムタン地方森林局は、東西ハイウェイの拡張工事を請け負っている施工業者3社に対し、総額100万ニュルタムを越える罰金を課した。
対象となったのはガルコン・インフラ、ドルック・ラエル建設、レイブン・ビルダーズの3社で、道路拡張工事で生じた土砂を分別することなく不法に投棄したとして、それぞれ32万7000ニュルタム、40万5000ニュルタム、30万ニュルタムの罰金を課せられた。
道路拡張工事により発生する土砂は、全国環境委員会(NEC)が2012年に制定(2016年に改正)した廃棄物管理規則に従い、森林局が指定した場所に投棄することになっているが、3社はこれを守らなかった。しかも、ガルコン社とレイブン社が罰金を課せられるのは今年に入って今回で二度目となる。この規則によると、トラック1台分当たり9000ニュルタムの罰金が適用される。
こうした事態が頻発するのは、単に施工業者のせいとも一概に言えないところもある。道路拡張工事実施中の道路封鎖時間を短縮して一般車両の通行を円滑に行うためには、土砂の除去作業を行うよりも、その土砂を道路下に押し流す方が早いからである。
トブゲイ首相によると、東西ハイウェイの道路拡張工事で最も難しい局面は脱しつつあるものの、政府としては施工業者の作業実態には重大な関心を持っており、施工基準に従って作業を行っていない業者に対しては契約打ち切り等の処分も行うべきだと道路局に対して伝えたという。
東西ハイウェイを通行していると、道路の拡張工事はいいものの、出てきた土砂を無造作に道路下に押し流しているケースが目立ち、景観を著しく損ねているように見えるのがずっと気になっている。
これは公共事業省が所管する国道(National Highway)や県道(Gewog Centre Road、またはGC Road)だけではなく、これまで十数年にわたって全国で整備が進められてきた、農業森林省所管の農道(Farm Roads)についても言える。道路網の整備は、移動の円滑化、移動時間の短縮にもつながるので、へき地の住民にとっては車道ができることは念願だっただろうし、おかげで僕らは首都にいても地方の様々な農産品を消費できるようになった。そして、こと東西ハイウェイについて言えば、中部や東部での水力発電所建設工事に必要な重機、資機材の搬送のためには、より道幅の広い道路が必要となるのは当然のことだ。
しかし、工事で出てきた土砂をそのまま道路下に押し流すような処理が当たり前に行われているのは残念なことだ。確かに放っておけば再び植物が自生してくることはあるかもしれないが、完全に森林で被覆されるにはとんでもない長い時間がかかることを覚悟しておかねばならない。
ちなみに、僕の実家のすぐ裏の山では1970年、石灰採掘の際の発破が引き金となって起きた大きながけ崩れがあり、僕はちょうどその崩れる瞬間を自分の勉強部屋で目撃したことがあるが、50年近くが経とうとする今でも、そのがけ崩れの現場は、瓦礫がむき出しになっていて、誰が見たってそこでがけ崩れが起きたのだろうというのがわかる。雑木は生育しているが、とても森林とは言い難い代物だ。
政府がそれなりに景観維持に関心を払っているというのはちょっと心休まる話ではあるが、それにしても、同じ業者が何度も不法投棄をやってるとか、しかも1回目の不法投棄よりも明らかに規模が大きな投棄をやっちゃっているとかいうのを見ると、それだけ急ピッチの作業を強いられているのではないか(しかも、通行人やメディア、さらには政治家からブーブー文句を言われつつ…)というのが気になった。罰金を課せられるのはある程度織り込み済みで作業を請け負っているのではないのかとも思えるのである。
それに、土砂の処分場を別途準備しているからといって、道路拡張工事で発生する土砂の量をすべて受け入れられるだけのキャパシティがその処分場にあるかどうかはこの記事だけではわからない。
この記事を読むだけだと、施工業者が悪さをしたというふうにしか読めないのだが、そうなっちゃった背景をもう少し考えていくと、こういう工事が景観を損ねない形で無理なく行われるには、様々な外部条件がそれなりに整っていることが必要な気はする。
勿論、施工業者に環境配慮が欠けていたところはあったかもしれないので、施工業者の意識啓発や、どうやったら与えられた条件下でより環境への負荷を抑えた施工ができるかという工事スケジュールの改善も必要かもしれない。
このクエンセルの報道の翌日、JICAがブータン政府と国道4号線の橋梁4橋の架け換えに関する無償資金協力の贈与契約を結んだことが報じられた。この契約調印に臨んだJICAの所長は、「日本の作った橋は洪水でも流されないとの高い評価をいただき、首相からも日本の橋をショーケースにしてブータン国内に広めていきたいとおっしゃっていただいていますが、ショーケースといっても出来上がった橋を見るだけでは不十分で、それが出来上がる過程もまた見ていただく価値があるものだと考えています。施工時の安全配慮や、土砂の分別処理、それに一般車両通行に極力影響を与えないような作業管理、施工過程にも見ていただけるものが多く含まれ、それらも含めての協力だと考えて下さい」と述べている。
近隣の施工業者との知見の共有も図っていきたいと述べたと記事には書かれているが、これは、前日のクエンセルで報じられた土砂不法投棄の実態を踏まえの発言だったのだろう。
日本、トンサ~ゲレフ間の4橋建設へ
Japan to construct 4 bridges on Trongsa-Gelephu highway
Kuensel、2016年12月27日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/japan-to-construct-4-bridges-on-trongsa-gelephu-highway/
Contractors fined for illegal dumping of muck
Kuensel、2016年12月26日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/contractors-fined-for-illegal-dumping-of-muck/
《道路拡張はいいが、この景観、なんとかならないものか…》
【ポイント】
ブムタン地方森林局は、東西ハイウェイの拡張工事を請け負っている施工業者3社に対し、総額100万ニュルタムを越える罰金を課した。
対象となったのはガルコン・インフラ、ドルック・ラエル建設、レイブン・ビルダーズの3社で、道路拡張工事で生じた土砂を分別することなく不法に投棄したとして、それぞれ32万7000ニュルタム、40万5000ニュルタム、30万ニュルタムの罰金を課せられた。
道路拡張工事により発生する土砂は、全国環境委員会(NEC)が2012年に制定(2016年に改正)した廃棄物管理規則に従い、森林局が指定した場所に投棄することになっているが、3社はこれを守らなかった。しかも、ガルコン社とレイブン社が罰金を課せられるのは今年に入って今回で二度目となる。この規則によると、トラック1台分当たり9000ニュルタムの罰金が適用される。
こうした事態が頻発するのは、単に施工業者のせいとも一概に言えないところもある。道路拡張工事実施中の道路封鎖時間を短縮して一般車両の通行を円滑に行うためには、土砂の除去作業を行うよりも、その土砂を道路下に押し流す方が早いからである。
トブゲイ首相によると、東西ハイウェイの道路拡張工事で最も難しい局面は脱しつつあるものの、政府としては施工業者の作業実態には重大な関心を持っており、施工基準に従って作業を行っていない業者に対しては契約打ち切り等の処分も行うべきだと道路局に対して伝えたという。
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東西ハイウェイを通行していると、道路の拡張工事はいいものの、出てきた土砂を無造作に道路下に押し流しているケースが目立ち、景観を著しく損ねているように見えるのがずっと気になっている。
これは公共事業省が所管する国道(National Highway)や県道(Gewog Centre Road、またはGC Road)だけではなく、これまで十数年にわたって全国で整備が進められてきた、農業森林省所管の農道(Farm Roads)についても言える。道路網の整備は、移動の円滑化、移動時間の短縮にもつながるので、へき地の住民にとっては車道ができることは念願だっただろうし、おかげで僕らは首都にいても地方の様々な農産品を消費できるようになった。そして、こと東西ハイウェイについて言えば、中部や東部での水力発電所建設工事に必要な重機、資機材の搬送のためには、より道幅の広い道路が必要となるのは当然のことだ。
しかし、工事で出てきた土砂をそのまま道路下に押し流すような処理が当たり前に行われているのは残念なことだ。確かに放っておけば再び植物が自生してくることはあるかもしれないが、完全に森林で被覆されるにはとんでもない長い時間がかかることを覚悟しておかねばならない。
ちなみに、僕の実家のすぐ裏の山では1970年、石灰採掘の際の発破が引き金となって起きた大きながけ崩れがあり、僕はちょうどその崩れる瞬間を自分の勉強部屋で目撃したことがあるが、50年近くが経とうとする今でも、そのがけ崩れの現場は、瓦礫がむき出しになっていて、誰が見たってそこでがけ崩れが起きたのだろうというのがわかる。雑木は生育しているが、とても森林とは言い難い代物だ。
政府がそれなりに景観維持に関心を払っているというのはちょっと心休まる話ではあるが、それにしても、同じ業者が何度も不法投棄をやってるとか、しかも1回目の不法投棄よりも明らかに規模が大きな投棄をやっちゃっているとかいうのを見ると、それだけ急ピッチの作業を強いられているのではないか(しかも、通行人やメディア、さらには政治家からブーブー文句を言われつつ…)というのが気になった。罰金を課せられるのはある程度織り込み済みで作業を請け負っているのではないのかとも思えるのである。
それに、土砂の処分場を別途準備しているからといって、道路拡張工事で発生する土砂の量をすべて受け入れられるだけのキャパシティがその処分場にあるかどうかはこの記事だけではわからない。
この記事を読むだけだと、施工業者が悪さをしたというふうにしか読めないのだが、そうなっちゃった背景をもう少し考えていくと、こういう工事が景観を損ねない形で無理なく行われるには、様々な外部条件がそれなりに整っていることが必要な気はする。
勿論、施工業者に環境配慮が欠けていたところはあったかもしれないので、施工業者の意識啓発や、どうやったら与えられた条件下でより環境への負荷を抑えた施工ができるかという工事スケジュールの改善も必要かもしれない。
このクエンセルの報道の翌日、JICAがブータン政府と国道4号線の橋梁4橋の架け換えに関する無償資金協力の贈与契約を結んだことが報じられた。この契約調印に臨んだJICAの所長は、「日本の作った橋は洪水でも流されないとの高い評価をいただき、首相からも日本の橋をショーケースにしてブータン国内に広めていきたいとおっしゃっていただいていますが、ショーケースといっても出来上がった橋を見るだけでは不十分で、それが出来上がる過程もまた見ていただく価値があるものだと考えています。施工時の安全配慮や、土砂の分別処理、それに一般車両通行に極力影響を与えないような作業管理、施工過程にも見ていただけるものが多く含まれ、それらも含めての協力だと考えて下さい」と述べている。
近隣の施工業者との知見の共有も図っていきたいと述べたと記事には書かれているが、これは、前日のクエンセルで報じられた土砂不法投棄の実態を踏まえの発言だったのだろう。
日本、トンサ~ゲレフ間の4橋建設へ
Japan to construct 4 bridges on Trongsa-Gelephu highway
Kuensel、2016年12月27日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/japan-to-construct-4-bridges-on-trongsa-gelephu-highway/
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