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『夜のピクニック』 [読書日記]

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
夜を徹して80キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。3年間わだかまった想いを清算するために―。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前にはアメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る―。

前回更新から中3日、体調がどん底でした。多分今月最も忙しかった1週間だったのですが、15日にハに行って以降、ティンプーの夜の気温が急激に下がりました。日中の最高気温との差が15度以上もあると、さすがに体がついていきません。今週は月曜日はまあまあ大したことはなかったのですが、喉の痛みが始まり、火曜日以降どんどん風邪がひどくなっていきました。夜の食事会もパスして、睡眠時間の確保に努めましたが、なかなか回復の兆しが見えません。そうこうするうちに、月に1回ぐらい訪れる、極端に血行が悪くなる時期がやってきて、下肢の冷え、首・肩の凝り、そして頭痛と、もうどうしょうもない症状です。首周りを温めるなど対策はいろいろ講じているところです。従って、週末とはいえ、なかなか外出もできず、もっぱら寝て過ごしている状況です。

さて、そんな寝ころんで何をやるかを考えて、それじゃ何か気の紛れる小説でも読もうかと思い、キンドルの人気小説のリストを物色していて、出会ったのが本日ご紹介の作品。恩田陸作品を読むのは初めてであり、作者で選んだというよりも、ストーリーで選んだ。体調が極めて悪い中で、せめて気持ちだけでも前向きになりたくて、外で長時間体を動かすような話を選んだ。

作品の舞台は高校。24時間で80kmを歩くという全校行事の話。昔ホノルルマラソンを9時間弱で「完走」したアイドルがいて、その後の市民マラソンではいかにも私も市民ランナーです然としていろんなところに出ていたが、全行程歩けば9時間弱でフルマラソンは歩ききれる。従って、80kmも18時間あれば歩けないことはない。そう理論上は考え得るが、こんなに歩き続ければ脱水になったりガス欠になったりもするし、足にマメができたり古傷の痛みが再発したりといろいろ起こり得る。それを集団で、それも高校生活をともに過ごした生徒同士で歩くという行事、僕は高校時代には経験していないけど、そんなのがあったら自分の高校生活もちょっと違ったものになっていただろうなと思う。

恩田さんはこれを母校の水戸第一高校の伝統行事を元に、そこで見た風景を参考にしつつ書かれたということらしい。従って、海岸通りの描写も出てくるのだが、それを除くと、舞台の高校名も含めて、僕が高校生活を過ごした自分の母校の周辺の風景に置き換えて、想像しながら読み進めることができた。

高校生活、特に3年も夏休みを過ぎると周囲は受験一色となっていく。地方の高校だと卒業したら二度と会わないクラスメートも大勢いるし、3年間同じクラスになった気になる女の子とも、進路の違いを考えたら想いを打ち明けずに卒業を迎えるということも当然ある。また、そういう気になる子がいても、別の後輩から付き合ってほしいと打ち明けられたらデートを承諾してしまうということも当然あると思う。青春時代なんてそんなものだ。高校時代の恋がそのまま結婚につながることなんて、とても珍しいと思う。だから、想いを相手に打ち明けることなく、思い出と心にしまい込んで卒業してしまうことも選択肢としてはありだろう。そう改めて気付かされた。

ただ、この作品の場合はそういうクラスの気になる相手と言葉を交わせるかどうかということでも、「気になる」の意味がちょっと違う。そのあたりはネタバレになってしまうので、これ以上は触れない方がいいでしょう。そういうのも含めて、予定調和的なエンディングになっているけれども、それも心地よかった。

本作品は2004年に発表されているが、2006年には既に映画化されている。どうせ自宅から外にもあまり出られないのならとばかり、原作を読み切った後、映画もついでに見てしまった。実際の歩行祭の舞台になった水戸でロケをされているので、参考になる。また、最後のシーンは、涙腺バカのオヤジにはたまらない。今も活躍しているキャストも大勢いるが、池松壮亮クンの幼さがとりわけ驚きだった。
https://youtu.be/gvvt0D-nxh0

体調がもう少し戻ったら、歩くことから始めたい。
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