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国連総会での外相演説 [ブータン]

平和維持活動での役割、拡大へ
Bhutan hopes to expand peacekeeping role
Kuensel、2016年9月26日
http://www.kuenselonline.com/bhutan-hopes-to-expand-peacekeeping-role/

【ポイント】
現在開催中の国連総会第71回セッションにおいて、ダムチョ・ドルジ外務大臣は、24日、ブータンが国連平和維持活動への貢献をさらに拡充する意向を表明した。平和維持活動への軍、警察官の派遣は、2014年から始まり、現在10件の平和維持活動でブータン人が活動中である。

外相はさらに、2030アジェンダ(持続可能な開発目標)、アジスアベバ行動アジェンダ(開発資金)、パリ協定(気候変動)等の国際協約を引き合い、これは平和と安全、人権、持続可能な開発等をまとめて進展させる好機であり、国際社会はこの歴史的な機会を無駄にしないことが必要であると述べた。

気候変動に関して、外相は、気候変動リスクはもはや抽象的で時間を経ないと顕在化しないものではなく、既に目の前に厳然と存在しており、特に低開発国(LDC)や小島嶼開発途上国(SIDS)は最も脆弱であると強調。今年7月に起きた、過去に例を見ない破壊力だった洪水災害にも言及。

SDGsに関して、外相は、ブータンではSDGsを国の政策プライオリティと既に整合させており、これからの10年は、貧困撲滅や包摂的で持続的な経済成長の促進を図り、自立を実現して、LDCステータスからの脱却を図る非常に重要な期間であると位置付け、この取組みの実現に向けた開発パートナーの役割に理解を求めた。

これと関連して、外相は、LDC向け支援を漠然とした総額でコミットするのではなく、国毎に個別具体的な支援策を明示することが必要だと指摘した。短期、中期、長期の資金の予測性が保証されない状態で、LDCがSDGs達成に向けた戦略や計画を策定していくのは不可能であると述べ、具体的にブータンが予測可能性向上に向けて取り組んでいる事例として、ブータン環境保全信託基金、ブータン保健信託基金(BHTF)、Bhutan for Life(生物多様性保全プロジェクト)を挙げた。

国連改革に関して、外相は、国連及び安全保障理事会はその時代の要請に合わせ、代表性、透明性、説明責任等を高める改革を進め、その合法性と信頼性を高めていく努力を続けていくことが必要だと述べた。

ニューヨーク滞在期間中、外相は国連総会以外に、低開発国(LDC)グループ年次閣僚会合、G77第40回年次外相会合、アジア協力対話(ACD)、南アジア域内協力(SAARC)等の会合にも出席、また「南南・三角協力を通じた革新的な公共サービス提供」と題したハイレベルイベントにも出席した。9月22日に開催された内陸途上国(LLDC)グループ第15回閣僚会合では副代表の1人として会合の議事進行役も務めた。加えて、コロンビア、デンマーク、エストニア、エチオピア、ジョージア、モルディブ、モンゴル、シンガポール、米国との二国間面談を実施。
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このブログではブータン国内で起きていることだけではなく、政府の要人が国外で何をしゃべったかというのも時々はご紹介しておきたいと考えている。勿論、これらを報じているのはブータンの国内メディアであるわけだ。日本でだって、安倍首相がどこの国を公式訪問して、何を話し合ったか、どんなステートメントを発表したのかはよく報じられる。でも、国連総会や国際会議に出席する国の代表が首相でなく外相や関係閣僚だったりする場合、そこでどのような発言をするのかは日本ではなかなか報じられない。だから、こんな記事を一面トップに持ってくるクエンセルもなかなかやると思うのである。

総会での演説や、ニューヨーク滞在中の外相の動向を見ていると、短い記事のなかからも滲み出てきているものが幾つかあるように思う。

先ず、国際会議の場で合意形成されたものは着実に順守していくという姿勢である。今回の国連サミットでは難民問題や平和構築活動への資金動員が話し合われたと聞くが、これに対しても、小国としての制約も種々ある中で、それでもなんとか貢献していくという姿勢を明らかにしている。PKOへの要員派遣は、この数カ月の間にも一度ニュースで取り上げられたことがある。

第2に、国際合意の順守を、他国、特に先進国に対しても強く求めている点である。顕著なのは開発資金の動員に関するもので、資金動員の増額努力(ODAの対GDP比0.7%目標の達成)と、国別の金額コミットにより外国公的資金動員の予測可能性の向上を求めている。これは、現行の第11次五ヵ年計画の中に、予算確保が困難で目標達成が危ぶまれている項目が含まれていることを暗に示唆している。五ヵ年計画自体はSDGs達成努力と整合しているが、その五ヵ年計画の達成自体が外国からの公的資金動員額が不安定であるがために困難だと言いたいのだと思うが、ここは議論もあるところだ。見方を変えれば、「そもそもなんでそんなあてもない計画を立てちゃったんだ」という意見も当然あるものと思うから。

気候変動に関して述べていることは、以前からトブゲイ首相がTEDトーク等で発言されていることと共通している。

第3に、ブータンは日本を重要なパートナーだと二国間関係の深さが強調されることが多いが、国際社会の中ではG77の一員としての言動を行うのだという点である。外相はニューヨーク入りする前に、ベネズエラで開催された非同盟諸国会議にも出席されている。その上で、総会演説での開発資金動員に関する発言はまさにG77がこれまで主張してきた論点に添ったものであるし、LDCグループやLLDCグループ、G77等の閣僚級会合には全て出席されている。日本にいるとほとんど報じるられることのない会合ばかりだが、SIDS(小島嶼国)グループとともに、SDGsやアジスアベバ行動枠組みの形成プロセスではかなり顕著な集団行動を取っていたグループである。

だから、安保理改革の必要性にも言及しているとはいえ、それは日本の常任理事国入りを支持するというものだけではなく、むしろ高まる非先進国グループの声を安保理にも届ける仕組みが必要だという問題意識に立ってなされている可能性も大きいと思えるのである。

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